続く説得
「どうしたんだマークレイ」
「……」
クラビは攻撃心を表情に出さず優しく訴えた。
「俺は信じてるよ」
「……」
疑いを顔に出さず。
相手を信じる気持ちを前面に出して表現した。
しかしマークレイは全く聞こえていないのか、叫びと共に全身から衝撃波を出した。
クラビは瞬時に全身をガードして防いだが威力は大きい。体にしびれが残る。
マークレイはゆっくりと歩を進める。
しかしクラビは恐れず、動かず目をそらさない。
アズロは叫んだ。
「逃げるんだクラビ! 原理はよくわからんが、彼は完全に心を支配されているような状態なんだ!」
「……」
しかしクラビは逃げなかった。
そして攻撃の届く距離まで近づいたマークレイは全く表情を変える事なく重く冷たいパンチをクラビに放つ。
クラビはわざとの様に左ほおにまともに受けた。
そしてダウンせずにらみ返した。
その睨みにマークレイは一瞬ひるんだ様に見えた。
しかし、それはわずかな一瞬であり今度は間もなく左腕の拳を繰り出して来た。
これもクラビはかわそうとしない。
そこへアズロが間一髪、パンチを食らう半秒前程に現れクラビをかばい飛んだ。
マークレイは無言で飛んだ方をにらんだ。
少し間を置いた。
「すみませんアズロ先生」
「私もどう対処すべきか分からん。ただ1つ言えるのは中途半端な弱い催眠術などではないと言う事だ。アンドレイ達は『操られたマークレイこそが最強の7人目の戦士』と自信を持って言っていた。と言う事は少し呼びかけたりしただけで解けるような生半可な催眠術や呪いではないと言う事だ」
シンバスは答えた。
「そうか、今までの六人の門番より強い最後の戦士って事だもんな」
アズロは言った。
「だから、彼を元に戻すには何か特別な方法が必要で、呼びかけた位で解除される物ではないのかもしれん」
アンドレイはそれを聞いて笑った。
「はーっはっは! さすがだなアズロ! お前の言う通りその呪いを解く事はお前達には不可能だ。だがな、我々が彼を操っていると言うのは人聞きが悪いな。さっきも言った様に我々はそいつの持っている悪意や邪心を肥大させて正直にしてやっただけだ」
呪術師ドルイも言った。
「そうだ。我々はそいつの本心をあらわにするのを手助けにしたに過ぎない。呪われてるのはそいつの内心なんじゃないのか? はーっはっは!」
「何だと⁉」
クラビは怒った。
ドルイは言い返した。
「仲間思いか何だか知らんが、そういう単純さと馬鹿としか思えないお人よしさが騙される要因なんじゃないのか?」
クラビはぐっと前に出た。
アズロは止めた。
「クラビ! よせ! ここは対策を考えるんだ!」
しかしクラビは拒絶した。
「俺は、マークレイに呼びかけます!」
「よせっ!」
マークレイは今度は手にエネルギーを溜め光閃掌をクラビめがけ放とうと突進した。
これがまともにクラビの顔面を捕らえ、顔が焼けた。
「ぐああ!」
クラビは苦しみの中で思った。
くそ、戻ってくれマークレイ!




