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勇者の記憶と力を封印された少年、「神に造られし者」の孤児に転生し悪人と再対決する  作者: 元々島の人


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とてつもない強敵

2023年10月11日投稿しました。

 一行は森の中を歩いていた。

「あっ」


 一羽のウサギが熊の罠にかかって苦しんでいる。

「大丈夫か?」


 クラビは駆け寄り罠を外してあげた。

 さらに足を手当てした。

「大丈夫かな」


 するとクラビには去り際声が聞こえた。

「アリガトウ。君は小さい者にも優しいね」


 クラビは驚いた。

「え?」


 ボジャックは言った。

「どうした?」


 クラビは困惑している。

「ウサギがしゃべった」


 ボジャックとジェイニーは答えた。

「俺には何も聞こえなかったぞ」

「私も」


 ゾゾは言った。

「疲れてるんじゃないですか」


 マリーディアは笑顔で言った。

「勇者だから動物の言葉が分かるんじゃない?」


 女神は言った。

「あれ、あのウサギ何か、いや悪い気じゃないけど」


 そしてしばらく歩くと草原に出た。

 ボジャックは言った。

「ここは広いし特訓を再開しよう」


 すると、よたよたした老人が荷物を背負い、クラビ達に話しかけてきた。

「あの、ヨッカララの町はどちらでしょうか」


 疲れて絞り出すような言い方だった。

 ボジャックは戸惑った。

「えっ? こんな草原の真ん中で道聞く人って」


 クラビは答えた。

「ああ、すみませんよくわからないです」

 すると老人は答えた。


「そうですか。ではここを皆さんの墓場にしましょう」

「え?」


 女神は察知した。

「みんな離れて!」


 老人の全身から目もくらむ光が発せ続けられた。

「うわ!」

「何者だこいつ!」


 そして現れたのは全身黒のタキシードを着た、四十代のスマートな体格で髪を後ろに下げた貴族的で紳士的だがどこかまがまがしさを見せる男だった。

「だ、誰だ⁉」


「初めまして勇者の生まれ変わり一行君。私はアンドレイ様の片腕、最高司令官の一人、冥界王キハエル二世だ!」


「冥界王⁉」

「アンドレイの片腕最高司令官⁉」


「そうだ、私はアンドレイ様に次ぐサブラアイム軍ナンバー二だ」

「!」


「こ、こいつ!」

 女神が青ざめた。


「冥界王って冥界から来たとか?」

「私は魔界のアンドレイ様と同じ国生まれだ。冥界王と言うのはアンドレイ様が付けた、いずれ冥界を支配できるという意味の二つ名でね、アンドレイ様と共に魔界の他国に多く攻め込み功績を挙げさせてもらったよ」


「ナンバー二⁉」

 女神はがたがたした。

「こいつめちゃくちゃ強いわよ逃げるしか!」


「私は今日アンドレイ様と議論し多少言葉が過ぎるのを覚悟で勇者の生まれ変わり一派を私直々に討伐に来たのだよ。アンドレイ様は『まだ様子を見ろ』と仰っているが、私は早めに芽を取らないとすまない用心深い性格なので多少ぶつかっても私が行くことにした。部下も連れずにな」


「そ、そういえば部下を連れてない」

「そうだ、中途半端に部下を差し向けてやられれば無駄が多くなる。私は『念の為』『自分の手で』が昔から信条でね。まあ、もう勝負は付いているが」


「え?」

 一行は体が金縛りの様に硬くなり、震えと恐怖が襲い掛かった。

「怖いよお!」


 マリーディアとジェイニーは泣き出した。

「ふふ、女には刺激が強かったかな?」


「あ、あいつの目を見ただけで体にも心にも恐怖が押し寄せてくる。これ何かの術か?」

「ふふふ、これは魔術などではない。ただ私の目や力に君達が震えているのだ」


 女神は言った。

「や、やっぱり逃げるしかない! こんなとんでもないのが最初から出てくるなんて!」

 

 ボジャックは言った。

「俺は男だ、絶対屈しないぞ」


 ゾゾも言う。

「俺もです」


 ボジャックとゾゾは気迫でかろうじて体が動いた。

 キハエル二世はそれを見て微笑んだ。


 ボジャックは構えた。

「行くぞ!」

 

「ふん、冥界降下掌!」

 キハエルがそう叫びふいに手を振り上げると一行がまるで逆らえないとてつもなく強い滝の流れの様なエネルギーが足元のさらに下から全身を上方に覆い、遥か一五メートル上にまで突き上げた。


 一行は飛ばされ地に落ちた。

 ボジャックは言った。


「な、なんだこれ、全身を打撃と波動と炎と呪いが包んで力を奪ったみたいだ」

「適切な例えだな。そうだ。この技は一撃で冥界に送られた気持ちにさせる技でな」


「も、もう」

 ボジャックはもう力がなかった。


 闘志すらも失った。

 その時女神は等身大化し、皆の前に立ちふさがった。


「皆逃げてっ!」

「どけ」


 一撃で女神は吹き飛ばされた。

 しかしクラビは何とか力を振り絞り起き上がった。

「ぐ……」

「ほう」


「俺はまだ負けられない、アンカーを受けろ!」

 すごい速さでアンカーがキハエルに向かって行ったがなんと命中する前に力をなくし曲がってしまいやがて勢いを失い地面に落ちた。


「なっ!」

「ふん」


「な、なら!」

 クラビは腰を落とし力を溜めた。


 女神は叫んだ。

「無茶よ逃げてっ!」


 クラビは聞かなかった。

 そして突撃した。

「勇者の魂・怒りの鉄拳!」


 しかし微動だにせず落ち着いているキハエルは見えない力で鉄拳が命中する前に弾き吹き飛ばした。

「ぐあ!」


 しかしクラビは何とか立ち上がろうとする。

「ぐ、まだあきらめない……!」


 女神は叫んだ。

「駄目よ! こいつ今の私達じゃ絶対にかなわない!」

 クラビの目は死んでいなかった。  

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