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10. 秋茄子は嫁に食わすな?



「うーん、大量だわ!」


 さて、夏も終わりでもう秋。畑にあるのはもうすぐ収穫できそうな秋茄子。

 これは一人で消費するより……。せっかくの美味しそうな秋茄子だもの。ケネス様にも食べさせて差し上げましょう!

 と手紙を書いた数日後。



「……久々に手紙が来たと思ったら」

「そういえば最近いらっしゃいませんでしたね」

「商談がいち段落ついたんだ」


 ぶつくさ言っているケネス様に持たせているのは収穫ばさみとカゴ。

 今日は朝から収穫を手伝わせているのでした。

 

「いいでしょう、美味しい秋茄子を食べさせてあげるんですから。働かざるもの」

「……食うべからず」

「そういうことです」


 ナスは夏から秋までが旬だけれど、九月以降に採れたものを秋茄子という。柔らかいのが特徴で、甘味や旨味も強く、とても美味しい。


「秋茄子は嫁に食わすな、なんて言葉もあるものねぇ」

「……なんだそれは」

「諸説ありますけどね……」


 一つは、秋茄子なんて美味しいものを嫁に食べさせてはいけないという嫁いびり。

 もう一つは、秋茄子は美味しすぎてつい食べ過ぎてしまうから、大事なお嫁さんには食べさせてはいけないという気遣い。


「……ほお」

「まあどちらにせよ、秋茄子はそれだけ美味しいということですよ」


 昔は嫁いびりが当たり前のような時代だったわねぇ。みーんなお姑さんに泣かされていたっけ。

 私はなかったけれど。お義母さんは癖のある方だったけれどいい人だったですし。懐かしいわぁ。


「……これ、採ればいいのか?」

「そうそう、長卵型のやつをヘタの上の方からチョキンと」

「……わかった」


 さて、ここら辺はもう粗方採り終えたかしら……ってやだわ。これ。


「ぼけナスじゃないの」

「……は?」

「これですよ、これ」


 ナスは収穫が遅れると、皮が硬くなって中の種も熟してしまう。そんな色艶も食感も悪いナスのことをぼけナスというのよね。昔はよく悪口に使ったものだわ。


「……まずそうだな」

「まあ、流石にこれは無理ねぇ。惜しいことをしたわ」


 ああ、もったいない。ま、悔やんでもしょうがないわね。

 どれ、とケネス様のカゴを見ると……あら仕事ができて助かるわ。もうこんなにたくさん。筋がいいわねぇ。


「朝食、食べていくでしょう?」

「……いく」


 作りましょうかねとお勝手に入ると、何も言っていないのについてきたケネス様。

 邪魔しないでくださいよ?


「……何を作るんだ?」

「ナスの揚げ浸しですよ」

「……ほぉ」


 まずは洗ったナスを縦半分に切って、皮の方に斜めの切り込みを入れる。

 この間交易品で入ってきためんつゆと、みりん、生姜を入れて鍋で沸かす。

 だいこんを下ろすのを手伝わせて、余分な水を切る。

 ナスに片栗粉を塗したら、皮の方から揚げていく。この時の油は少なくていいの。揚げ焼きみたいなものだからね。裏返して足りなければ足せばいいわ。

 さっき作ったつゆと大根おろしを足して、完成。


「あとはお味噌汁でも作りましょうかね。白米がないのは……諦めてちょうだい」


 あともーー少し経てば手に入るのだけど。


「……みそしる? よくわからないが早くこれが食べたい」

「しょうがないですねぇ」


 と言われてしまったのでさっとよそいまして。

 ここだとケネス様が座れる幅がありませんし……やっぱり外の木箱かしら。


「「いただきます」」


 ふわっと油を吸ったナスがもう……。出汁のいい匂いもたまらないわぁ。

 うーんこれこれ。これこそ秋茄子の季節。


「……これが、ナスか」

「そうですよ、美味しいでしょう?」

「……」


 あら、もう言い訳が見つからないのかしら。これは降参?


「ああ、エミリー。そこにいたのかい」


 なんて食べている時、お勝手裏の畑に現れたのは……お父様??

 こんな早朝に一体何のご用件で??


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隣国の王太子様、ノラ悪役令嬢にごはんをあげないでください
― 新着の感想 ―
[一言] 食べ過ぎるから、という説もあるのですね。 私が聞いたのは、秋茄子は体を冷やすから、でした。
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