神との対話二 マークレイ祈る そしてわだかまり
2023年11月28日読みやすく直しました。
「マークレイが?」
どういう事だと皆がざわざわしだした。
神官が念を押す
「そなたの願いが皆に筒抜けになってしまうが良いかな?」
「はい、構いません」
きっぱり口を真一文字に結んだ。
顔は曇っていたが迷いを捨てた様に答えた。
ボジャックは疑念を感じた。
マークレイの願いって一体何なんだ?
聞かれても良い事なのか?
前何であいつはクラビへの憎しみを持っていて操られたんだろう。
クラビに憎しみを持ってるって。
クラビはじっと見ていた。
そしてゆっくり歩を進めたマークレイは祭壇前に着いた。
マリーディアは自分が関係あるのではと言う不安があり心配そうな顔をした。
神官は言う。
「祈りながら願いを言いなさい」
マークレイはすまなそうに口を開いた。
「謝りたい事が一つ、願いは幾つかあります。言えなかった事が」
そして祈ると二分後神が降りて来た様な感覚がマークレイに起きた。
「……」
「よく来たね。さあ、困った事や願いを言いなさい」
やがてマークレイは口を開いた。
「まず謝りたい事はシヴァの事です」
「え?」
シヴァは聞こえて驚いた。
「あいつが病気になったのは俺のせいです。いや病気である事すら知らなかった。『俺の子分じゃない、対等だ』と何度も言って来たけど、それが通じない位医学的に重い症状だと知りませんでした。だから病気を治して欲しいです。または病院に俺が連れて来たいです」
皆は顔を見合わせ騒然となった。
「気にしすぎるな」
ベルスが言う。
「そうだ、俺でも良いから頼れ」
ミッシェルが親指で自分を指さし言った。
「以上かな」
「いえ、次は願いです。あの、クラビと再び仲良くしたい。俺があいつを嫌う心を消したい!」
「ええ⁉」
クラビは黙っていたが皆騒然となった。
「俺は前操られた通り自分でも認めたくないクラビへのやっかみが心に生まれていた。一つはあいつがマリーディアと仲が良いから。俺はマリーディアをずっと前から好きだった」
マリーディアは本当に驚き顔を赤らめた。
皆はマリーディアを見ない様にした。
「俺はずっと好きで再会したら気持ちを伝えたかった。でもクラビは既に仲良くなっていた。でも俺はクラビと昔親友の誓いをしたから裏切る訳に行かなかった。もう一つはクラビがどんどん強くなって皆の中心、リーダーになって行きそこにやっかみが生まれたんだ。俺は子供の頃からミッシェルさんが来るまでリーダーだったからこれも認めたくない自分の悪の心だった」
皆は驚きとマークレイの苦しみを察して黙ってしまった。
「俺は昔十二歳位までリーダーで皆に頼られていた。それが嬉しかった。クラビは少し不器用だったから俺が助けようと思った。他の力の弱い人も助けようと思った。孤児だからこそ。あの頃は楽しかった。でも院長が変わったり中でも俺の親が見つかって引き取りに来たりしてから俺は荒んだ。欲望を正直に出すようになった。でもその前までは楽しくリーダーをやっていて皆を言いなりにするつもりじゃなかったんだ」
「……」
皆が黙ってしまい神は言った。
ボジャック達は回想した。
ナンバーワンの腕でサッカーをするマークレイ。
クラビの汚した場所を洗ってやったマークレイ。
一緒になくし物を探した事。
一緒の食事で大もりを速く食べる姿。
マークレイの胸にも懐かしく思い出され思わず彼の目から涙が出た。
「あの頃は仲良かったんだ皆、嘘じゃなく親友だと誓った」
神は言う。
「君は恐らく余程リーダーだった事が楽しくその頃を取り戻したく思っている。それだけでなくその頃はクラビ君達を『自分より弱い人』と下に見ていたんだ」
「……」
「だからこそ君はクラビ君がリーダーの様になった事に僻みを感じたんだろう。マリーディア君の事も」
「……」
「だが、人をやっかむ事は罪ではあるがその心を消す事も認めない事も不可能なのだ」
「……」
「君は勇気を出しここに来て打ち明け自分の悪い事を認めた。後はそれを受け止め自分に正直に生きるかそれとも仲間と別れるか」
「正直に生きるなんてそんな事! だからと言って俺がパーティにいたら関係がおかしくなる、やはり別れるしか」
「決めるのは君だ。ゆっくり考えろ。これで良いかな」
「俺は仲間を裏切らない! 裏切ったらリーダーでも男でもなくなっちまう! 例え好きな人がいて嫉妬心があったとしてもそれを受け止め友を裏切らない生き方をする男になる! 皆がリーダーと言ってくれてクラビも親友だと言ってくれた、それに応えるのはそう言う人間じゃなきゃダメだろ! 好きな女がいるから仲間を憎んだり裏切るのはただの卑小な嫉妬人間だ! リーダーって呼ばれるならそれにふさわしい生き方をしなきゃダメだろ? それでこそクラビと肩を並べられるんだ! 俺は例えこの先どんなに苦しんでもそれを乗り越えクラビに信頼される男でいる、い続けるんだ!」
そしてマークレイは祭壇から戻って来た。
「あ……」
マリーディアは何か言いかけたが言えなかった。
マークレイは目を合わせなかった。
マリーディアは皆にマークレイも含め絞る様に言った。
「私、パーティを抜けるわ」
「え!」
しかし間髪入れずクラビも言った。
「俺が抜ける」
「いや、俺が抜ける!」
申し訳なさそうな顔でマークレイが言った。
ジェイニーがなだめる様に言った。
「でもマークレイさん抜けると戦力落ちるし……」
ミッシェルが後ろから言った。
「マークレイ、即断するな、抜けるかどうかもう少しだけ様子を見ろ」
「そうだ」
とベルスも言った。
フリオンが言う。
「私も全然関係なくパーティわけようと思ってたの。その方が全滅しにくいでしょ」
アイムが言った。
「そうね、私も思ってた『クラビ、ボジャック、ジェイニーマリーディア、ゾゾ、シヴァ』と『ミッシェル、マークレイ、ベルス』に。これから二方からサブラアイムの神の闘技場を目指しその後アンドレイと戦う」
ミッシェルが言った。
「女神さん達も思ってたのか」
アイムは言う。
「でももうすぐ全員じゃないと勝てそうにない敵が来るわ」
ミッシェルも言った。
「俺も気づいてたぜ」
「あっ!」
神殿を出ると新しい幹部らしき男と十人以上の兵が待ち構えていた。
「新しい幹部!」
その男は帽子の様に大層な被り物とローブに身を包んでいた。
「くらえ!」
パワーアップしたクラビは三本アンカーを射出した。




