クラビの光と昇り竜
「ぐおおお!」
コプロサスがミッシェルを握りつぶそうとするのを防ごうとするクラビの腕の温度は沸点に来ていた。
全身全霊、全ての力を持ってクラビはコプロサスの巨大な手の握りを外そうとしていた。
彼はこの後戦う事など全く考えず、アンドレイの事も半分忘れていた。
ただ目の前に全てを注いだ。
全身にとてつもない負荷がかかる上、自分しか外せないであろうことにプレッシャーとなった。
腕の筋肉の張りが限界に来ていた。
そして力の限り叫んだ。
「ミッシェルさんを離せっ!」
見かねたミッシェルは体力の限界の中声を絞った。
「ク、クラビ、もういい……これ以上力を使わないでくれ、俺は自力脱出する。休むかボジャック達を助けに行ってくれ」
しかしクラビは固辞した。
勿論力は緩めない。
「いや、出来ない。この手を外せるのは多分俺だけ。だからこの身を砕き、尽きても外す必要があるんだ!」
さらにクラビは注力した。
既に力の九十パーセント以上を無くしていた。
「ぐ、ぐうう」
これ以上力を込めれば……
一方スタグラーはアンドレイと戦っていた。
「この裏切り者め」
そしてマークレイとボジャックもアンドレイと戦った。
ボジャックは切り込んだがあしらわれてしまった。
受け止められた為バックステップして距離を取った。
「死ね」
アンドレイの角から光線が発せられ3人を襲った。
人体に対し爆発作用があり、3人が爆発に包まれる。
「死んだか」
アンドレイは爆発を見て勝利を確信した。
しかし二人は血を流しながら爆発の煙から姿を現した。
「ば、馬鹿な!」
想像を絶する三人の不屈さと精神力にアンドレイは脅威を感じた。
それはクラビとの戦いでもなかった物だ。
クラビより弱い三人が死なないで立っている。
無残に焦げばらばらになっていると思ったのに。
突然だった。
アンドレイの心に雷のような怒号が聞こえた。
「馬鹿者! 何をやっている!」
「こ、コプロサス様⁉」
すぐさまアンドレイは声の主を把握した。
「貴様は相手を甘く見て止めを刺し損ねた」
「申し訳ありません!」
この声はボジャック達に聞こえていなかった。
「何だ?」
さらに響いた。
「もしその二人に負けた場合は貴様を殺す!」
「ひ、ひい!」
「何だあいつが動揺してる」
「チャンスだ。久しぶりに神に授かった能力を使う! うおおお」
マークレイが右腕に力を込めると地面から鉱物の欠片が集まり始めた。
「うおおお!」
それはどんどんと形になって結晶化して行く。
以前町中の戦いで使った能力の強化版だ。
「何だ?」
アンドレイは少しだけ動揺した。
「うおお!」
集めた鉱物が巨大なこん棒の形になる。
それはどんどん太くなり、3メートル70程にもなった。
「何だあれは?」
「これで貴様を倒す」
マークレイは更に「超怪力」を発動させた。
「そんな大振りの攻撃が私に当たると思っているのか?」
「うおお」
マークレイは移動せずそこからこん棒を横に振るった。
ブンと言う音が聞こえる程の重さだった。
しかしスピード不足でかわされた。
「思った通りだな! スピードがない」
しかしマークレイは今度は振りかぶり上から叩きつけた。
「おっと、ぬう!」
アンドレイはかわした物のこん棒は大地に突き刺さり深くめり込んだ。
「馬鹿な! 何て威力だ!」
アンドレイは思った。
まさかあれを食らったら私も。
一方クラビはまだ力を入れていた。
ミッシェルは言う。
「クラビ、もういい。俺は自力脱出する。俺はサブラアイム軍と戦う為幼いころから鍛えて来た。嫌それだけじゃない。男として邪神なんにか負けたく負けたくないんだ! うおお!」
骨が全て折れても構わない覚悟だった。
しかしコプロサスは更に力を込める。
「ぐあああ」
その時クラビの体は光るだけでなく背中から炎の様なめらめらした煙の様な気体がでた。
倒れたポートサスは思った。
「勇者の魂が極限まで解放されたのか⁉」
それは登り竜のようになった。
ゆらめく炎はクラビの精神を表していた。
燃える様な怒り。
ミッシェルを心配する事。
力不足に悩む事。
「何と言う力!」
クラビの力が上がりコプロサスは動揺した。
「よし!」
ミッシェルは体内の気を爆発させ自爆した。
そしてクラビは更に力をこめた。
すると遂に隙間があいた。
「うおお!」
ミッシェルは力を振り絞り飛び上がって脱出した。
しかし両腕の骨が折れていた。
クラビはミッシエルを抱えた。
「皆逃げるぞ! 俺が飛ぶ」




