脳内対決
もう一人のクラビは言った。
「悪人かどうかとかじゃなく、友人になれない事だっていっぱいあるんだ」
「!」
もう一人のクラビは続ける。
「分かり合えない事はあるよ一杯、例えば同じ物を欲しがってたりとか」
クラビは反論する。
「分け合えば」
しかしもう一人のクラビは言う。
「それが出来ない事もあるよ。例えば勲章とか、もっと言えば同じ好きな人を好きになるとか」
「え?」
「まあ、例えだよ例え、まあそのクラビとマークレイが同じ物を欲してたとしたら」
答えに悩みながらクラビは言った。
「それでも俺は譲る」
しかし、もう一人のクラビは諭した。
否定する厳しさで。
「いや、譲れない物はあるよ。大切だからこそ譲れない物」
「じゃあ!」
行動に窮したクラビにもう一人のクラビはさらに言った。
諭すのに厳しい現実を教えながら。
「その時は心を鬼にして争うしかないんだ。でもそういう時気を付けなきゃいけないのは自分が絶対正しいと思う事とか相手が間違ってるって思う事」
「!」
もう一人のクラビは言った。
「欲望とかじゃなくて自分の真実の望みをぶつける事は間違いじゃない」
クラビは半分くらい理解できた。
「分かった。それが何か分からないけど俺はマークレイの望む何かを聞くよ」
「あ、彼は聞かれたくないと思う」
「じゃあどうすれば」
「俺が君の頭の中に『幻想のマークレイ』を送る。そして戦うんだ」
「え?」
クラビの脳内に憎しみに満ちた目をしたマークレイが現れた。
「なんて目だ、憎しみに迷いや妥協がない」
「戦うしかないよ彼と」
「!」
「うおおお!」
ごめんマークレイ! 俺は偽善者だ! 勇者の癖に!
「うおお!」
クラビとマークレイはお互いを殴った。
マークレイは叫んだ。
「お前さえいなければマリーディアは!」
「え?」
もう一人のクラビはマリーディアの部分だけを聴き取れなくした。
クラビは叫ぶ。
「何だか知らないけど苦しめてごめん! 殴ってくれ!」
マークレイは叫ぶ。
「苦しみが何なのかを言えない苦しみが何なのかお前に分かるか!」
クラビは脳内で殴り飛ばされた。
「分からないよ。だから俺は友達の資格さえないのかも知れない」
「友達だと⁉ いつお前を友達だと思った⁉ 俺は昔からお前が最大の敵だったんだよ」
「!」
もう一人のクラビは言った。
「俺がまやかしてるんじゃない。これはマークレイの心のかなり底の本性なんだ」
「ならば、戦う。俺が甘くて偽善者で思いあがっていたんだ」
クラビはマークレイを殴った。
クラビは拳に悲しみを込めた。
どうしても分かり合えない理由があるんなら戦うしかないんだろ。
友達を名乗る資格もないんだろ。
うう。
アンドレイの言うとおり俺は偽善者で大馬鹿だよ。




