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24. 来たる冬には生姜湯で


「……いや、もちろん手伝いにくるが」

「学園ということは王都でしょう?」


 至極当たり前のような顔で仰りましたがケネス様。

 考えてみてくださいな。うちは辺鄙など田舎男爵家。そんなほいほい行き来できるような距離じゃないんですよ。


「非常勤講師と言っただろう。毎日じゃない」

「だとしてもお忙しくなるのは事実でしょう?」


 と申し上げれば少し余裕が崩れたケネス様。

 今でさえ働き者なのにこれ以上働いてどうするんです。私だってこれ以上働かせるほど酷じゃありませんよ。


「冬の間は、野菜の手伝いはあまり呼ばないようにした方が良さそうですね」

「………………それは嫌だ」

「はい? なんですって?」


 しょうがないわ、と思いつつそう言えば、何やらボソッと仰られて。

 おばあちゃんは小さい声とか聞こえませんから。はっきり話してくださいな。


「……呼ばれないのは嫌だと言った」

「あらまぁ」


 お顔を赤カブみたいに真っ赤にして。素直じゃないんだから。そんなに野菜が好きなら普段も美味しいくらい言えばいいのに。


「……だから、呼べ」

「それで倒れてちゃ元も子もありませんよ」

「……少しは健康になったはずだ」


 そういう問題じゃ……と見上げれば、確かに痩せましたねあなた。筋肉までついてません? 顔周りのお肉もシュッとして……。どこかでみたような既視感。

 まあ前髪もっさり、仏頂面はまったく変わりませんが。


「呼んでくれ」

「……しょうがないですねぇ。その代わり、予定をちゃんと教えること。それを見て、私が判断します」

「わかった」


 なんて話が一段楽ついた時にはあんなに作った渋皮煮が空っぽに。まだあるからいいけれど。瓶一つ分無くなっちゃったわ。


「喉乾いたでしょう、生姜湯でも飲みます?」

「もらう」


 そういえば、ついつい外の木箱の上で食べがちだけれど、この人もうカウンターに座れるじゃないの。徐々に痩せられるとわからないものねぇ。


「もうお勝手が冷たいわ」


 そんなときこそ生姜湯。生姜は育つまで時間がかかるのよねぇ。四、五月に植えて、根生姜が取れるのは秋だもの。

 けれど使い勝手がいい上に効能もたくさんあって、風邪の時はもちろん、咳も胃にもつわりにまで効くのだとか。


「ケネス様は風邪など大丈夫ですか?」


 さすが漢方に使われているだけあるわぁ。葛根湯に何度お世話になったことか。あの人や子供が。私は健康すぎてあまり風邪にはならなかったのだけれど。


「……昔はよくなっていた。最近はない」

「野菜のおかげですかねぇ」

「……そうかもな」


 なんなんでしょうねぇ、あの子供が貰ってきた風邪が主人にも移って、最後の最後に母がかかった時は重くてみんなピンピンしてるっていう、あれ。


「さ、お湯が沸きましたね」


 ん? 何か私サラッと聞き流したような。あら?? さっき野菜のおかげって仰いました?? あのケネス様が???


「……そう言って火を止めないのはおかしいだろう」

「あ、ああ、そうですね」


 やだやだ沸きすぎちゃうわ、と慌てて火を止めまして。よくわかりませんが、まあ気にしなくていいですかね。


「生姜をすりおろし……」

「やる」

「ああ、はい。じゃあお願いしますね」


 コップにすりおろした生姜、レモンと蜂蜜をまあいい感じに入れて。お湯を注ぐだけ。


「はい、どうぞ」

「ああ。…………温かい」


 寒い時に飲めばたちまちポカポカするのが一番いいところかしらね。やっぱり。


「そんなに忙しいのでしたらお弁当でも作りましょうか?」

「……お弁当」

「ああ、でも学園にカフェテリアが」

「もらう」


 即答ですか。お弁当に何を詰めましょうかね。



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隣国の王太子様、ノラ悪役令嬢にごはんをあげないでください
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