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勇者の記憶と力を封印された少年、「神に造られし者」の孤児に転生し悪人と再対決する  作者: 元々島の人


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ビスコの謎の行動

 ボジャックはビスコに切りかかった。

 覚悟、苛立ち、少しの戸惑いを胸に。

 ビスコはどこかやりにくい何かがある、とボジャックは感じていた。


 一方それを受ける。どこかいい加減な様で実は真剣なビスコの態度と戦い方。

 ゾゾ、ジェイニー、マリーディア、女神は不安な面持ちで見つめる。


 音を立て、まじわる二つの剣。

 一見、傍目にはボジャックは劣っているように見えない。

 

 ところが、である。

 さらに剣を交わす内、どんどんボジャックの息が切れてきた。

 まだ二分も経っていない。


 ビスコは聞いた。

「もう疲れたか?」

「くっ、付いていくだけでやっとだ」


 ビスコは言った。

「もう勝負つけてやるか?」

 ボジャックにはそれが思い上がりに聞こえない。


 しかしボジャックは言い返した。

「まだ俺達はあきらめはしないぜ」


 しかしビスコは余裕を急に捨て真面目になった。

「俺は言ったろ。覚悟が違うって」


 ボジャックは様子がおかしいと思いながらも言った。

「俺達は例え負けたって次は鍛えて必ず勝って見せるさ」


 しかしビスコは厳しく言った。

「それが甘い、覚悟が足りないって言うんだ」

「何?」


 ボジャックにとって、かなり意外な言葉だった。

 ビスコは言う。

「お前、負けてもいずれ鍛えて再戦って、相手から逃げるか見逃してくれるかの前提じゃないか」

「う!」

 ボジャックは痛いところを突かれた気持ちになった。


 しかしビスコは続ける。

「さっき言ったろ。俺は覚悟が違う。相手に負けたら俺には即死を意味する。だからいつも全開で負けたら後はない覚悟で生きてるんだ」


 ジェイニーはボジャックを助けるように言った。

「戦いには負けることだってあるわ!」


 ビスコはあまり聞いていなかった。

「負けたら戦いでは死だ。まあいい。そろそろ終わらせてやるよ」


 ビスコが剣を振るうとそこから五十センチほどの大きさの小型竜巻が出た。

「何だあれ? 魔法か?」


 ゾゾは言った。

「それとも剣に力があるのか」


 ビスコはそんな事もわからないのかと言う顔をした。

「おまえら本当に馬鹿だな」


「ぐあ!」

 突如、ゾゾが竜巻に触れると上空に吹き飛ばされた。


「次はお前だ」

「きゃあっ!」

 竜巻を放つと今度はジェイニーが吹っ飛ばされた。


「お前はこれだ」

 ボジャックにも竜巻が来たが上手くよけた。

 

 ところが竜巻が転換しボジャックに当たると鋭利な刃物の様にボジャックの体を切った。

「ぐあ!」

「くっくく」


「吹き飛ばす技か魔法じゃないのか? まるでカッターだ」

「魔法でも剣に仕掛けがあるんでもねえよ。それは魔炎流で作った竜巻だ。先の二人は吹き飛ばし型、お前には切り裂き型を使ったんだ。見かけは同じだがな」

 

 そしてマリーディアも吹き飛ばされた。

「くっ!」


 パーティの危機に女神は等身大化した。

「あの人、魔術みたいにエネルギーを完全に自分の物にしてるわ。クラビよりずっと上手く」

「お前にはこれだ」


 ビスコは女神に竜巻を放った。

「きゃあ!」

 

 女神は吹き飛ばし型と切り裂き型の融合竜巻を食ってしまい、切り裂き吹き飛ばされた。

「ぐぐ」


 ビスコは悠然と言った。

「よしこれで勝負あったな。とどめと行くか、とその前に」

「?」


 ビスコは急に切り出した。

「ボジャック、お前サブラアイム軍に入らないか?」

「何?」


「腕は立つし、地位も上がるんじゃないか」

「冗談はよせよ」

「半分本気なんだけど」


 ジェイニーは言った。

「仲間を裏切れるわけないでしょ!」

「仲間? 要するにクラビの事それほど信頼してるって事か」


 ボジャックは言った。

「そうだ。絶対俺達は自分を売ったりしないぜ」

 ジェイニーは言った。


「それに『心臓コーティング』ってのがなかったらあんた私達に負けてたんじゃない?」

「何? じゃあ試しに皆殺しにしてやるか」

「くっ!」


 ビスコは急に転調した。

「と思ったが、やめだ。ここで一時休戦、病院に行ってケガを治してやる。後お前らに聞きたい事あるから俺のおごりで飯食いに行くぞ」

「は?」


 ジェイニーは怒鳴った。

「こんな状況でふざけないでよ! ご飯て!」

「俺は本気だよ。飯おごってやる」


「あたしたちに隙を見せて殺す気⁉」

「は? 何言ってんだ? お前らなんかそんなせこい事しなくたっていつでも殺せるんだよ。俺がやめてやるって言ってんだぞ」


 ボジャックは言った。

「ジェイニー、ここはあいつの言うとおりにしよう。確かにあいつには俺達殺すなんて造作もない事なんだ。ちょっと聞こう」

「ふん、じゃあ行こうぜ」


 一行は本当に高級食堂へ行った。

 ビスコは薬を渡した。


「サブラアイム軍製の傷薬だ。かなりきくぜ」

「……」


 ビスコだけが元気だった。

「さてと、警戒してるようだが俺には聞きたい事があってね。それより、この料理上手いだろ」

 

 クラビは素直に言った。

「う、うん」


「お前ら孤児じゃ食えないだろうな」

 ジェイニーは怒った。


「ちょっと! 何て事言うのよ! 私も前無神経な事言ったけど」

「気に障ったかすまない。でもサブラアイムで地位を上げればこれ位の金すぐに貰えるぜ。俺なんかまだ十七でこれだし」

「何が言いたいのよ」


 ビスコは聞いた。

「ボジャック、さっき俺の誘い断ったけど、そんなにクラビの事信頼してるのか? 何故戦うのか。聞かせてくれないか」

「え?」


 ボジャックは何故そんな事を聞くのか戸惑いながら答えた。

「……俺は、孤児院時代からの仲間のクラビが旅に出るから行こうと思っただけさ」

「そんなに信頼してるのか」


「ああ」

「でもお前はどうなんだ? クラビとの関係じゃなくお前は命を懸けてもサブラアイムと戦いたいのか?」

「え?」


「あ、ああ」

「何か声が小さくなったな。下世話だけどもっと自分の戦う理由はきちんとしてた方がいいぞ。でないとなんの為にやってるか分からなくなり真の覚悟が生まれない」


 ジェイニーは言った。

「随分下世話な悪人さんね。それにボジャックはそんなに半端な人じゃないわ」

 

 しかしボジャックは言った。

「いや、半端だったかもしれないよ」


「え?」

「こいつに言われて少し気が付いた」

「あなたはしっかりやってるじゃない!」


 ビスコは話を締めようとした。

「そうか、クラビへの絶対信頼で戦ってるわけだな。よく分かったよ。外へ出よう」

 そして一行が外に出るとビスコは切り出した。


「今回の所は見逃してやるよ」

「え⁉」


「ただし、必ず再戦はしてもらう。その時までに力を付けておけ。それが約束だ」

 クラビは言った。

「何故見逃すんだい?」


「お前らが殺すには惜しい人間だと思ったからさ」

「ちょっと待て! それじゃ俺達の味方になってくれるって事?」


「違う、そうじゃない。だが再戦はきっちりしてもらう。ボジャック、戦う理由は見つけておけよ」

「……」


「後ジェイニーさ、あまり怒らない方が美人だぞ」

「な⁉」


「じゃあ、俺は帰る」

 クラビは危惧した。


「ちょっと待ってくれ、アンドレイ達の所に? 見逃したなんて言ったらどうなるんだ⁉」

「その事だがな」


 何とビスコは手刀で自分の胸を刺した。

「な⁉」

 当然血が流れた。


「これでいい、これでお前らにやられたって嘘が通るだろ」

「……!」


 ビスコは背を向けふらふらに去った。

 クラビは誓った。

「か、必ず今度は勝って見せる」


 ボジャックは言った。

「俺も戦う理由を見つけるよ」


 そして転移魔法でサブラアイムに戻ったビスコはアンドレイに謁見した。

「お願いがあります」

「何だ」

「心臓の魔力コーティングを外してください。あいつらは対等な状態で倒したいんです」

 



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