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勇者の記憶と力を封印された少年、「神に造られし者」の孤児に転生し悪人と再対決する  作者: 元々島の人


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クラビ かなり無茶をする

「まずい! クラビを援護しなきゃまずいわよ明らかに‼ 私しかいない‼️」

 焦ったジェイニーがすかさず魔法で盗賊をけん制しようとする。


 ジェイニーが急いで手を合わせ詠唱する。

「はあああ‼ 当たって! 火炎弾ファイアーボール‼」

 

 盗賊目掛けて火炎弾を発射した。

 空気を裂く様に一直線に飛ぶ。


「うお!」

 盗賊は火に怯えた。

 クラビを馬鹿にしていた連中が突然の火の弾の音に振り向き、一転焦った。


 それが一人に当たって火に包まれ慌てふためいた

 しかし他の三人は戦闘続行状態でしかも無謀にもクラビが一遍に相手し、剣で三人の攻撃を防いでいる。

 

 ボジャックは焦った。

「大丈夫かよおい!」 

 クラビはまぐれで渡り合っているだけで盗賊達は決して弱くない。

 今のクラビに三対一は無謀だ。


 前にも書いたがクラビの腕など剣道をしている少年に毛が生えたような物だ。

 ボジャックやマリーディアにも大きく劣る。  


「なんだこいつおとり役か? 一人で無茶に突っ込んできやがって」

 盗賊は戸惑いと嘲笑いが両方あった。

 盗賊達にはクラビの剣は大したことないと見破られていた。


 しかし反対にクラビは叫んでいた。願っていた。

 もっと追い込まないと! 俺は勇者の力を引き出せない!

 と彼は自己との戦いに苦しみぬきながら心中で叫んだ。


 何か見えない力がそうさせていた。

 今までにない自覚、決意。

 

 ここに自分を連れて来た全ての物、それらがつながりこれからの道を指し示す。

 なるべく自分を映し出す。

 

 アンドレイの事、孤児院の事、そしてマリーディアの事、リーダーを頼まれた事。

 

 マリーディアの事が一番面積が大きいかも知れない。

 本人には言わなくとも。

 

 彼の心中を知ってか知らずかマリーディアは叫んだ。

「無茶よやめてっ!」

 半泣き状態だった。

 

 マリーディアにはクラビの無茶は理解の範囲を超えていた。

 自分が支えになると言ったのに、そう誓って付いて来たのに今は彼の心が掴めない。

 どう止めて良いか分からない。


 一方クラビは思った。

 勇者の力がないと皆を守れない! そしてこれから多くの敵と戦い多くの人を救うには俺が本当の勇者の記憶と力を取り戻さなければ行けないんだ。


 アンドレイ達を倒すために。そして、マリーディア……渡すわけには!


 マリーディアには心の声が何となく伝わっていた。

「そこまで……」

 止めたい、止めたくて仕方ない。


 無理をしなければならなくなった彼。

 町中を笑顔で歩いた先日が昔に見える。


「まずい! あのままじゃやられる!」

 と言い終わる前に突き動かされるよう、もはや本能でゾゾは全力でクラビを教出に飛び出した。


 いつもの冷静な感じではなかった。

 クラビが本当に危険な状態と言う危機感からゾゾの体が不可抗力的に動き、なりふり構わないがむしゃらさと必死さがあった。

 

 一方クラビは大苦戦していた。

 嫌あたかも苦戦に望んで身を置いたかのように。

 

 彼は素人同然だ。

 王宮兵士だけでなくならず者にも今は到底かなわない。


「なんだあこいつ仲間をおいて一人だけで俺達と戦ってるぜ?」

 盗賊たちは戸惑いかつ苦笑した。


 馬鹿にされる声を全て払う様にクラビはなりふり構わず剣を振った。

「うおおお!」

 と虚勢にも似た叫び声を上げる。


 しかし必死さはあるが隙も多い。

 そして

 

 ドバアアア!!!

 ついにクラビはぐさりと背中を小刀で切られた。


「きゃああ‼」

 血しぶきが飛び散りマリーディアは絶叫し口を覆った。

 今の彼女にはショックが大き過ぎる光景だった。

 

 このままじゃ死ぬ! クラビが死ぬ!

 真面目ゆえにかなり心配性でもある。

 死ぬ! 死ぬ! だけで心の全てを占めた。


「ぐあ!」

 ひるんだクラビを盗賊の一人が止めを刺す為羽交い絞めにした。

 クラビの背中から出た血で羽交い締めにした盗賊の服が赤く染まっていく。


 叫びながらもがくクラビ。

 それを盗賊が嘲笑い前から盗賊が小刀で切りかかった。


 そこへ、まるで乱入と言う言葉以外思いつかない勢いでゾゾが飛び掛かり、前方の盗賊に飛び蹴りを喰らわせた。


 あと一瞬遅かったらクラビの心臓は手遅れだった。

 あまりに速い不意打ちに盗賊は口を切ってもんどりうって倒れた。


「オラアアア‼ 俺が相手だ! こいや!」

 と目をむき出しにするように睨み挑発した。


 しかしそこには強いクラビへの忠義心や自己犠牲があった。

 そして自分に注意を向けさせようともしていたのだ。

 ゾゾはたけり狂う様に盗賊たちに切りかかった。


 クラビははっと我に帰り、同時にゾゾの様子が変な事に気づいた。

「どうしたんだ、ゾゾ。マジに切れて怒ってる」


 ボジャックは呆れ気味にしっ責した。

「怒りもあるがお前を必死にそれだけ守ろうとしてるんだよ! 命も惜しくない位に! あいつ前に言ったろ、クラビは絶対に殺させない自分にとって絶対のリーダーの先輩だって」

「彼はそこまで何で俺の為に」


「お前は自分を過少評価してる、いつも影が薄い、端っこ、ぺこぺこしてるとか」

 ジェイニーも励ます。

「クラビさん前私を励ましてくれたじゃない、しかもボジャックをかばいながら。目立ちたがり屋でなくても」


 マリーディアも言う。

「自然と人が集まって来る感じ。子供達とかにも」

 ゾゾはかつてないほど怒り狂い獅子粉塵の動きで盗賊たちを倒した。


 その強さに皆シーンとしたが、我に帰ったクラビの様子に対してもであった。

 ゾゾは兄が死んだ時の事が脳裏にフラッシュバックした。


 ボジャックは再度言った。

「落ち着け、仲間に頼れ。お前は一人じゃない」

「はあはあ、すまない俺のせいで迷惑かけた」


 マリーディアは慰めた。

 慰めだけでなくクラビをこれ以上追い込ませない必死の思いだった。

 自害すると言った時と同じ様な気持ちになった。


「何も危険な状況に追い込む事だけが力を引き出す方法じゃないわ。地道な努力だってものすごく大事よ」

「今日は宿で休もう」


 その夜宿に泊まると疲れを省みずにクラビは外で剣を振っていた。

「俺は勇者だ。だから努力して力を引き出さなければいけない。でも戦闘中にそれをやったら皆の足を引っ張ってしまう。だから一人離れた所でやるんだ」


 はっはっ! と精神集中しながら剣を振る。何かを掴み見切ろうとするかのように。

 汗が流れ落ちる。


「やらないでやっておけばよかったと後悔はしたくない」

「そうだな。でもその土台を支えるのは皆の着実な努力と想いだ」


「皆」

「出来る事があれば付き合うよ」


「ごめん皆スタンドプレーして。いつもは周りの事ばかり考えてるのにその反動なのか。ジェイニー、雷を落としてくれないか」

「ええ?」


 クラビは避雷針の様にジェイニーの雷撃を剣を天に向けて構える事で受けた。

 剣と全身に電撃が走る。

「くっ……」

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