渾身の鉄拳
ボジャックとベルスの戦いは続いた。
しかし「一応」と言う表現が近い。
勿論嫌々やっているのが分かればすぐに伝わるのは分かっている。
しかし二人は「こんな事して意味があるのか」「どう言う狙いなのか」と言う疑問はぬぐえなかった。
度がつく素直なクラビは疑わず最後までやったが、普通なら疑問を抱いて当然だ。
ボジャックは思った。
やってる内に何かわかるかと思ったけど完全には分からない。
二人共息を切らし、両者ダウンとなった。
嫌々やっていたため疲労もかなりだった。
ポートサスは腕を組んだままだった。
「……よし、もういい」
そしておもむろに立ち上がった。
皆何だと思った。
「……よし、次は俺が相手をする。直接」
「え?」
「我こそはと思う者はいないか」
少しの間静まった。
「俺が行く」
それはミッシェルだった。
「ここはリーダーの俺が行くしかないだろう」
相変わらずあの人自分がリーダーと言う前提で生きてるな。
ボジャックは思った。
威圧感と静けさを同時にまといポートサスは闘技場に入った。
それを追ってミッシェルは軒並み静かに入った。
そして向き合った。
二人は威圧感はあるが、かと言って闘争心むき出しでもない、どこか悟った様な表情だった。
倒れて休んでいるボジャックは
いよいよあの男の力が見られる。
ポートサスは言った
「来い」
それに何の疑いもなく呼応するようにミッシェルは突進し渾身のパンチを避けないポートサスに食らわせた。
ポートサスの顔面がひしゃげダウンした。
ボジャック達は思った。
今までミッシェルさんを見た中で一番すごいパンチだ。
ミッシェルはそれ以上動かず様子を見た。
ポートサスは口を拭った。
「お前、只者ではないな、忍者の末裔だったか」
「俺が忍者でもそうでなくてもどっちでもいいじゃないですか。俺と言う一人の人間なんだから」
「ふん、童顔で少しなよっとした男だと思ったが」
「あっ、それ言っちゃ駄目だ」
皆が思った。
しかしミッシェルは眉を一瞬ぴくりと動かしたが何事もない様にこらえた。
「俺達を挑発してやる気を出させようと言うのか? その位で引っかかったらやってられないさ」
「ふん」
「もう一発」
と言いながらのミッシェルのパンチも先程と同じ位凄かった。
「くっ!」
またポートサスの顔が歪んだ。
ベルスは言った。
「なあ、意外にポートサスさん痛がってないか?」
ボジャックは答えた。
「いや、ミッシェルさんの攻撃が想像以上に凄いんだよ」
またミッシェルは拳を繰り出した。
今度は腕でがっしりガードした。
「貴様何者だ」
「何者でもないさ。忍術をかじったり喧嘩を少ししただけの孤児だよ」




