死闘続行 迫る恐怖
アンドレイはクラビに隙を見せず間合いを維持し、向き合いながら思った。
こやつ、「焦ってるんじゃないか?」等と言う余裕まで漂わせる様になったか。
いや余裕だけでなく心理的駆け引きも出来ている。
こう答えておくか。
「貴様ごときに私が焦っている様に見えるか?」
「あんたは明らかに前に戦った時より表情の余裕が落ちている」
アンドレイの目が少し曇った。
「言う様になったな小僧」
周囲が異様な空気に包まれる中ポートサスははらはらして見つめた。
しばしのにら見合いの末今度はアンドレイから切りかかった。
あまり余裕がないと思われない様に振る舞いながらも、かつクラビを恐れさせるための気迫も見せる様な表情だった。
この一撃も何とかクラビは受けた。
クラビは表情を変えないが、アンドレイは戦いを楽しむ様な表情でぎろりと覗きこむ。
クラビはすぐ反撃出来ず、次の攻めもアンドレイからだった。
アンドレイは攻め方より感情の見せ方にこだわった。
感情、苛立ちや怖さを安売りすれば、まだ感情的になっていないクラビより振る舞いが安っぽくなり、後がないような印象を与える。
ある程度相手が力を付けた事を認めながらもまだ余裕がある様な、そんな振る舞いを見せて行った。
凄みのある表情で楽しんでいる様な。
一方、動けないポートサスははらはらしながら見ていた。
どちらも本気を出しているのか。
まだクラビは奥の手があるのか。
そしてクラビはさっと間を取り、アンカーを使おうとした。
「神殿にあった新しいカードだ!」
素早くカードを挿入すると、アンカーの先が変形し巨大な怪物の顔になった。
「ぬう」
アンドレイは少しだけ焦りを見せた。
前にアンカーが怪物化した時より遥かに威力のある光線を放った。
アンドレイの全身が光線に包まれる。
クラビは放出を続ける。
アンドレイは光線で姿が見えない。
放出された光線を全て浴びアンドレイは姿を現した。
着ている貴族の服もボロボロで体がところどころ焦げている。
あえてにやりとした顔でこう言った。
「まだ死にはせんぞ」
「……」
クラビは相変わらず表情も変えず言葉も返さない。
アンドレイは思った。
勢いだけならこいつが押している。
こいつはまだスタミナがあるのか。
それとも無理をしているのか。
そろそろ決着を付けるべきか。
アンドレイは言う。
「少しだけ本気を出すか」
ポートサスは思った。
今のクラビならもしやアンドレイを倒せる?
嫌そんな事を考えては駄目だ。
とにかくここは彼を逃がさなければ。
そこへアンドレイ目掛け光線が飛んできた。
「何?」
そこにはボジャック、マークレイ、ミッシェルがいた。
「皆」
クラビも答えた。
「万一の事があるからマリーディア達は置いて来た」
ポートサスは言った。
「逃げろと言ったろう。何故来た? 君達を死なせるわけには行かんのだ」
ボジャックは言った。
「クラビと一緒にアンドレイに止めを刺しに来たんですよ」
「何だと? 雑魚共が」
アンドレイの声のトーンが下がった。
クラビより格下と目したボジャック達に言われたからだった。
「今のクラビならアンドレイに勝てるかも」
ポートサスは必死に止めた。
「よせ! 君達を死なせるわけには行かん!」
ボジャックは小声で答えた。
「冗談ですよ。まずはここから逃げる為来たんです」
「私が皆を逃がす」
「ポートサスさん呼称が『君達』になってますよ」
「あ」
「俺達は貴方を鬼みたいに厳しいと思ってたけど、本当はそうじゃないと信じていた。だから助けに来たんですよ」
マークレイは言った。
「よし! 逃げる為クラビを援護するか」
マークレイは「勇者の魂砲撃」をかなり離れた距離から放った。
「長距離狙撃型だ!」
放った光線はアンドレイを直撃した。
爆炎からアンドレイは姿を現す。
「おのれ!」
アンドレイは怒り、ボジャック達に光線を放った。
三人に命中し、爆発が起きた。
「皆!」
クラビは少しだけ焦った。
しかしボジャック達はよれよれで立ち上がって来た。
「この位じゃ俺らは死なないぜ」
「何?」
アンドレイは初めて表情を変えた。
その時アンドレイの心に凄まじい声が響いた。
「アンドレイ! 何をやっている!」
「はっ!」
ポートサスは恐れていた。
「クラビが優勢でも、アンドレイが負けそうになれば奴が、コプロサスが降臨するぞ!」
汗だくだった。
そこに何とスタグラーも来た。
「え?」
「安心しろ、私は味方だ」
「観念しろよアンドレイ」
ミッシェルがボジャックにささやく。
「挑発して隙を作るんだ」
「い、いかん、コプロサス様が」
その時地面が揺れ、空から何かが落ちたような衝撃が起きた。




