孤児院出身の誇り
さらにジェネラル・スライサーは激しく攻めた。
拳の棘や肘の刃物でミッシェルを追い立てる。
ミッシェルは先程の棘全身攻撃でかなり体力を失っていた。
血もシャツを脱いだ全身から滴る。
さらに隙を突いて膝蹴りとパンチを腹に叩き込んだ。
「ぐが!」
これも相当な威力だった。
「切るだけじゃ物足りないと思ってな。どうだ重いだろう俺のパンチと蹴りは」
「ぐ」
更に剣攻撃まで織り交ぜてくる。
「くっ!」
完全に避けきれなかった部分から血が流れる。
「食らえ!」
ミッシェルは金縛りを放った。
「ぐ!」
しかしジェネラル・スライサーは全身に力を込めこれを外した。
「はあ、はあ」
「食らえ!」
ミッシェルは蜘蛛の糸を放った。
これがジェネラル・スライサーの体に絡みつく。
しかしジェネラル・スライサーはいささかもひるまない。
これも力を入れ引きちぎった。
「どうしたもう手はないのか?」
動きはミッシェルの方が速いのだが息が切れ血と傷がそれを鈍らせた。
「疲れてるとは言え動きは大分速いな。だがそろそろ動くのもきつくなるだろう」
「……」
こいつ、刃物や棘に頼っている分動きが少し大味だな。
ミッシェルは隙を突くためかわすのに集中した。
「どうした? もう終わりか」
ジェネラル・スライサーは勝ちを確信した。
ミッシェルは慎重に相手の動きを見切ろうとした。
「くっ!」
横殴りのパンチを避けたミッシェルはしゃがんで足払いを放った。
しかしこれも効かない。
「俺は足腰も強靭で足払いなんか効かねえよ」
蹴りを顔に食い吹っ飛ばされた。
回想に入る。
ミッシェルの修行した子供時代は良き兄弟子とおおむね好意的な人に囲まれていた。
忍者の里で暮らしどちらかと言うと少し世間知らずだ。
今まで恋愛や好きになった人はいない。
孤児院に入ってからは忍者の為壁が自分の心にあった。
皆と仲良くしたいのだが。
「誰に世話されたの?」
「親の知り合いみたいな人」
「知り合いが世話してくれるの?」
忍者としてのプライド、普通の人間よりはるかに鍛えている自負はあった。
しかしそれをなるべく出さず皆と付き合おうと思った。
マークレイとこの頃あった。
マークレイは挨拶した。
「俺は孤児だけどそれにいじけないで皆と仲良くしたい」
しかしミッシェルには直感的に違和感があった。
こいついいやつだけど何か心のもろさを抱えてる感じがする。
何かリーダーをやって皆に尊敬されてないと自分が保てないみたいな。
ミッシェルはスポーツでも活躍した。
野球でとても捕れない様な球を取った。
回想を終わる。
「忍者らしいがもう忍術はないのか?」
「はあ、はあ、俺はまだ倒れねえよ、でも忍者としてじゃない、孤児院から今まで皆と楽しくかつ全力でやってきて仲間になった事を誇りに思ってんだ。俺は自分にも仲間にも誇りを持てたぜ。別に忍者じゃなくていい。俺の心はまだ砕けねえよ皆に教わったようにな!」
そして拳を構えた。




