神との対話一
「神の闘技場?」
「そうだ、そこへ行けば更なる試練をデュプス神は与えてくれる」
「サブラアイムにあるんですか? デュプス神なのに」
「うむ、昔の戦争で隠れた信者が建てたんだ」
クラビは言った。
「よし行こうそこへ」
ミッシェルは言った。
「ただ、サブラアイムには強力な魔物や軍が放たれている、厳しい道になるぞ」
神官は言った。
「それと、ここの神殿は更なるパワーアップイベントがある」
「え?」
神官は更に言った。
「ここではまだ『選択式イベント』である『神との対話』があります」
「神との対話?」
「ええ、参加するかは一人ずつ、個人の自由です。この祭壇で一人ずつ『今望んでいる事、辛いと思っているが人に言えなかった事』を祈って下さい。そうすると神様と対話できもう少し力が上げてもらえます」
「おお、じゃあ皆でやれば」
神官は説明した。
「なのですが、このイベントには一つ大きな難点があります」
「難点?」
「神様に祈った事がそのまま音になってここにいる皆さんに伝わってしまいます」
「ええ?」
「つまり隠しておきたい願い等がある人は止めた方が良いです」
「ええ?」
皆どよめいた。
ジェイニーは内心思った。
わ、私がやったらボジャックへの思いがばれてしまう。
ボジャックも思った。
俺がやったらジェイニーへの気持ちが……
マリーディアは一人で顔を赤らめた。
クラビへの思いが……
クラビは聞いた。
「どうしたの? もじもじして」
「え? 何も!」
マリーディアは慌てた。
クラビは言った。
「俺、やってみる」
「ええ?」
皆の中でマリーディアは取分けどよめいた。
「クラビの願いって……」
「それは言ってのお楽しみ」
そしてクラビは祭壇前に膝まづいた。
目を閉じて祈る。
すると神が話しかけてくるような感覚が目を閉じたクラビに怒った。
「さあ、願いと悩み事を言いなさい」
「はい、俺はもっと強くなりたいです。そして絶対にアンドレイ達を倒したいです。今度は。負ける事が許されない。王様になりたいのは無理かもしれないけど平和の為に何かしたいです。後マリーディアを」
「えっ?」
ここの部分を神はかき消した様だ。さらに願いは続く。
「寂しいと言う感情を知りたいです。俺は死んで神の被造物として蘇ったから親がいないから親がいない寂しさが分からない。だから皆の気持ちが良く分からなかった。だから寂しさを知りたいです」
「以上かな」
「はい」
皆クラビの願いを聞いてしんみりした。
クラビさん、親の顔も知らない、いやいないんだ。
ジェイニーは深く同情した。
クラビ……
マリーディアも同様だった。
「じゃあ次は」
「俺が」
それはシヴァだった。
シヴァはクラビと入れ替わり祈った。
「俺はマークレイが怖いです。前殴られた時から。それが病気みたいになって心が支配されてます。何とかして下さい」
これは皆に聞こえた。
マークレイが一番ショックだった。
皆はマークレイをちらちらと見た。
マークレイは謝る事も出来なかった。
シヴァは帰って来た。
「俺が行く」
とムードを切る様にベルスが行った。
マークレイは思った。
あいつ、もしかして俺に気を使って。
ベルスは膝まづき祈った。
「俺に自分の余計なプライドを認める強さを下さい」
皆はよく意味が分からなかった。
ベルスは回想しながら言った。
「俺は貴族の親に引き取られ家に戻りそこから改心して騎士学校に入った。今も人の為に生きたいと 頑張っている。ただ俺は昔は『貴族なのに何故孤児院入れられるんだ』とおごった考えがあった。そしてそういう態度を取っている内に親は引き取りに来た。しかし最初は優しかった両親もやがて段々冷たくなってきた。でも俺は今度は正しく生きると誓ったから負けずに正しく生きようとした。でもひねた心と貴族のプライドが時々邪魔してくる。それを打ち消す為剣術を必死にやった。そしてある時叔父が遊びに来た。叔父は俺を庭に連れ出して言った」
「何か悩みがあるのか」
「自分の悪い心を消せません」
「ならいいではないか、自分のプライドを受け取めて生きれば」
それで俺は気が楽になった。
「だから叔父さんも両親も俺の事心配してるし、孤児院からの仲間とも対立があったから二度と昔の様にしたくない。悪い心がある事を認めそれに屈しない様にしたいんだ」
「分かった」
と神の声が聞こえた。
ベルスが降りてくると皆感心した。
「これで全員かな?」
神官が言うとマークレイが言った。
「俺にやらせて下さい!」
マークレイが最後になった。




