クラビと三神官
「え?」
「言った通りだ。クラビは闘技場に上がれ。他の奴はどうでもいい」
クラビは真意を測りかね少しだけ躊躇したが気持ちを切り替え闘技場に上がった。
三人が横に並んでいる。
「まずは私が戦う。いつでも来い」
「……」
すうと息を整えたクラビは特に変わった様子もなく臨戦態勢に入った。
先程の「クラビ以外はどうでもいい」と言う言葉に勿論違和感は感じていたがそれを表に出さない様にしていた。
余程の度量がなければ出来ない事だ。
一方皆は殺気だった嫌な気持ちでいた。
ボジャックは思った。
どう言うつもりなんだ。
俺達を焚き付け葉っぱをかけ奮起を促してるのか。
ミッシェルは努めて表情を変えなかった。
奮起を促すためか。
死人を増やさない為か。
それとも本当に足手纏いなのか。
ミッシェルは皆が怒っていて多分こう思ってるだろうという事は大体推測していた。
その中でクラビとポートサスは木刀で手合いをする。
少し様子を見る為わざと大振りにクラビは攻めた。
「少し隙がある」
とポートサスは小声で言った。
怒るのではなく何となくクラビを理解するように。
刺突。
また大振りの一撃。
斜め上への突き。
様子見だったりあえて感情を表現したり明らかに揺さぶりに来ているクラビの剣筋を巧みにとらえるポートサス。
昨日と剣のスピードが違う。
ありえん一日で変わる等。
底知れない。
私なんかと違って。
クラビはその後も一生懸命を演じる様に剣を繰り出した。
心情をどこか理解しているポートサス。
「よし」
「?」
「交代だ」
そしてミルダが相手するようになった。
ポートサスは手を見た。
手が震えている。
それだけでなく、さっきの私の言葉を受けても冷静でいる。
並の度量ではない。
これが神の作った人間なのか。
私などすぐ追い抜かれるだろう。
クラビはミルダに相手が変わっても態度を変えず手合いを続けた。
黙々さと一生懸命さと動揺が全て動きに出た感じだ。
そして今度はシンバスに交代した。
ここもクラビは調子を変えずこなした。
しかし皆は不満一杯だった。
「よし、これからは三人でかかる」
まずはポートサスが相手したが後ろに引くなりミルダが突っ込んで来る。
今度はシンバスが来る等のやり取りが続いた。
私はクラビの前で師匠として隙を見せる訳には行かない。
どんなに彼が恐ろしいほど強かったとしても。
動揺する訳には行かないんだ。
そしてクラビは再度ポートサスとの手合いで皆に聞こえない様小声で耳打ちした。
「どう言うつもりで皆にあんな事言ったんですか。何か狙いがあるんでしょ?」
「……」
ベルスは怒鳴った。
「おい! 何がクラビしかいらないだよ! ふざけんなよ!」
ボジャックとゾゾも続いた。
「俺はクラビと最後まで付き合うんだ。死ぬまでな」
「俺もだ」
「……」
マリーディアが言った。
「私も行きます」
「駄目だ。行くのは私達とクラビだけだ。足手まといに来られては困る」




