「お前かい!」とは言わなかった
翌日、メッセージアプリで「お互いのスキルとか動きを見るなら、初心者向けダンジョンでいいだろ」と東野くんに提案したが、彼は「そんなんすぐ終わっちゃうから分かんないだろ」と言って中級ダンジョンにされてしまった。
そういう訳で俺は昨日買った眼鏡をバッグに入れて、東野くんを待っている。少々時間には余裕はあるので、スマホでストレージの整理をしようかな。
ストレージにはまだまだ余裕はあるものの、気を抜くとすぐに一杯になるのはスマホアプリとかPCのプログラムとファイルでよく分かっていた。なのでまず使わないであろう低級素材はサクサクと削除して、ストレージを空けることにする。
うーん、研磨石とかもう強化終わってるし、要らないか。あとは初心者用ダンジョンに潜ってた時にアホみたいに取れた雑草類も二〇個ずつくらい残して捨てちゃおう。
ちなみにボス素材ほどではないが、こういういわゆるコモン素材も、百個で一〇円くらいにはなったりする。これをどうやって換金しているかと言うと、捨てることでゾハルエネルギーを纏めて抽出する素材にして、それの還元として受け取ることになるわけだ。なのでまあ、今捨てると言ったのは、正確には屑鉄業者にアルミ缶を大量に持ち込んだみたいな事になっている。
そんな感じで多すぎる素材をいくつか捨てていって、種類ごとにソートを掛けると、個数表示がずらっと同じ数だけ並んで壮観である。
「おい、先輩」
「え? あっ!」
一通り整理が終わりそうな辺りで、東野くんに声を掛けられる。ラフなジーンズとシャツしか着ていないけど、不思議と似合っていた。というかオーラがすごい。眼鏡だけでこれは隠せないだろう。
「ごめんごめん、じゃあ行こうか」
「ああ、さっさと行こうぜ……」
東野くんはぶっきらぼうにそう言うと、受付に識別票を通してさっさと進んでいく。俺も彼に遅れないようついていくのだが、どこか彼の機嫌が悪いような気がした。
「ちょ、ちょっと待って! 東野くん、今日なんか機嫌悪い?」
ダンジョンに入る前、彼に何とか追いついて声を掛ける。
「ちっ……何でもねえよ、昨日の夜ちょっと嫌なことがあったんだ」
「え、なんか過激なファンレターが来たとか?」
東野くんは非常に不本意といった感じで話しているので、俺は彼にその原因を聞いてみることにする。
このルックスに現在休止中とはいえストリーマーだった人だし、厄介なファンとかストーカーまがいの人とかいるんだろうな、俺はそんな事を考えつつ、東野くんの答えを待つ。
「あー……」
どうやら彼は話してくれるつもりのようだが、言葉がうまく見つからないらしい。なんだろう、そう言えば昨日、喫茶店に行く前にマネージャーさんと話して――
「ストリーマーのファン鯖で盛大に喧嘩しちまってさ」
想像の遥か斜め上を行く返答に、俺は思わず口をぽかんと開けていた。
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