新パーティ初戦 それぞれの思い
敵はオーガが三人、キマイラが二匹、ゴルゴンが一匹だった。
「よし、行くぞ!」
ボジャックがリーダー的に号令をかけた。
「皆自信を持て! 確かにあいつらは強めだが今の俺達なら一人一殺でも行けるぞ!」
シヴァは思った。
俺の体が軽く感じる。
マークレイと別れて心が解放されたからか。
五メートル近く上背があるオーガはボジャック目掛け進撃してきた。
こん棒を振り上げ力を溜め引き絞る。
「来い!」
ボジャックは挑発した。
グオウと声を上げながら木の太いこん棒をボジャックと言うより大地を割らん勢いと気迫で叩きつけて来た。
「おおっと!」
素早く左にジャンプして避けたボジャック。
アイムは言った。
「ボジャックのスピードが大分上がっている」
オーガは苛立った。
たけり狂いもう一発今度は地面を払う様に低空位置に水平にこん棒を放った。
これも今度は上にジャンプしてかわすボジャック。
しかしこれはフェイントだった。
オーガはすぐに本能で獲物を察知し空中から着地してくるタイミングのボジャックをまともにこん棒で殴った。
「ぐっ!」
「ボジャック!」
アイムは叫んだ。
顔と体が変形しそうなほどの広い範囲に打撃を受けたボジャックだったが何とか倒れず踏みとどまって見せた。
「ふう」
アイムは再び驚いた。
「打たれ強さもすごく上がってる! およそ常人レベルじゃないわ!」
ボジャックはジャンプし水平線を描くような広範囲への水平切りを食らわせた。
力が入っている様で力んでいるわけではない。
オーガは左胸から血しぶきを上げ叫ぶとがっくり倒れた。
ところが後ろに控えていたもう一人のオーガがずんずんとボジャック目掛け進んで来た。
突如、ゾゾが横から何とスライディングキックでもう一人のオーガの足を払い転ばせた。
アイムは再度驚嘆した。
「す、凄い!」
倒れたオーガは体勢を立て直して来た。
しかし踏み出した足に対し何とゾゾは膝に飛び乗り空中高くジャンプした。
そして数回空中で回転してからその勢いのまま剣をオーガの肩の上から切り落とし垂直に降下した。
グオウと悲鳴を上げるオーガ、更に着地して下から見上げる体勢になったゾゾは素早い動きで懐に飛び込み今度はすくい上げる様に下から上に垂直ジャンプしながらオーガを切った。
下からも上からも垂直にオーガは切られた。
「この戦法は特にでかい奴に有効だ」
シヴァは更にもう一人いるオーガの首にアンカーを投げて巻き付かせそこからアンカーを引っ込める勢いで上にジャンプしオーガの顔に蹴りを食らわせた。
そして更に疾風の剣の特性を十分に生かした素早い連続攻撃でオーガの上半身を何発も切った。
これで勝負が着いたも同然だった。
「すごく動きが良くなってる」
アイムは感心した。
ボジャックは思った。
クラビがアンドレイを倒す目的をしっかり持っているなら俺もしっかり目標を見定める。
あいつには最後まで付き合うが、ただあいつに付いて行くんじゃない。
俺もアンドレイを倒したい、孤児の為じゃなく皆の為。
昔は権力者や金持ちが憎かった。でも今は違う。
クラビが言う平等って言うと社会主義みたいに聞こえるけど俺は平等と言うか努力した人や苦しんだ人、良い人が報われる世の中にしたい。
クラビは王様になりたいとかビジョンが少し漠然としてるけど俺はその考え方をもっと具体的にして行きたい。
あいつに付き合うのもそうだが俺は最後までアンドレイ達を倒す気持ちを持つ。
ゾゾも思った。
クラビさんは孤児院とマリーディアさんを救うため短期間で猛パワーアップした。
勿論俺もアンドレイ達を倒す気持ちはあるけど、きっかけと言うか、何の為に戦うのか守る人でも出来ればな……
シヴァは感じていた。
何だこの熱さと開放感…… 俺はマークレイに長い事心を縛られていたのか。
でもこれからは解放された心を戦いに賭ける。
そしてクラビ、ジェイニー、マリーディアはキマイラ達と戦っていた。




