表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の記憶と力を封印された少年、「神に造られし者」の孤児に転生し悪人と再対決する  作者: 元々島の人


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/223

特訓決意とマリーディアの不安

「パーティのお金管理はジェイニーがやってくれ」

「私計画とか得意じゃないけどでもやるわ。足手まといにはなりたくないから」


 激闘の後一行は宿で一晩休んだ。

 そして翌朝。


 ボジャックは朝号令をかけた。

「よし、今日も移動しながら敵を倒して経験とお金を稼ぐ。目的地は鉱山だけどそこに到着する前に戦闘を多くこなして準備する。カードも集める」


 クラビは前に出て素直に謝った。

「皆、昨日はすまない。でも俺は危機感を感じてる。あと三か月しかないんだ。これからはさらに大きな戦いを求めなきゃ行けない。それで名声を稼いで王様に頼む。人の剣と盾にもなる。そして孤児院の為にも名声がほしい」


 ボジャックは反論した。

「孤児院は大事だ俺だって。ただ人の命より大事かっていったら違うだろ」


 ジェイニーは思った。

 もしかして大事なのは孤児院よりマリーディアさんが人質にされる事、だからそんなに必死になって。

「俺は記憶を戻し自分の勇者力が覚醒する事に賭けているんだ」


 ジェイニーはボジャックに耳打ちした。

「マリーディアさんを助けたいんじゃ」

「成程なーそれを口に出したら好きって言ってる様なもんだし」


 女神は新しいスキルについて説明した。

「今日は『耐久比例経験値アップ』と『急速冷却』について説明するわ。『耐久比例経験値アップ』はこれがあると長時間ダメージを受ける攻撃、例えば電撃で電気を流され続けたり、体を締め付けられたりに長時間耐え抜くとその分経験値が上がるの」

「成程」

 

 しかしマリーディアが口を挟んだ。

「でもそういうスキルがあるとまたクラビ無理するんじゃ」


「多用は避けた方が良いわ、もう一つの『急速冷却』は火炎や火の魔法を受けて体が燃えた時急速に体を冷却してダメージを減らしてくれるの。ドラゴンとの戦いに有効ね」


 そしてその日一日は割と大事件がなく過ぎまたイブル町の宿に泊まった。

 この町は修道院があり聖職者、役人、労働者が住む。

 

 魚屋や皮なめし職人の家はにおいがきつい。

 汚水を捨ててはいけない、町全体に家の前を綺麗にするルールがあ


 毛織物はデュプス最大の産業である。

 毛織物は刈込から打毛、糸紬ぎ、織布等の32工程に分化する。

 各地へ販売される。


 布作りの技術は長い間変化がなかった。

 羊毛を洗い紡錘を使って縒る。


 ローマの詩人カトゥルスが歌い上げた物と変わらない。

 繊維を巻き付けつまみ引き出す。


 紡錘に結び付け回転し縒りがかかる。

 紬女はこれを繰り返す。紡ぎ手は何人も必要だ。縦糸重り機織と言う垂直機械が使われ改良されていく。縦糸に横糸を通し布を平織りにする。


 縮絨は厳しい労働環境の為ギルドが結成された。

 織布工と縮絨工はギルドで対立した。

 

 マリーディアはその日の活動を終え泊った後窓の外を見た。

 疲れを癒す様に佇んだ。

「夜景が綺麗」


 冷たい水を飲んでいた。

 マリーディアは紅茶やお茶は嫌いではないが心を常に平静にするためか水を飲む事が多い。


 花の茎を指でくるくると回していた。

 その仕草はどこか落ち着きの無さを表していた。


 気がかりな事があるとき彼女は花を一輪掴んで眺める。

 またその花の絵を簡素に鉛筆で気晴らし的に書いたりする。

 

 ところがそれでも落ちつかないと花の茎を回す癖を見せる。しかもあまり派手な癖ではないので他人からは気持ちが気づかれにくい。

「好きな人とは公園か芸術的建物のある都市に行きたい」


 飲む水の量が増えているのはクラビの事が気がかりだからだ。

 彼女は十字架を手にし祈った。


 これも良くやることだ。

 マリーディアには盗賊にクラビが刺され大量に血を流した場面がフラッシュバックした。


「私、少し血が怖い。特に大量出血とか。そう言う場面で足を引っ張らなきゃいいなあ。あの時も上手くクラビを助けられなかったし。しかもあれを見て余計怖さが上がっちゃった」


 少し黙ってから口を開いた。

「私の思い、通じる日は来るのかな……クラビの気持ちは確認出来たけど、向こうは気づいてないみたい。こんな事なら孤児院時代もっと話して匂わせておけば良かった」


 とそこに剣を振る音が僅かに聞こえ、下に目をやるとクラビが庭で剣の訓練をしている。

「クラビ……」


 いてもたってもいられなくなりマリーディアは階段を急いで降りて行き外に出た。

「クラビ!」


「マリーディア……」

 見てたのか、と言う表情だった。


 あまり見られたくなかった雰囲気だ。

「こんな夜更けに特訓? ろくに休んでないじゃない」

「いや休んでいる暇ないよ」


「昼間あれだけ戦ったじゃない!それに傷が治ってないでしょ? ちょっとここで止めておかないとクラビが危ない危機感があるの」


「まあ一人特訓だから怪我する心配ないし」

「で、でも休まないと駄目よ! 追っても魔物もいつ現れるか分からないし」


「俺はもう前みたいにのんびり屋でいられないんだ。勇者としてリーダーとして」

 明らかに今までと違う決意を纏った雰囲気だった。

「でも、皆で苦労を分かち合えば……一人で戦うと皆に心配かけるわよ」


「いや皆と連携するのを拒否してる訳じゃないし、皆の気持ちも考えてるさ。でもそれ以上に俺は本気にならないといけないんだ」


「貴方は変わった。良い方にだと思うけど、でも追い込みすぎ」

「後連携を拒否なんかしてないよ、ほら」

「おまたせ」


 ジェイニーが突然来た。

「彼女にも特訓付き合ってもらう」

「冬の夜風はお肌に悪そうだけどね」


「魔法を避ける特訓?」

「いや」

「え?」


 ジェイニーは不安な顔で言った。

「じゃあ、本当に良いの?」

「ああ」


「はああ」

 ジェイニーが詠唱をするとクラビに雷が落ちて来た。


「ええ?」

「くっ、くく」

「まさか」


「そう、避けないで受ける特訓」

「そんな! 死んでしまうわ!」


「俺の記憶の中にあるスキルを習得するにはこれをやらないと駄目みたいなんだ。『急速冷却』ってスキルは火炎とかを食った時体を自動的に冷却する。これがあれば魔法や火炎放射とかを使う相手に有利になる」


「無茶よ!」

「俺のレベルもかなり上がってるんだ、なぜなら『耐久比例経験アップ』と言うスキルを獲得したから。電撃に耐えるのは正にうってつけだ」



 クラビステータス


力六十八 体力五十九 敏捷六十四 頑丈五十六 魔法五十四 魔法防御五十三

装備:銀の剣、鉄の鎧。


 ジェイニーは言う。

「短期間にずっと強くなってる」

「よし来い!」


 また雷撃を受けた。

「ぐ、ぐおお」

 

 全身に電撃が回る。

「やり過ぎた?」

 のたうちまわった。


「大丈夫、もっと来てくれ!」

 夜中三時まで特訓は続きついに『急速冷却』を習得した。


 クラビは言う。

「しんどい、きつい、やり過ぎなのもわかる。今が一番きついけど一番頑張らないと。ぺこぺこ相手の顔色を窺う平和主義だった俺だけど自分の意思で戦い強くなるんだ」


 マリーディアは思った。

 ぺこぺこして平和主義だった頃も好きだったけど。


 クラビは続けた

「それに他人の為だけじゃなく、俺も勇者の記憶を取り戻したい。決して他人の為だけにやってる訳じゃないんだ。誰かが名札を付けて孤児院の前にぽつんと捨てられた時は辛かったけど」


 マリーディアは思った。

「貴方は幸せになる資格がある人。もっと自分の幸せを考えて」

「ごめんマリーディア心配かけて。でも何でそんなに心配してくれるのかよく分からないけど」


 ジェイニーは呆れた。

 鈍感さは更に上がってるわ。鈍感のステータスまで上がってるんじゃない。


 次の日一行は町のギルドに行った。

 そこには様々な仕事の依頼がある。


 舞い込んで来たばかりの仕事もある。

「鉱山に行く前にクエストをしてお金を稼ごう」

「うーん、一千万にはほど遠いわね」


「よし、これにしよう」

 とクラビは決断した。


 それは「ミドルドラゴン退治 九十万ゴールド」である。

「ドラゴンか……」

「これ位じゃないと経験もお金も貯まらない」

「よし、行くか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ