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勇者の記憶と力を封印された少年、「神に造られし者」の孤児に転生し悪人と再対決する  作者: 元々島の人


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戦う理由とは

 夕方から夜中にかけて一行は特訓する事になった。

 これから泊まる宿の近くだ。


 クラビは言った。

「俺あまり人を憎んだりひがんだりしないようにしてるけど、正直あいつには負けてすごく悔しかった。今度は必ず勝って見せる」

 拳を見据えた。


 ボジャックは言った。

「あいつが強くて負けたのも悔しいけど、それより俺の戦う理由が説明不足だって言われたのが辛かった、今までの自分を否定され心を見透かされたみたいで。あいつが何故あんなに自信があるのか自分で『覚悟が違う』って言うのか分かった気がするよ。俺はまだまだ甘いし自分がよくわかってなかったしこれでいいと思ってたんだ。最初はクラビが勇者になったから俺は帯同し全力サポートし、孤児院の仲間とも一緒に戦う、そこまでしか考えてなかったんだな。サブラアイムを何としても倒したいとか、アンドレイを倒したいとか、まず俺一人の問題として戦う理由を掘り下げて考えなきゃいけないんだ。でないとあいつの言う通りいずれやられてしまう。おっと手足を動かしながら考えなきゃな」


 ゾゾは言った。

「褒めたくないけど、同じ世代なのにすごい人っすよね」

 

 ジェイニーは言った。

「でも、あいつボジャックがサブラアイム軍入りを断った時『何故』みたいに言ってたけど、確かにサブラアイムに入れば収入は増えるけど『誰と一緒にいたいか』『誰を信頼するか』みたいなものが分かってない可哀そうな人ね」


 ボジャックは言った。

「俺は孤児だから、誰にも頼らず自立する力と心、そして時代や環境がどうなっても自分が流されない確固たる信念を持とうとして強くなろうとしたんだ。だからアズロさんの教えを受けた。でも強大なアンドレイ達と戦うのには少し理由が足りない」


 ジェイニーは言った。

「でも一見小さくて当たり前のようでとても大事な事だと思うわ」


 ひとしきりの特訓の後一行は宿に泊まる事にした。

 フロントが言った。


「あっ、クラビ様ご一行ですね。お手紙が届いております」 

 手紙にはこう書いてある。

「再戦は三日後だ。場所はこの前の所」


「あいつ、なんで俺達が泊まる場所知ってたんだ?」

「推測じゃない?」


 ボジャックは言った

「うーん、こうしちゃいられない。今夜も特訓だ」


 一行は夜遅く外に出た。

「あまり近所迷惑にならないように」


 一行は大声を出さず心の声だけで気合を入れ技を繰り出した。

 心で「勇者の魂・怒りの鉄拳!」

 と何回も唱え繰り出すクラビ。


 女神は言った。

「クラビは決してエネルギー内包量は劣ってないわ。ただ彼の方が使いこなすのが上手いのよ」


「勇者の魂が押し返されたのは初めてだ。なんかすごく悔しくて自分の無力さを感じた。彼は乗り越えるべき壁だ。乗り越えて見せる。後三日でも」


 ボジャックは大技でなく精神統一しながら唱えていた。

 戦う理由……


 女神は言った。

「すごい集中力ね、おっと、邪魔しちゃ悪いか」


 ボジャックは意図的でなく回想に入った。

 十四歳の時、一人で夜町を歩き店に入った。

「腹減った」


 と言いついに万引きしようと言う気持ちになっていた。

「うう」


 変な目で食べ物を見ながら止まったりうろうろするボジャックを見て店員は警戒した。

「どうも怪しい、注意して見張っていよう」

 ボジャックは悪い心と戦っていた。


 俺みたいな貧乏人、少しくらい盗みをしても

 いやそんなのは駄目だ。

 駄目だ。


 高級な肉の前に来た。

「う……」


 しかし、手を伸ばしかけたその時

「泥棒‼」


 店員は叫んだ。

 それを聞いたボジャックは顔が青くなり、人生が終わったと思った。

 ところが、それはボジャックに対してではなかった。


「こら! 来い!」

 ボジャックと同じ年位の少年が手をつかまれた。

「くっ!」


 え? 俺じゃない?

 ボジャックはどうなるんだろうと待っていた。

 そして少年が出てきた。


 そこへボジャックは言った。

「俺です! やったの!」

「は? 我々はちゃんと見てたんだ。やったのは彼だ。君は友達でかばおうとしてるのかな? もしかして共謀?」


 少年は否定した。

「彼は何の関係もありません」


 結局、厳重注意で少年は解放された。

 ボジャックは待っていた。


 少年は驚いた。

「え?」


 ボジャックは話しかけた。

「あ、あの、ちょっと話しませんか」


 二人は座りやすいところに移動した。

「な、なんですか」


 ボジャックは申し訳なさそうに言った。

「あ、あの、俺実は万引きしようとしたんです。でも貴方が数十秒前に捕まって俺は何もしなかった。貴方がいなかったら俺は今頃」

「お、俺は何もしてないすよ」


 ボジャックは聞いた。

「貴方も孤児? それとも浮浪児?」

「俺はジャンカ、親はいる」


「あっすみません!」

「母親と妹がいる。でも二人とも盲目なんだ」

「えーっ!」


「だから、俺が何とかしなきゃと思って、でもこんな事悪い事なんすよね。だから罰が当たったんだ」

「……」


 ジャンカは言った。

「でもさ、世の中って何も食う物がない人でも盗みしたら捕まる。何か、どっかおかしくないか? あの家なんか裕福そうで笑い声が聞こえてくるよ」


 ボジャックは言った。

「間違ってないと思うよ、貴方は」

「えっ?」

「間違ってるって言う人もいるかも知れない、確かにね」


 ボジャックは言った。

「一週間後ここで会いませんか」

「はい」


 そしてボジャックは一週間後来た。

「はい」

 と言って袋を差し出した。


「え?」

「これ、孤児院の皆から寄付してもらったんだ」


「そ、そんな、貰えない!」

「いいんだ」

 

 回想を終わる。

 そうだ、あの時感じた時みたいに不幸な人の為を救う為とか漠然とした事でもいいんだ。それが人間の生きる理由になるのかも知れない。





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