仲間を理解する事
マークレイは手を見た。
手にべったりついた赤い液体。
操られた心が一瞬止まる。
そして雲の様にどんよりとした感情が覆いかかった。
「これはクラビの血? 俺は仲間を傷つけた?」
クラビ?
クラビの声が……
アンドレイは動きの止まったマークレイを見ていった。
「な、何だ? どうした?」
ドルイは言った。
「奴が正気を取り戻しつつあります」
「何だと?」
アンドレイは言った。
「呪いの力を強めろ」
「ぐっぐぐ、うう」
苦しむマークレイの目は再び操られた状態に戻った。
ポートサスはマークレイの前に立ちふさがった。
「これ以上仲間を攻撃するのはやめろ! 殴るなら私を殴れ」
「……」
しかし戻ってしまったマークレイはポートサスを殴った。
そしてスタグラーとベルスも立ちはだかった。
しかし彼らも立て続けに殴られた。
クラビはダウンした状態で叫んだ。
「やめてくれマークレイ!」
しかし声は届かなかった。
しかし諦めず叫んだ。
「俺は君が邪心を持ってるなんて信じない!」
ドルイは言った。
「はっはっは、馬鹿な奴だ。相手の事を分かった気になり自分は理解者だとでも思っている奴が一番愚かなんだ、騙されやすいんだよ!」
「……」
今度はアンドレイが言った。
「ドルイの言う通りだ。そいつは心の中に他人に言えない思いを一杯持っていたのよ。それを知らず勝手に友人だと思っている貴様こそが最も傲慢なんだよ」
「俺が、傲慢?」
「そうだ。相手の事を自分の都合の良いように解釈した上自分は理解者だと思っている最もたちの悪い奴だ」
「……」
俺がたちの悪い偽理解者? そ、そうなのか。この前神殿でマークレイが色々打ち明けてくれたから理解できたと思ってた。でも違うのか。
マークレイは頭を押さえ始めた。
「ぐっぐぐぐ」
「どうした? 呪いの力を強めろ」
クラビは珍しくアンドレイの言っている事が正しいように聞こえた。
そうだ、俺はそもそも昔から何でマークレイが荒れ始めたのかとか、何で貴族の親に捨てられたのかとか。最近真面目になったとか、マリーディアの事を気にしてるようだとか、何か複雑で分からなかったんだ。
ボジャック、ゾゾ、ジェイニー、マリーディア達は軒並み良い人で好意的で信頼高いけどアンドレイの言う事が本当なら彼は一杯葛藤を抱えてたんだ。
そうか、仲間ってただ仲良しの集まりじゃない。相手の複雑な部分を理解して許す事が本当じゃないか。
それに俺は相手が自分をどう思ってるかを勝手に分かった気になってた。
悔しいけどアンドレイの言ってる事も正しかったんだ。
しかし
「う、うおおお!」
マークレイは叫び始めた。
攻撃を止め頭を押さえもがいた
アンドレイは慌てた。
「な、何?」
「うおおお!」
アンドレイは驚いた。
「馬鹿な! 内側から呪いを解こうとしている⁉ これほど力があったとは」
ドルイは言った。
「もっと呪いを強くしてやる」
「そうはさせん!」
ポートサスはドルイを捕らえた。
「俺は! 二度と仲間を傷つける男にはなりたくない、なってたまるか! そんな事をしたら俺は二度とクラビの仲間を名乗る資格はなくなる! 俺は皆の為に生きると決めたんだ! 例えマリーディアの事が今も好きでも」




