元に戻ったシヴァ
シヴァは蹴って行く。
「うおおお」
それはサッカーの時に見せる普段の彼と違う激しい気迫だ。
しかし、どこかもがいている様にも見える。
出口のない部屋の壁を叩いているような。
ポートサスもそれをなんとなく感じ、目が少しだけ優しくなっていた。
私は医学は分からないからどうしていいか分からないし内心も分からない。
すごい力を持っているが。
何とかしてやりたいが。
ミルダは気づいていた。
「あの子、目にどこか寂しさを感じる」
マークレイは何となくシヴァの内心が伝わって辛く唇を噛んだ。
あいつは病気なんだ……
俺のせいで疾患に、自閉症みたいに。
俺のせいだ。
俺に医者になる事など到底できない。
ならあいつに代わって戦い、医者に病気を完治させてもらうしかないんだ。
くそっ。
悲しみと力の無さでぐっと拳を握った。
シヴァはパンチも繰り出した。
どこか無表情に。
何となく彼の気持ちを受け止める様にガードするポートサス。
「はあはあ」
シヴァは息は切れても攻撃はゆるめなかった。
シヴァの頭に妹ロッシの姿が映る。
あいつは俺が可愛がらないと。
あいつにまた会いたい。
姉さんにも。
回想に入る。
「ほら、パスだ」
「わあ」
シヴァは加減してゆっくりボールを蹴った。
回想を終わる。
「どうしたんだ、キックが弱くなっている」
ポートサスは違和感を感じていた。
何だ、疲れていると言うより何か迷ってるような?
ミルダが急に申し出た。
「私に代わって」
「えっ」
ミルダが急遽相手をする事になった。
シヴァはさらに弱い蹴り、パンチを放つ。
受けながらミルダはその様子を注意深く見ていた。
「やっぱり、何となくわかったわ」
「え?」
「この子は閉じた心の中で妹にパスを送っているのよ。そして会う事を望んでる」
「何だって?」
「迷ってるのではなく、幻覚を見ながら意思を発してるのよ」
「大丈夫かシヴァ」
思いつめたマークレイは言った。
「もういい止めてくれ! 俺が悪いんだ全部」
ポートサスは言った。
「止めるかどうかは私が決める」
そしてまた交代しポートサスは語り掛けた。
「シヴァ、お前も神に選ばれた戦士なんだ」
「……」
「お前の純な気持ちが神に認められたんだ」
「!」
「自分で殻を破れるはずだ」
「うおおお!」
シヴァの蹴りが光を纏いポートサスを吹っ飛ばした。
騒然となった。
「出来るじゃないか」
「はっ! お、俺は」
「シヴァ!」
マークレイは闘技場に入って来た。
「すまない! 俺がすべて悪いんだ俺を責めてくれ! お前は無理するな俺が全部戦う」
シヴァは弱めにマークレイに張り手した。
「大丈夫だ、俺なら」
ミルダとシンバスは話した。
「あの子、吹っ切った?」
「いや病気は自分だけじゃ治せないだろ」
「でも一部でも彼は何かを乗り越えた。
そしてポートサスは合図した。
「良し、今日の修練はこれで終わり!」
そして皆休み、翌日闘技場にポートサスは皆を集めた。
「聞いてくれ。我々ははっきり言ってクラビにしか期待していない。クラビはこれから我々ミルダとシンバスと三対一で戦ってもらう。お前を必ず真の勇者にする。ただ他の奴らはどうでもいい」
マジで言ってんのかあの人。
そしてクラビは三人相手の剣の手合いをした。




