表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の記憶と力を封印された少年、「神に造られし者」の孤児に転生し悪人と再対決する  作者: 元々島の人


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

92/223

自制心と悲しみ

 マークレイの父親は死んだ。    

 しかし、悲劇と衝撃はそれだけではなかった。


 まるで神のいたずらの様に。

「えっ?」


 衝撃は立て続けに起きた。

 信じられないほどあっさり短時間に。


 マークレイの母も間もなく矢で射られ死んだ。

「……」


 この状況にクラビ達も何が何だか事態を受け止められない。

 冷静なのはジョルジョだけだ。

 ましてマークレイは……


 ビスコはジョルジョに怒った。

「な、何で殺すんだ、殺さなくてもいいだろ」


 ジョルジョは言った。

「貴様は私より立場が下だと言う事を忘れるな。心の支えを奪ってやったのだ。また奴は自制心が欠けるという話を聞いている。おかしくなり冷静でいられなくなるだろう。そうすれば我々の勝ちだ」


 ビスコは思った。

 ここまですんのかよ……

 俺のせいかもしれない……


 しかし、ジョルジョはまだ手を緩めない。

「よし、さらに追い込むぞ。カレンガ!」


 とジョルジョが呼ぶと祈祷師が出てきた。

 さらに十人近い兵も。


 ジョルジョは祈祷師に言った。

「あれをやれ」

「はっ!」


 祈祷師は粘土の人形を二体取り出した。

 ボジャックは言った。

「何だあれ」


 ジョルジョは言った。

「面白い物を見せてやる。アンデットクリーチャーマジック!」


 命を受けると祈祷師がレンガは全身全霊で祈った。

 祈り方の気合が普通でない。


 ガレンガは汗だくで言った。

「この命、全てを今この術に!」


 ジョルジョは褒めた。

「よく言った!」

「はあああ!」


 さらなる気合。

 がりがりの体のガレンガは体に似合わない大きな声で祈り叫ぶ。

 ボジャックは言った。


「何だあいつ? まるで命を懸けるかのようだ」

「懸けるんだよ」


「はあ!」

 すると人形はむくむくと巨大化する。

 

 そして立ち上がり、目が光った。

 そして唸った。


「人形が唸った?」

「木偶人形を操るとか?」


 ジョルジョは言った。

「ふっふふ、彼は命を賭して人形に死んだ人間の呼び寄せた魂を吹き込んだのだ」

「え?」

「そう、戦死したドードリアスとブロキアの霊が入ったのだ」


「何だって⁉」

 女神は言った。

「あれは術者が命の八割を削り本当に死者の霊を一定時間だけ呼び出す術!」


「そうだ。約五分くらいが呼び戻しは限界だがそれだけで十分だ。ビスコにドードリアスにブロキア、そして十人の兵がいれば貴様らを片付けるのは簡単だ。しかも奴は呆然自失だ」


 とマークレイを見た。

 しかしジョルジョは同時にビスコが何か迷ってるのに気づいた。

「どうした?」

「あっ、いや」


 クラビは声を出した。

「皆、マークレイを助けるぞ!」


 一方、マークレイは呆然と膝を付いていた。

 怒りと悲しみが濁流の様に注ぎ、天から滅亡の槍が降ってくるようだった。

 口を開けたまま涙は何故か流さなかった。


「あ、あ、あ」

 としか言葉を発せない。


 彼の心に世界中の不幸がわずか数分間で起こった様だった。

 両親が殺された。

 まだ会って会話もしていない。


 二分弱で二人死んだ。

 世界が終わりすべてが狂って終わった様だった。


「ぐ、ぐぐ、許さねえ……母さん……あ、ああ」

 その間クラビ達は人形や兵達と戦った。

 しかしビスコはあまりのジョルジョの非情さにショックを受け、本来の調子が出なかった。


 マークレイは思った。

 俺に生みの親がいた。

 貴族ではなく本当に貧乏な両親……


 バウアーの「成績が悪いから捨てた」と言う言葉にかつてすさんだ心。

 そしていろいろあって立ち直り正しい道を進んだ事。

 

 俺は怒ってるのか、悲しんでるのか。

 悲しいよ、とてつもなく。  

    

   

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ