クラビ対仲間達 謎の弓兵
「そうか、なら少しだけつきあってやろう。これから皆でクラビと戦え。特殊技を使ってもいい」
「え?」
「皆闘技場へ上がってクラビと戦え」
戸惑いながら一方で「力を見せてやる」と意気込んで闘技場へ上がった。
「一対一ですか」
「嫌、全員かかりだ」
「全員で一人にかかるのかよ」
「俺たちをバカにしてる証拠だな」
「ま、いいぜ」
ボジャックはすぐ気持ちを切り替えた。
そしてクラビにすぐに切りかかった。
一見吹っ切れている様にも見える。
しかし実は様子が戸惑いや躊躇いと意気込みとが複雑に混ざった様な感じだ。
「はあ!」
「ん」
苦も無く受け止めるクラビ。
体の動きどころか目の動きもない。
水平切りと右斜め五十度への袈裟切り。
左斜め四十八度の袈裟切り。
ボジャックの剣の切れ味は以前とは比べものにならなくなっている。
しかしボジャックが攻めているのに彼の方が段々汗をかき熱くなって行く。
「俺は付いて行ってやる! ポートサスを見返す!」
ボジャックの眼差しがそう言っていた。
何となくそれを理解し受け止めるクラビ。
ポートサスは言った。
「よし、横から攻撃を加えろ」
ベルスは予告もなく光の槍を投げつけた。
これがクラビに避けられず当たり爆発を起こした。
何とか爆風を振り払うクラビ。
そこへゾゾが突っ込んで来る。
「行きますクラビさん!」
ゾゾは恐竜との戦いで見せた突き上げる型の奥義を見せた。
「ぐわ!」
クラビは剣で受けられたが勢いで飛ばされた。
「くっ」
かなり効いた様だ。
更にゾゾは攪乱する為高度の高速移動を使った。
「うっ、かなり速くなった!」
クラビも戸惑った。
ボジャックも剣で切りかかった。
突進から振りかぶりで凄い一撃を浴びせた。
「う、ぐぐ」
クラビも受けるので精いっぱいだった。
じっと見るポートサス。
さらにシヴァが来た。
流石に動きも剣さばきも達人だ。
クラビは戸惑いながら連続攻撃を防いだ。
さらにマリーディアは突撃型の射出型光剣の構えで突っ込んで来た。
「おう!」
食らったらひとたまりもない為クラビは必死に避けた。
更にマリーディアは舞いの様な剣戟を見せた。
「う、うおお」
クラビは驚き感心した。
「よし、フィニッシュだ」
ボジャックは手から、シヴァは足から勇者の魂砲撃を出しクラビにヒットした。
クラビは吹っ飛ばされた。
「受け止められなかったな」
「やるな」
と言ってクラビは起き上がった。
ポートサスは言った。
「少しだけ予想より上だった。十五点が二十八点位に上がった。よし、これからを見させてもらう。ただ、あと数日しかないぞ。どんなに努力してもクラビの様に覚醒進化していくわけではない。伸びしろがあるのかという事だ」
ゾゾは言った。
「なら俺は弾避けで死んで見せますよ」
その時だった。
何と手紙の付いた矢が壁に突き刺さった。
「これは!」
手紙の中身はこうだ。
「訓練に中々身が入ってる様だね。我々はいつでも待ってるよ。まあゴキブリの様にせいぜいあがき給え。アンドレイ」
ポートサスは冷静に対処した。
「これを撃った弓兵がまだ近くにいるはずだ。クラビと私で探しに行く。皆はミルダとシンバスと修行しろ」
と言い二人は大急ぎで出た。
クラビは察知した。
勇者のなせる技だった。
「あっちに悪の気配を感じます」
「あそこだ」
前方に大急ぎで走って逃げる弓兵の姿があった。
クラビは勇者の魂を投げ転ばした。
一気に距離をつめ掴みかかり、ポートサスは捕まえようとした。
クラビは危惧した。
「ポートサスさん、こいつなんか只者じゃないですよ!」
弓兵の様子が変だ。
捕まったのにあまり切羽つまっていない。
それどころか軽い。
「わ、私はただの弓兵です、なんちゃって」
「え?」
その声は聞き覚えがあった。
「く、く、く、久しぶりだねえ」
「まさかその声は」
まるで見せるのが楽しみな様に男は兜を取った。
そこには忘れ得ない、驚きの人物の顔があった。
「アンドレイ!」
正体がばれても全く動じていない。
「ふっふっふ。城で命令してるだけだと部下の信頼が下がるのでね。こうして時々前線に出てるのだよ。今日は様子見に来たが、実は邪魔な神官を殺そうかと思ってね」
「貴様が部下も連れず来るわけないだろう。影武者か!」
しかしアンドレイは衝撃波で二人を吹き飛ばした。
「影武者にこんな事は出来ないと思うが」




