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35. どうしてこんなことに?


「えぇ……?」


 そう言われて後ろを見れば、ガゼボの外には見覚えのある方々が。

 ここにくる途中で座り込んで泣いていたので話を聞かせてもらった女生徒さんに、指輪を無くして真っ青な顔で探していた男子生徒さんに、同じく先生の恋人さんと修羅場になっていた先生に……。

 こんな田舎の男爵令嬢に一体なんのご用でしょう。私ったらまた粗相をしてしまったのかしら。


「さ、さっきはありがとうございました」

「……あの、私、話がしたくて」

「先程のお礼に……」

「実は、その、悩んでいることが」


 なぁんだそんなことね。びっくりしたわ。

 と安心していると、シャーロット様は唖然とした様子。


「……貴女、トラブルに立ち会いすぎじゃないかしら」

「いやいや、そんなことないですよ」


 こんなのトラブルでもなんでもないですから。……兄弟が借金抱えて帰ってきたとか、実は庶子がいましたとか、昔は大変だったわぁ。


「まぁ、お茶会はそろそろ……と思ってはいたけれど」

「ご馳走様でした」

「こちらこそ、感謝しますわ」


 というわけで、ガゼボの裏に回りますと……あら、こんなに多かったかしら。おかしいわね……と思えば追加でぞろぞろと。


「なぁ、あの怪物伯爵の婚約者がお悩み相談やってるらしいって」

「行ってみよう」


 と遠くから声が。都合の悪い時はよく聞こえませんが基本地獄耳な婆には、“お悩み相談”なんて聞こえたのだけど……冗談よね?

 なんて思っていると、校舎の方から見覚えのある金髪と灰色のもふもふが。


「っ本当に来てたんだ」

「聞いたよ、ダイエット講座をやっているんだって?」

「……やってません」


 ニコニコと嬉しそうなルカと女生徒にキャーキャー言われながらとんでもないことを仰った殿下。

 王太子殿下と公爵令嬢と有名な天才生徒が集まれば、それはもう大騒ぎにしかなりません。


「騒ぎになってきましたわね」


 とシャーロット様。

 これは腹を括るしかないわね……。幸子さんや頼子さんの愚痴やら悩みやらを聞くことはありましたけどね、そんなお悩み相談なんてやれるくらい立派な人間じゃないんですが、私は。ただの元おばあちゃんですよ。


「……お話を聞くくらいしかできませんが、それで良ければどうぞ」


 できれば、夕方の畑の水やりには帰れるようにしていただきたいのだけれど。



         *


「おはようございます、ケネス様」

「ああ、おはよう……その、どうしたんだ?」

「今日から私も学園に用ができまして」


 数日後の朝。いつもの畑仕事用ではなく、そこそこちゃんとした服を着た私を見ておどろかれたケネス様。

 ええ、ええ。私もまさかこんなことになるとは思いませんでしたよ。


「今日から一緒に行きます」


 あの後結局話は聞き終わらず、どうしても帰らせて欲しいと無理を言った結果。


『では臨時で学園の相談員になればいいのでは?』


 とシャーロット様や、


『ケネスと同じ日にしておこう』


 と面白半分なのを隠しきれていない殿下の一声で、今ケネス様と馬車に乗っているのでした。

 ただの男爵令嬢が、臨時で学園相談員なんておかしいでしょうに。


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隣国の王太子様、ノラ悪役令嬢にごはんをあげないでください
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