勇者としての行動
「コプロサス?」
流石に初めて聞く名前にクラビは戸惑った。
しかも遥かに強いと言う言葉に。
しかし彼は努めて恐れを顔に出さない様にした。
以前と比べそこまで彼の度量は上がっていた。
しかし腹に何か引っかかるような戸惑いは消えない。
アンドレイは言う。
「どうだ? 恐れおののいたか」
「……」
クラビはポートサスに聞いた。
「何故、黙ってたんですか?」
問い詰めるようでなく穏やかに。
ポートサスは言いたくなさそうだった。
申し訳なさもあった。
「それは、コプロサスの話をしたら君達が委縮してしまうと思ったからだ、すまない」
「くっくっく、神殿はコプロサス様が一瞬で廃墟にしたのだ」
……それほどまでに。
しかしクラビはそれでも弱みを見せなかった。
ポートサスは言った。
「私がアンドレイと戦う。君は逃げるんだ」
アンドレイは馬鹿にした。
「言う通りにした方がいい、その馬鹿神官でも弾避け位にはなりそうだからな」
「アンドレイ、決着を付けるぞ」
と言ったポートサスの体に突如巨大な圧力がかかり動けなくなった。
「な、何だ」
クラビは手から念を発してポートサスの動きを封じていた。
「君がやっているのか?」
クラビは慄然と言った。
「貴方は戦わないで、僕が戦います。勇者ならそうするでしょう」
「!」
クラビは更に言った。
「例えいつの時代だとしても、勇者と呼ばれる者はそうするでしょう」
弟子にこんな事を言われるとは……
「美しき師弟愛か? 馬鹿神官を庇って死ぬ気か?」
「……」
クラビは無言で睨んだ。
誰も入り込めない雰囲気が充満する。
そしてクラビは口火を切った。
「行くぞ!」
クラビの前回の戦いとは比べものにならない重い一撃がアンドレイに降りかかる。
「ふん」
アンドレイは余裕で受けた。
クラビはぎりぎりと押し込んで行く。
クラビは力で押し切れないと見るや、振りはらい横に切ろうとしたがアンドレイはバックステップして避けた。
「うおおお!」
クラビはすかさず追撃した。
直角から十度程斜めにずれる袈裟切りや、浮き上がるような軌道の突きを出していく。
アンドレイは思った。
腕が上がっている。
しかしこいつ全力を出しているのか様子を見ているのかどちらだ。
前はもっと表情の変化が激しかった。
クラビは小降りに右斜め七十度のけさきりを放ち、×字を描くように左にも袈裟切りを放つ。
いきなりアンドレイの胸のガードががら空きになった。
「隙あり!」
もろにクラビの突きがアンドレイの心臓に刺さった。
「ぐうう」
血が飛び散る。
しかしアンドレイはにやりとした。
「言ったたろう私は不死身だと」
突如アンドレイは口から火炎を吐いた。
クラビは火に包まれた。
「燃えて死ね」
クラビは灼熱の熱さに苦しみながら急速冷却で脱した。
そして「勇者の魂砲撃」を放った。
これがアンドレイに直撃した。
しかしあまり堪えていない。
しかしクラビは表情を変えず疲れも見せなかった。




