明日へ
黒クラビの姿が消え始めた。
そして煙か星屑の様にあたかも天に昇る様に上方に姿が消えていく。
クラビはじっと無言で見つめる。
ゾゾは聞いた。
「あれ、やっつけたとか浄化したとか言う事になるんでしょうか? 何か魂が分裂して天に昇って行くみたいですけど」
ジェイニーは言った。
「呼びかけに黒クラビの邪心が溶かされて成仏するような感じですか?」
しかしデュプス神は答えた。
「いや、確かに黒クラビの肉体は消滅化していく。しかし魂は天には昇らんのだ」
「えっ」
「黒クラビの心はクラビの肉体と精神の中に戻って行ったのだ」
「えっ?」
「つまり黒クラビの魂である邪心はクラビの心の中で良い心と共存していく事になるのだ」
「え? それじゃ黒クラビの邪心はクラビさんの心の中に? じゃあ、また同じ事が起きちゃうかもしれないって事ですか」
「黒クラビが言っていたように、クラビにとって邪心が失われることは骨や皮がなくなってしまい生きていけなくなる事を指すのだ。だからクラビはこれからも葛藤しながら自身の心と戦い邪心を抑えていかなければならないのだ。彼がいくら善人であっても悪の心を全て捨てる事は不可能な事なのだ。かつて人間の歴史で邪心を全て捨てられた人は一人もいない。それが人間の背負う業なのだ」
「……」
「だがクラビなら大丈夫だ。今度の様に邪心がもう一つの人格となり暴れだすという事はないだろう。彼なら克服してくれる」
「クラビさんの体にガト神のパーツが含まれててそこにスタグラーさんの母親の魂が取りついていたんですか?」
「黒クラビがスタグラーさんの母親の心を利用したんですか」
「最初はナーリスが復讐の怨念からクラビの力を利用しようと近づき取りついた。しかしそれは黒クラビの釣り餌であり利用されてしまったのだ」
「すみません。私の母のせいで、そして私のせいです」
「す、スタグラーさん謝らないで下さい」
「そうですよ、悪いのはクラビさんの邪心、あっ!」
クラビは苦笑していた。
「ああ、俺悪の心一杯あるからね」
「僕はクラビさん悪の心のない、ゼロに近い人だと思ってたんです。
ボジャックは言った。
「俺達のせいだよ。俺もクラビは殆ど邪心がないと決めつけて内側の苦しみや葛藤から目を背けていたんだ」
クラビは言った。
「俺も背けてた」
デュプス神は言った。
「あ、ああとにかくこれで全て終わったんだ。これでデュプスとサブラアイムの戦争も防ぐ事が出来た。サブラアイム軍は瓦解して別の者が盟主になる。今度こそ平和になるだろう。そしてクラビはデュプス王国を継ぐがいい。王妃はマリーディアだ」
「ええ! でもマリーディアが何で」
マリーディアはクラビの頬をつねった。
「もう!」
デュプス神は言った。
「じゃあ、帰ろう」
次回最終回?です。




