クラビ、ボジャック、マークレイの過去回想二
回想は続く。
その後孤児達は夜窃盗をしていた。
マークレイとベルスは警備隊を引きつけクラビ達を先に逃がした。
「お前らは見張り役だ、罪を背負う必要はない」
クラビは難儀した。
「でも」
「いいから行け!」
仕方なくクラビ、ボジャックは逃げた。
この時代の警備隊は孤児を憎んだり見下す者もいた。
警備隊の一人が言う。
「あの生意気な孤児共、最近随分悪さをしてるみたいじゃないか。面白い、この試作型の銃と言う武器で撃ってやろう」
と現代で言う火縄銃型の銃の砲身を布で拭いた。
マークレイは警備隊と戦いながらマリーディアのセリフを思い出した。
「やめて! 盗みやひったくりなんて! そんな事をしても幸せになれないわ! お金や食べ物なら私が何とかするわ!」
「……」
あんな良い事を言ってくれる女なんて多分どこを探してもいないだろう。
俺だって好きさ、死ぬほど。
でも俺じゃ彼女を幸せには出来ないだろう。
俺に惚れてる訳でない事も何となくわかるよ。
彼女は皆に優しいんだ。
でもクラビと話してる時だけ少し違った表情を見せる。
気のせいなのか。
だがマークレイはこん棒で後ろから殴られ、立っていられなくなった。
ベルスも殴られ倒れた。
「覚悟しろ盗人の孤児共」
そこへミッシェルが現れ「蜘蛛の糸」で警備員をがんじがらめにした。
返す刀で凄まじい威力の鉄拳を別の警備員にも叩き込みダウンさせた。
「何だあの忍者みたいな技を使う奴は!」
「捕らえろ!」
ミッシェルはマークレイとベルスを担ぎ大急ぎで逃げた。
マークレイは心配した。
「駄目だ……こんな事をしたらあんた達忍者の末裔一族が目を付けられる」
ミッシェルは叫んだ。
美形な顔が変形する程に必死に。
「仲間の命に変えられるか! 確かに親族や同郷の士たちは大事だけど、今は俺は孤児院の一員で孤児院の仲間が大事なんだ!」
「あんた、最高のリーダーだよ」
「何て足の速い奴だ!」
警備員は諦めるしかなかった。
一方クラビとボジャックは警備隊に追いつかれてしまった。
よりによって試作型の銃を持った警備員だった。
「もう、道がない」
「さーて覚悟してもらうか。お前らは捕まえるのでなくここで殺す」
「何⁉」
ボジャックは叫んだ。
「お前らみたいな汚い奴らは死ぬのが相応しいんだよ。抵抗したって事でな」
ボジャックは憤った。
「あんた孤児をいたぶって喜んでいるのか」
「孤児に権利はねえんだよ。嫌、お前らが盗みやるから悪いんだろうが。ただ貧乏人はいずれ犯罪者になるからここで撃ち殺すが」
その時黙っていたクラビの片眼がぴかりと光り警備員にも届いた。
「な、何だ?」
「何だこの小僧の威圧感は。まあいい覚悟しろ」
ボジャックは素早くクラビを庇う様に前に出た。
「俺だって仲間の弾避け位にはなれるぜ」
警備員は冷酷に言った。
「ふん。さっさと撃たれて死ね」
しかし、クラビはゆっくりとボジャックより前に出た。
「えっ?」
そして言った。
「俺は仲間を弾避けなんかにしないぞ」
「……!」
「死ね!」
その時クラビの体から凄まじい光が発せられ警備員の目がくらんだ。
そして光と共に二人は上昇し高い建物の屋上へと行った。
着地したボジャックは興奮した。
「す、すごい、すごいよお前! 多分お前は勇者なんだろう。ならお前のやる事に最後まで付き合うぜ、死ぬまでな!」
その後全員捕まったのだが、教会の仲介で解放されクラビ達は教会に行く事になった。
回想を終わる。




