極限の戦いと感情
10月24日、以下を追記しました。↓
マークレイは意を決した。
「よし、そんならとことんやろうぜ! リーダーのざをかけて!」
「リーダーの座……」
「えっ、殴り合い?」
戸惑うクラビとどよめく一同。
「そうだ」
ポートサスは躊躇う事なく言った。
「寸止めじゃなくて」
と恐る恐るクラビは聞いた。
「寸止めじゃない」
また躊躇がなかった。
しかしクラビは躊躇った。下を向いた。
「……」
「どうした」
ポートサスは睨みを弱めない。
「……」
少しだけ強い目を向け拒絶した。
「殴り合いなんて」
「出来ないのか?」
マークレイも言った。
「な、仲間とそんな事」
「嫌なら降りてもらう。修行はさせん、嫌全員帰ってもらう」
「そんな」
「ならば、やれ」
とにかく強い言い方が一貫している。
「……」
クラビは自分の拳を見つめた。
そしてためらいを吹っ切ろうとしていた。
そして意を決した。
思い切ってマークレイにパンチを向けた。
「お、おっと!」
マークレイはスウェーした。
クラビは避けてくれて微妙にほっとした。
マークレイもまだ迷っている。
しかしポートサスが怒った。
「どうした、一発で終わらせろなんて誰が言った」
「よし、今度は俺からだ」
と言いマークレイがパンチを出すとクラビは上手くブロックした。
さらにジャブをさっさと二,三発繰り出したが、クラビは上手く防いで見せた。
そしてクラビもさっさと繰り出しマークレイは防いだ。
しかしポートサスが怒った。
「何をやっている! 誰がそんな中途半端な戦いをしろと言った。本気でやってないだろ! 腰が全く入っていない! 仲間だから躊躇しているなんて甘い事を言ってるんなら本当に降りてもらうぞ! どうなんだ!」
「わ、わかりました!」
クラビとマークレイは慌てながら今度は攻撃も防御も必死にやった。
かなり本気のパンチに必死の防御と避けが続いた。
異様な雰囲気に包まれた。
「……」
お互い目はかなり本気になっていた。
普段温厚なクラビがかつ相手が仲間と言う状況で何となく闘争心を引き出され知らず知らず戦いに没頭する感情になっていった。
ポートサスは黙って腕組みで見つめる。
マークレイもお互いの目をきっちり見つめ、顔や胴体を的確に狙って行った。
やらないと降ろされるからもあるが、自分が戦わなければいけないようなそんな気持ちになっていた。
同時に二人にはお互いある種のわだかまりもある事に気づいた。
ボクシングの様にパンチとガードの応酬が二分ほど続いた。
そして合図が入った。
「よし」
よしの次が何なのか気になりシーンとした。
「よし、今度はガードと避けなしで、相手のパンチを全て受けるんだ。そしてどちらかが倒れるまでやれ」
「そ、そんな事」
「出来ないのか」
「ぐっ」
「俺がやる」
と言いマークレイはパンチを繰り出したが寸前で止めてしまった。
「ぐ」
ポートサスが言う。
「何をやっている根性なしが」
「……」
「そんな事でアンドレイ達に勝てるか」
マリーディアは立ち上がった。
「止めて下さいこんな事!」
「じゃあ君は帰れ」
「よし!」
クラビはマークレイを殴った。
しかし少し浅かった。
こらえたマークレイは返そうとした。
こんな状況になってしまったならクラビを憎むしかない、と彼は思った。
嫌俺は結局わだかまりが取れてなかったんだ。
マリーディアの事。
あいつがいつも何故か中心的である事。
あいつが俺と違い聖人的人格である事。
俺は卑小な人間だ。
だから悪魔につけこまれたんだ。
そんな事考える暇あったらもっと努力すればいいのはわかってる。
で俺が許せない人間もあいつは許したりする時、自分の方が小さいってわかる。
それを認められない自分、認められない自分。
そしてマークレイはクラビを殴った。
しかしクラビも同じ様に何とか殴ろうと思った。
クラビは疑問を感じていた。
どう言う事なんだ。
甘さを捨てろとか、闘志を引き出すとかそういう狙いなのか。
よく分からないけど。
クラビもマークレイを思い切り殴った。
「あ、あれ⁉」
俺にも少しマークレイへのわだかまりがあってそれが出た様な。
それにいつもより闘争心を引き出せたような。
「相手を目の前の敵だと思うんだ」
マークレイは意を決した。
「よし、そんならとことんやろうぜ! リーダーのざをかけて!」
「リーダーの座……」
そして殴り合いは十発以上続いた。
マリーディアは泣いていた。
「死んじゃうよ……何でこんな事」
「はあはあ」
「ぐ、ぐう!」
二人共膝を付いた。
「どうした! そんな事ではアンドレイに勝てんぞ!」
マークレイは思った。
俺は誰に嫌われたって良いんだ、どうせ前の神殿での「神との対話」で皆に伝わったんだから。
クラビも引き出された本能を抑えきれず殴った。
五分ほど殴り合い、遂に二人は倒れた。




