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普通バレるだろ

『二人とも、リスナーを楽しませるために出来ることをやってるんだ。馬鹿にするな』


 遠くで女性社員と話す山中のスマホから、言った覚えのある台詞が聞こえてくる。


「いやー、モブさんがこういう人で良かったっすよー」

「ホントホント、あたし思わずチャンネル登録しちゃった!」


 休憩室で、俺はその様子を遠巻きに窺いながら動画サイトを巡回する。


――【正論】モブ、初配信でマナーの悪いリスナーを一刀両断【スカッと】

――【配信切り抜き】モビちゃんの可愛いところ詰め合わせ【日本人テイマー】

――【徹底考察】モブの正体はあのイケメンストリーマー!?【反応集】


 結論から言うと、俺の配信はものすごい勢いで切り抜かれ、それと同時にSNSで正体の考察が大々的になされ、勝手にどんどん「モブ」という存在が持ち上げられ始めていた。


「こういう人がいるなら、ちくわちゃんとねこまがコラボしてても安心ですね」

「次の配信はいつやるんだろ、研磨石300個ってそんなすぐ集まらないから、定期的にやると思うんだけど……」

「えー、金澤先輩しらないんっすか? モブさんはアイテム集めるの滅茶苦茶得意で――」


 そして、山中と話しているのが金澤先輩である。確か彼女も犬飼ちくわのファンで、時々山中と一緒に愛理の事を聞いて来たりする。まあほとんどが答えられないことなので、あちら側もそんな頻繁に聞いてくることはないが、この二人が職場で言う「仲のいい同僚」って奴なのだろう。


 まあ、正直なところ、気が気ではない。


 勝手に膨らんだ「モブ」の理想像と、俺は似ても似つかないし、不注意な事に俺はボイチェンを使っていなかった。さらに言えば、この二人には俺が愛理と幼馴染だという事も伝えてある。もういつバレてもおかしくないというか、バレてないのが不思議としか言いようがない状況である。


「――ですよね、篠崎さん」

「え?」


 どうやってこの場から逃げ出そうか考えていると、山中が唐突に話しかけてきた。


「ごめん、スマホ見てて話聞いてなかった」

「もー聞いててくださいよ。っていうか篠崎さん……」


 山中が俺のスマホを覗き込んでくる。そこには「モブ」の配信切り抜きがデカデカと再生されていた。


「っ!!」


 ヤバい。これは絶対バレる。顔を隠しただけの俺が映っていたら、さすがに――


「篠崎さんもモブさんの事調べてるんですか!? 絶対正体知ってると思ったのに!」

「……は?」


 だが、山中の反応は想像していたものとは真逆だった。


「ええっ! 篠崎君も知らないの!?」


 つづいて金澤先輩も同じリアクションをとる。なんだ、二人とも俺をからかってるのか?


「い、いや、俺は――」

「分かります! 幼馴染のストリーマーを取られて悔しいですよね! でもモブさんは絶対いい人なんで! あの人ならちくわちゃんもねこまも任せられると思います!」

「そうね! 絶対大丈夫よ。だから私達と一緒に応援しましょう!」


 これは、どうやらからかっていない……のか?


「あ、ああ……俺も応援、するよ」


 二人の圧に負けて、俺は自分自身を応援する羽目になった。



――



 仕事を終え、家に帰って顔を洗う。疲れでぼーっとした思考が幾分かはっきりしたので、夕食に買ってきたカップ麺にお湯を入れてから、ベッドに腰掛けた。


 結局、二人とも俺がモブだという事は本当に気付いていないようだった。


 そんなことあるか? 私服のまんまだったし、仮面型ARデバイスつけただけだぞ? ……と、思ったが事実二人ともがモブと俺をイコールで結べなかったのである。


「意外と、モブってそれこそ名前の通り普通の奴だと思うぞ」


 評価が青天井に登っていく二人に、俺は何とか実像と虚像のマッチングを行おうとした。


「いやいや、篠崎さん。いくらモブさんにちくわちゃん取られて悔しいからってそんな言い方はダメですよ」

「そうよね、モブ君の冷静でクールな声は絶対に超イケメンよ」


 だが、返ってきた反応は完全に俺の手に負えるものではなかった。それを察した俺は、軟着陸することを諦めた。もう絶対に正体がバレるわけにいかない。


「はぁ……」


 俺は溜息をつきつつ、識別票を操作して柴口さんの言っていた「テイムモンスター取り扱い講習」の受講ボタンをタップする。少しのロードを挟んだ後、動画が始まり、シークバーを見ると四十分ほどの講習らしい。


 俺は割り箸でカップ麺を啜りながら動画を見始める。講習の内容は「公共の場ではストレージから出さない。出す場合はハーネスを付ける事」だとか「ダンジョン外では攻撃的な行動はロックされている」だとか、まあそりゃあそうだろうなって感じの事ばかりが流れていた。


 そして、内容に関しても家の中だとか事務所のミーティングルーム内なら、常識的に扱えば特に問題は無いようだった。


「……」


 内容が簡単だと、今度は集中力が切れてくる。俺はスマホの探索者支援アプリを取り出して、モビのステータスを確認する。


名称:モビ

種族:モーラビット2.0 Lv3

力:10

知:7

体:5

速:12


 進化を一度してからは、素材の要求量も増えてきたので、そう思い通りに強化は出来ないでいた。まあいつも通りのペースで集められるとすれば、あと四~五回ダンジョンに潜ればLv9は達成できそうだ。


「では、この講習は以上となりますので、効果測定を行ってください」


 カップ麺のスープを排水溝に流していると、そんな音声が流れた。俺はシンクを掃除してから、効果測定を受けることにした。

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