それぞれの思い 深夜の修行
一方、場面は切り変わり、クラビ達のパーティは石になったジェイニーを交代で二人ずつ運んだ。
「重いね」
「今敵と会ったら不利だ。二人を除いて他のメンバーは先へ逃げるんだ。
ボジャックは言った。
「そ、そんな」
マリーディアは同意しかねた。
「仕方ない。ジェイニーをかばって全滅の可能性がある。
マリーディアは聞いた。
「マークレイさん達と別れた事、良かったのかしら」
ボジャックは言った。
「俺はプラスに捉えてる。メンバーが減って一人一人が役割を自覚できるようになった。ゾゾも年下だからって甘えてちゃだめだぞ」
「は、はい、今考えてます。今までクラビさんとボジャックさんの後をくっ付いて行く感じでしたから」
「おう、自分で思ってるならいいよ。それにマークレイの事だけど、ほら」
マリーディアは黙った。
「言わない方が良かった?」
「ううん。私のせいかもしれないわ。彼を苦しめてたの。孤児院時代から良く話しかけてくるから私と仲良くなりたいのかなって感じてたけど」
「それと、あいつがクラビに憎しみに近いライバル心を持ってた事、俺もあいつに昔から持ってたけどね。だから強く且つリーダー的な人間になる様にしたんだ」
「でも皆の前で気持ちを言うって凄い勇気ね」
「本当、良く言えたと思う。嫌われる覚悟もあったと思う。それだけ悩んでたのか」
そしてやっとの思いで町に着いた。
まず教会でジェイニーの石化を解いて貰った。
次に武器屋に行ったがめぼしい物はなかった。
「王様にかなりいい武器貰ったからな」
そして稼いだお金で美味しい物を食べ早めに宿に泊まった
クラビは夜抜け出して外で修行しようと出て来た。
そこへボジャックが来た。
「修行付き合うぜ」
「ごめん。今日は一人でやりたいんだ」
アイムが言った。
「この修行は一人で集中するのが大事なの」
ゾゾは部屋で思っていた。
「俺にも戦う決定的理由がないとな。守る人でもいればいいけど。兄貴がいたら教えてくれたかな」
ゾゾは以前の敵と戦った時の自身を思い出した。
「クラビさんの敵は俺の敵だ」
「クラビさんの前に俺が相手だ」
今まではそれでよかったけどクラビさんやボジャックさんの為でなく自分の意思で強くならなきゃいけないんだよな。いわば自立。
クラビが外へ出ると何と先にマリーディアがいた。
「あ」
「貴方の事だから夜修行すると思って来てたの」
「ごめん、今日は一人でしたい」
「でも、相手がいた方が伸びやすいし、それに貴方は無茶しやすいから」
「いや、今日は一人でやる」
「そう」
マリーディアはとぼとぼと別の場所に行った。
クラビは対戦せず一人で木刀の素振りを始めた。
十回、二十回。
アイムは言った。
「勇者の記憶と能力はこつこつとした努力で徐々に取り戻せるわ」
「うん」
本当にもくもくと木刀を振っている。
「記憶と能力を取り戻す」
「そうすれば力だけでなく戦術も頭脳も以前の本当に勇者だった頃に戻れるわ。でも忘れちゃ駄目。貴方は過去に負けたの。だから過去の力を取り戻すだけでなく『生まれ変わった今の貴方』の力を上乗せしなければならない。『新しく書き換えられた勇者』と言う感じで」
「うおおお!」
指輪の文字が光り力があふれ、振った剣から閃光が発せられた。
そこへマリーディアが来た。
クラビは振り向いた。
「もう三時間経ってるわ。そろそろ寝ないと」
ボジャックも来た。
「俺も連れ戻しに来たよ」
クラビは言った。
「分かった。でも最後に、力を試したいから二人で同時にかかって来てくれ」
「ああ、俺はお前が目標を達成するまで最後まで付き合うつもりだからな」
「私もアイムに貴方の力になる様言われてるし」
そして三十分ほど二対一の手合いは続いた。
はあはあ言いながらクラビは勝った。
「また大分強くなったよ、お前」




