ゾゾ立ち上がる
「くそが……まだやってやる。こんな時の為に技はもう一個あるんだ。行くぞ!」
ゾゾは先程と同様に低姿勢で駆け出し剣を突き上げ、体内エネルギーの波動を飛ばす動きにさらにひねりを加えた。
そして叫ぶ。
「ボジャックさんと同じように勇者の魂が使えないから体内で生成したエネルギーを剣の軌跡と共に飛ばす!」
「ぬ?」
「水竜・伸縮跳体弾・二段目!」
この間ゾゾは腹を貫かれて口からも血を流し本当に最後の最後の力を出していた。
自分でも何で動けているのか分からない。
何故動けてるのか、こんな力が出せてるのか分からない所が俺の少しは成長したところかな……
「ゾゾ」
壮絶な姿をジェイニーは伏せながら見ていた。
「うおおお!」
しかし最後の渾身の力を込めた剣さえも全くカメレオン・ハットのバリアには傷一つつけられず弾き返されてしまった。
「そんな、馬鹿な!」
ゾゾは跳ね返され床に倒れた。
カメレオン・ハットは少しだけ褒めた。
「お前の技中々だったぞ。だが言ったように俺の体はコプロサス様に守られているんだ。何故そんな力を貰えたかわかるか? これだ!」
と言い突如カメレオン・ハットは自分の手首の上方を切った。
すると青の血が流れて来た。
「青い血?」
「そうだ。この血は俺が悪魔だから青いんじゃない。自分の血の何割かを体から出し捧げ、代わりにコプロサス様の血を注入していただいたのだ」
「!」
カメレオン・ハットは言う。
「驚いたか? この防御壁の秘密が少しは分かったか? 俺は血を捧げ取り込むほどの信仰を捧げたのだ! その見返りとしてこの力を貰った。そしてゆくゆくは俺は最強になるコプロサス様に認められてな」
ゾゾは悔しがった。
「く、くそ負けか。でも何とか命を賭してあいつを止められた」
「ふん、お前達を殺したらすぐさまクラビ達の所へ向かう。大した足止めにはならなかったな」
さらにゾゾは悔しがった。
「くそ、俺はいつか戦う理由や守る者を見つける為に戦って来たけどよく分からず死ぬ事になっちまった」
カメレオン・ハットは笑った。
「お前に何が出来るというのだ馬鹿め」
ジェイニーは言った。
「ゾゾ! あなたはこれまでも頑張って来たわ」
「ありがとう……」
「まだ十六なんだから大事な物なんて見つからなくて当然よ!」
「若いけどもう死ぬから」
カメレオン・ハットは言う。
「少しだけ技の威力を褒めてやる。だが俺はそもそもコプロサス様に尽くす気持ちが違うのだ。自分の命を捧げてもいいと思っている。あの方を信じあがめればやがて神にもなれる」
ジェイニーは冷静に諭した。
「貴方は利用されてるだけよ。貴方は利用されてるだけ。悪魔を信じてそこまでするなんて愚かよ。コプロサスやアンドレイが今までどんなひどい事をしたか。貴方だって知ってるでしょ。今は良くても後できっと裏切られる。何故正しい者を信じないの?」
カメレオン・ハットは言う。
「正しい者は……弱い。そうだろう、例えば虐げられているデュプス国民がまさにそうだ。善人かもしれんが弱者で蹂躙される側だ」
「私は蹂躙されてもいい、弱者でも構わない、やられっぱなしでもいい、弱者の、人の気持ちが分かるならそれでいい」
ゾゾは意識が遠くなっていた。
もうこれ以上頑張れない。
でも俺やボジャックさんやジェイニーさんは何故勇者の魂が使えないんだ? 神に期待されてないとでも言うのか?
ずっと頑張って来たのに。何故なんだ、わからない、それならいっそ神に丸投げすれば。
その時白い球体がゾゾの前に現れた。
「え?」
「私がデュプス神だ。ようやく自分の力でなく神に委ねてくれたね。あとは任せたまえ」
ゾゾに白いエネルギーが集まり傷も塞がった。
まだ諦めない……
「な、何だと⁉」




