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僕の話を聞いてくれないか?

ん?やあ。ok。それじゃあ始めようか。


さて、ある密閉された箱の中に猫を入れ、毒ガスを注入する。

その中はどうなっているかわからないという実験を聞いたことがあるんじゃないかな?

シュ…えっと…うん、なんとかの猫ってやつだ。

例えばそれは逆でも成立すると思うんだ。

世界から箱の中は見れないし、箱の中からは外の世界は見れない。

仮に外側の世界が滅んでいても、箱から出れない猫は外がどうなっているかわからない。


なんでそんな話をしたかって?

実は今その状況なんだよね。

よくわからん集団に誘拐されて箱の中に閉じ込められた。



……あれ?合ってるっけな。

えっと…あぁうん。大丈夫。続けるよ?


何故かお腹が空かないから今のところ困ってはない。

外の音は聞こえないし情報は入ってこない。

当たり前だけど、ここはおそらく密閉された箱の中だからね。

真っ白な部屋だと気が狂うとか誰かが言ってたらしいけど、ここは気がついたら景色が変わってる。

徹底的に発狂をさせない作りになってるのかな?

もう既に狂ってて幻覚が見えてたり(笑)


あー、えっとね、とりあえず今は…"箱の中に人はいない"ってことだけ覚えてもらえればいいか。

うん、それで良いはず。


こんな場所にいるとね、時間が有り余ってるせいで色んなことを考えるようになるわけさ。


外は今どうなってるか?とか

瞬きのたびに変わる景色はどんな技術で変わっているのか?

家族は…あー?家族…えっと…あぁ大丈夫そう。

あの人たちは外に何があっても死ぬ未来が見えないや。


いろいろ考えちゃうね。

まぁ、そんなこと考えたって答えは出ないんだけどね。

ん?なんで答えが出ないんだろ。当たり前か。


外に出る方法は探さないのかって?

もちろんはじめのうちは出ようと思ったよ。

すぐに諦めたけどね。

だって扉がないんだよ…気がついたら景色が変わるし。

時折背後に人の気配を感じることもないし、そんな"幽霊"みたいな…僕に霊感なんてないし。


如何にかして出ようと足掻いてたあの時は最悪だった。

「もう嫌だ!出してくれ!」って叫びながら思いつくもの全てを責めたんだ。

そしたら段々と意識が朦朧としてきてね…気がついた時には真っ暗な場所で身体中を何かに齧られてた。

痛みは…あったのかな?

気持ち悪い感覚を無くしたくて、必死でもがいてた。

…幻覚だったとしても怖いし現実でも怖いね。


他にもこんな事があった。

気がつくとさ、神殿にいたんだ。

天井が見えないほど高い場所で、そこら中に扉があるんだ。

「ここから出れる!」って思ったね。

片っ端から扉を開けようとして、扉に向かって走り続けた。

…どうなったかって?結果はここにいる時点でお察し。

扉に向かって走っても、まるでその場所に縫い付けられたように距離が縮まらない。

唯一たどり着くことができた扉もほんの少し、隙間が空いただけ。

覗き込むと動物が沢山いてさ、楽しそうに生きてるんだよ。

声をかけても、まるで聞こえてないようにこっちを見ない。

…話しかけられているのに、見られているのに、気がついてないのは自分だったりしてね。



あ、こんなこともあったんだ。大量の人形が降り注ぐ大地にでかい人の顔がある景色。

みたことのある見た目の人形かあってさ、その近くに僕にそっくりな人形もあった。

まるで存在する全て人間を模った人形がある…なんてね。

全部ただの妄想だけど。

ここは狂うに狂えない。


誰か見てるかも知らないこの箱の中で話しかけ続けるのも最近飽きてきた。

まぁ箱の外なんて見えないからわからないけどね。


あれ?この話前もしたっけ?

まって?この話も…もう終わる?


お願い僕を見て私を観測して儂を認識してお願い話を聞き続けて物語は続く見ていて終わらないのやだもう一人つらいここから出してお願いもう嫌だ。


どうか。

私の話をずっと聞いていてはくれないか?





ん?あぁ、思い出した。大丈夫。問題ない。

僕の話を聞いてくれないかな?


箱に閉じ込められた猫は外からの干渉を受けない。

観測されることもないし何が起こっているかもわからない。

これって箱の中と外、両方に対して適用されると思うんだよね。



彼の話は何度だって続いてく。

聞く人が居ても居なくても。

だってここは箱の中。

外のことなんて知る訳ないじゃないか。

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