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13. 焼き芋は落ち葉掃きの後で



「おい大丈夫か!?」

「はい?」


 雲一つない快晴と共に肌寒くなってきた日の午後。

 ケネス様が血相を変えて畑にいらっしゃったのでびっくりしまして。


「…………何をやっているんだ?」

「焼き芋ですよ。お楽しみって言ったでしょう?」


 この間さつまいも掘りを手伝ってもらったので、今日はご褒美として呼んだのでした。


「……それにしては煙の量が尋常じゃなかったが」

「野焼きですよ。稲を刈り終わりましたし」


 ちょっと煙いかもしれませんが……まあ我慢してくださいな。ワラを燃やして肥料にするんですから。害虫も防げますし。


「……何かやらかしたのかと思った」

「失礼な!」

「……豪語するならバケツくらい用意してるんだろうな?」


 …………。

 ケネス様はため息をついたかと思えばさっと水の入ったバケツを持ってきて。

 あああ無言の圧が。言いたいことがあるならはっきり仰ればいいじゃありませんか。


「……どのくらいかかるんだ?」

「一時間くらいですかね」

「……長い」

「じっくり焼くから美味しいんです!」


 文句を言いつつも自分が掘った芋の様子が気になるらしく火をいじっているケネス様。

 掘ってから一、二週間くらい経った方が甘いから呼ぶのが少し遅くなりましたしね。


「……火力は足りるのか?」

「これはおき火というんですよ」


 落ち葉などを完全に焼き切って煙だけが出ている状態。これがじっくり焼き上げるのに一役勝ってくれるのよね。

 濡らした新聞紙で包んで、その上からアルミホイル。これでホクホク焼き芋の準備完了。

 昔は庭でよく焼いてたわねぇ……子どもが友達の家に行く時に持たせたこともあったかしら。


「……あの泥だらけの報酬がこれとはな」

「あら、なんだかんだ言って楽しそうだったくせに」

「……そんなことはない」


 嘘おっしゃい、口角がほんの少し上がってますよ。可愛いんだから。

 ……まあ、主な原因は私がすっ転んだからですけども。

 こう、頑固な芋がいてね。引っこ抜こうとしたら体ごとすっ飛んでちゃったんですよね。そうしたら後ろにケネス様がいて……。


「……今度から芋は俺が抜く」

「大丈夫ですよ気をつけますから」

「……いいから呼べ」

「はいはい」


 思い出したようで耳が赤いケネス様。初心ねぇ。

 ああ、そろそろかしらと、くしで刺してみまして。うん、すっと入るわね。食べ頃だわ。


「熱いから気をつけてくださいね」

「……あつ」

「気をつけてって言ったでしょう?」


 さて、私も一口。うんうん、ほっくり甘いわぁ。じわっと広がる素朴でまろやかな甘みが極上ね。

 横のケネス様を見れば……あらあら目を輝かせて。


「ほぉらじっくり焼くと美味しいでしょう! 焼き芋!」

「………本当に砂糖を使っていないのか」

「これが自然の甘さですよ!」


 うふふ。秋の味覚はこれからですよ。次は……あれかしら。籠を用意しないと。



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隣国の王太子様、ノラ悪役令嬢にごはんをあげないでください
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