マークレイの内面と魔の呪いの札
ナイフ投げの名手の様に、見事に拡散されかつ正確に飛んで行った「射出型光剣・小刀型」は次々メッサー・ディルゴの砕かれたバリアの破片を迎撃した。
お、俺にも出来た……
俺にも神に認められた勇者の素質が、あるのか?
「ふん」
だがメッサー・ディルゴは動じていなかった。
「中々の上級テクニックだが、私の砕かれたバリアはその程度では防げんぞ」
ナイフ形光剣が砕かれたバリアにぶつかると、それは更に細かく分裂して来た。
これが雹の様に細かくなりマークレイに向かって来た。
かわし切れなかったマークレイは顔をいくつか切られた。
「ぐ……」
「まぐれの付け焼刃だな」
「くっ!」
マークレイはいきり立って射出型光剣の通常型を出そうとした。
「ふっ、何かな?」
しかしマークレイが構え集中しても、クラビの様に形にならない。
「何故だ。エネルギーが集まりそうで分散してしまう」
「勇者の技の猿真似か。貴様には所詮使いこなせんわ」
「ぐっ」
「やはり貴様らはその程度だな。この前戦った時も恐ろしいのは勇者のクラビだけだった」
ベルスは言った。
「この前は負けたくせに偉そうな事を言うな!」
「この前は偵察、いや自己紹介をしにきただけだ。あれが本気だとでも思ったのか?」
マークレイは自身を鼓舞した。
「それでも、やってやる!」
マークレイは接近戦に持ち込もうと突っ込んで行った。
もろにメッサー・ディルゴのローブを切り裂こうと食い込んだ。
しかし切り裂けない。
「な、何だこの鋼鉄みたいな法衣は」
「魔の呪いのローブを甘く見たな。ふん」
逆にメッサー・ディルゴが杖でマークレイの鎧に触れると高熱で溶断されかけた。
「ぐう!」
「くっくく」
「何て威力だ、デュプス王から貰った鎧が切られている」
「うおお!」
隙をついてベルスは後ろから切りかかった。
ところが見えない何かに防がれた。
「何だこれ、まさか」
「そうだ、背後にもバリアを張っていたのよ」
バリアは先程と同じ様に砕けてガラスの様に飛びベルスのあちこちに突き刺さった。
「ぐあああ!」
しかし、ベルスは倒れそうになったが驚異の精神力で立ち上がり再び切りかかった。
ところがまた何かに防がれた。
「二重バリア?」
「そうだ、今度は氷のバリアだ」
バリアは割れ氷の弾に分裂しベルスに襲い掛かった。
強力な氷魔法にベルスはダウンした。
「こいつ、自己紹介だと言ったのは本当だったのか」
「その程度でアンドレイ様を倒すつもりだったのか? 頭の悪い孤児共」
「俺達だって神に祈り神に力を貰ったんだ!」
「そうだ!」
叫びミッシェルも立ち上がった。
「うおお!」
再度マークレイは切りかかった。
するとサブラアイム兵がかばった。
「ぐあああ!」
「良く防いでくれた。これがサブラアイム軍の流儀だ、死ぬ時は敵を倒す時か上官をかばう時だ」
「うおおお!」
再度叫び切りかかるマークレイ。
これを杖で見事に防ぐメッサー・ディルゴ。
切り合いは続く。
マークレイはフェイントを使い光閃掌の要領で光を出したパンチをメッサー・ディルゴの顔面に当てた。
「ふん」
しかしこれも大して効いていない。
続けてボディにも何発か見舞った。
ミッシェルは横から思い切りメッサー・ディルゴを殴った。
普通なら吹き飛ばされる威力だ。
だがこれでも倒れない。
「下品な奴らだ。剣より拳とは、貧乏人の本性むき出しだな」
「貴様が倒れるまで、剣でも拳でも何発も叩き込んでやる」
メッサー・ディルゴはにやりとした。
「マークレイとやら、貴様はこれから我々に利用される」
「何?」
「貴様はクラビへの憎しみを心に持っている。それを利用させてもらうのよ」
「んなもんある訳ねえだろ!」
とミッシェルはかばい怒鳴った。
マークレイは言葉を絞り出した。
「俺は小さい人間だ。仲間のクラビを妬んでいる……自分が一番良く分かっている! だが俺は自分の弱さを認め打ち勝ってやる! 貴様に利用などされはしない! そしてクラビ程でなくても人を守る勇者になってやる!」
気を取り直しマークレイはアンカーナパームを構えて放った。
これがメッサー・ディルゴに直撃した。
しかし爆風の中から出て来たのは味方兵を盾にしたメッサー・ディルゴだった。
「盾にしたわけではない。こいつらは自分の意思でなったのだ。よし、今度はお前達が相手をしろ」
すると先程より凄まじい殺気で待機していた兵達は襲い掛かって来た。
マークレイは迎え撃ち剣で切ったが、兵は凄まじい精神力で立ち上がって来た。
「何だこいつらゾンビか?」
「言ったろう、サブラアイム兵が死ぬのは敵を殺す時だ」
「な、何て鬼気迫る目だ」
「うおおお!」
他の兵もすさまじい気迫で突っ込んで来る。
「うおお」
ミッシェルは刀で一人を切った後、金縛りで他の兵士を止めた。
ところが兵士達は凄まじい気迫で術を解こうとする。
「何て執念だこいつら」
メッサー・ディルゴは言った。
「そろそろ良いだろう、アンドレイ様、『死神の札』を兵に」
メッサー・ディルゴは札を撒いた。
それが兵達に付くと目つきが変わり狂人の様になった。
「アンドレイ様の呪いのかかった札だ。これで血をいくら流してもこいつらは向かって来るぞ」
「何だこいつらの目は! 正気じゃない!」
しかしマークレイは心を鬼にして1人を切った。
しかし兵は血を流しながらもすぐ反撃した。
「うわあ!」
マークレイは体を切られた。
鎧で防がれていても。
「ここまで兵を死人の様に扱うとは、アンドレイめ。俺もクラビみたいな力があれば、嫌ないのか」
しかしマークレイはマリーディアの言葉を思い出した。
「血って嫌よね。命を奪ったり争いの象徴。血が流れる時って必ずそう言う時でしょう。私は血の流れない世の中にしたい」
「お、俺だって」
そしてクラビの声が聞こえた。
「マークレイ、頑張れ」
「幻聴か? それとも本当にあいつの声か? 俺はあいつを妬んでリ憎みさえしたのに、俺を……ならば俺は、俺だって」
マークレイの体と剣が光る。




