ノーズランド神殿への道と皆の過去
戦いを終えたメンバーは疲れと傷を抱えノーズランド神殿へとゆっくり歩いた。
神殿へは後三十分と言う所だった。
ボジャックは言った。
「まさか、まだサブラアイムの追っ手がいるんじゃないだろうな。もうあまり力が残ってない」
マークレイは答えた。
「もしそうなら、戦力を分散させるのでなくさっきまでの布陣をさらに強固にしているかも知れない」
ミッシェルが言った。
「アンドレイがどれだけ俺達の事を脅威に見ているかで兵力の割き方が違ってくると思う。強く意識してたら死力を尽くしてでも潰しにくると思うが。だが城で俺達はアンドレイにあっさり負けた。クラビがパワーアップしたにも関わらずだ」
「……」
「あの時アンドレイは止めを刺そうと思えば出来たのに呪いをかけただけで帰った。せいぜい『また時間が出来たら遊んでやる』ぐらいの感覚しか持ってないんじゃないかと思う」
「俺が孤児達を殺されて切れてもそれでもアンドレイの方が力は上だった。レベルは俺が二十八として向こう六十位だろう」
アイムは言った。
「現時点では厳しいけどその位。だからこそ神殿で力を思い切り伸ばしてもらうのよ」
ボジャックは聞いた。
「俺達はアンカーとか神の武具持ってないけど引き出して貰えるの?」
「勿論よ」
ボジャックは再度聞いた。
「神に会ったのってクラビ、マリーディア、マークレイ、シヴァの四人だっけ。皆とても辛い時に助けに来てくれたのか」
フリオンは答えた。
「ボジャックとゾゾ、ジェイニーはそこまでのピンチになった事がないから会ってないんだと思う。後ねクラビとマークレイは戦いの素質が凄くあるから神様の目にかなった部分があるのよ。クラビは『勇者』、マークレイは『戦いの天才』とかね」
マリーディアは言った。
「私は一人で魔物に襲われどうしようもなかった時神様が現れた」
シヴァも言った。
「俺もそんな所だ」
マークレイは言った。
「戦いの才能か、じゃあ神様の期待に応え皆を守れる様に研鑽しないといけないな」
マークレイは生まれつきの少しやっかみやすい心を捨て皆に信頼される人間になろうと思っていた。
皆がリーダーとして慕ってくれた十~十二歳の頃に戻ろうと思っていた。
あれから色々あって荒れた過去を消す事は出来なかったとしても、償いぐらいはしてみたい。
しかし否定できないのがクラビとマリーディアの関係だ。
それに対する嫉妬心が消せない。
孤児院時代からマリーディアと話す事はクラビよりずっと多かったが、クラビを密かに好きだったマリーディアの気持ち。
マリーディアはクラビの前で自分は見せない笑顔を見せる。
さっき恐竜の足からクラビやゾゾを助けようとしたのも勿論友情からだ。
だがクラビの方が激しい光と力を出していた。
俺とクラビは何が違うんだろうな、俺の方が何か足りないんだろうな。
でもそれを消せるくらい強く頼られる人間にこれからなって見せる。
「大丈夫か?」
ミッシェルが声をかけた。
「お前が会話に加わらなくなる時は相当何かに思いつめている時だろ」
「別に」
マークレイは笑顔で返した。
ここでシヴァ達の過去を述べる。
シヴァは六、七歳の頃は孤児であることもあってあまり積極的に話さなかった。
しかし端正な顔と服のセンスが良い事と運動神経がとても良い事で女の子には結構持てていた。
控えめで目立ちたがらない所も好かれた。
将来はかっこいい服を作るか武器を作る仕事に就きたかった。
目立ちたがり出ないがセンスがいい。
人間関係は長い物に巻かれる。
サッカーが大得意だったがすごい選手になりたいとか中心に思い切り出る訳でなく、少しクールな顔でボールを淡々と蹴る。
しかし華麗なプレーに女の子からは歓声が上がった。
人間関係もリーダーのマークレイにうんともすんとも言わず後ろをついて行く感じだった。
しかしそんな時に亀裂が入ったのが十四歳の頃、マークレイ達が荒れ始めた頃だ。
シヴァは不意に睨みつけ言った。
「何であんたの言う事聞かなきゃなんないんだよ」
「……」
マークレイは無言で睨んだ。
シヴァはさらに続く。
「あんたの飼い犬じゃねえんだよ俺は」
「何?」
マークレイは十~十二歳の頃の皆に慕われた頃から変わり力で相手を言いなりにする性格になっていた。
そこへマリーディアが来た。
「やめて‼」
「うるせえ引っ込んでろ」
マリーディアも止められなかった。
そして二人は人のいない所へ行った。
殴り合いが始まった。
先に仕掛けたのはシヴァだった。
しかし強いのはマークレイの方だった。
最初こそいい勝負だったが途中からマークレイの一方的になった。
そしてマークレイはダウンしたシヴァの顔を掴んで行った。
「いいか、今度逆らったら殺すぞ」
圧倒的な力に恐怖を覚えたシヴァはその後マークレイの言う事を何でも聞くようになってしまった。
その後マークレイは改心し何度も謝った。
対等の友人でいようと言った。
しかしシヴァは表向き平静だったがマークレイを激しく恐れる精神疾患に既にかかっていたのだ。
マークレイはその事をごめんで済む事ではないとは今でも分かっている。
自分なんか死んだ方が良いと時々思う。
そしてシヴァは強くなる為剣の修行を始めたが、それは「マークレイの役に立つ為」と言う深層心理が働いていた。
ミッシェルは親がいるがそれを伏せて孤児院に送られた忍者の末裔だ。
預言者が「あの孤児院にはやがて勇者となる人達がいるから合流して共に戦う準備をしろ」
と言われた。
マークレイは忍者の為他の少年と全く比較にならない程強く誰も逆らえなくなった。
ただ威張ったりいじめはせずいつも飄々としている。
しかし一応リーダーとして孤児院に何かあれば止める。
最初来た時は変装の練習も兼ね老けた二十歳位の顔の皮覆面を着けていた。
やたら落ち着いていて大人ぶっていて同い年とは思えない為「おっさんくさい」と陰で言われた。
しかしそれは忍者修行中、背が低く細くて顔が童顔の美少年で声も高いから舐められたからであり、孤児院で舐められない様老けた顔に変装してわざと大人ぶった。
いつも自分が中心の様な態度で飄々として相手の心が分かる様に振舞うが意外と憎まれない。
本質的に仲間思いの人と言うイメージがあるのかも知れない。
そして「声が女みたいだ」と言われた時逆上し仮面をはぎ童顔美少年の姿で怒り「より凄い人」と言われるようになった。
ミッシェルはやたら外見にこだわる。
忍者なのに髪は金髪さらさら、肌が手入れが入っていて。スピードを殺さない為に重い鎧は付けず特殊コーティングの服や鎖帷子を着る。
忍者だからと子供の頃から忍んで生きた為まるで忍者と思えない派手で格好つけた髪とファッションをする。
しかし責任感と実力がある為かあまり嫌われない。
師匠たちに知れたら怒られるかも知れないが。
クラビがアンドレイと戦った時自分だけは残ってクラビと共に戦ったりしたのもリーダー、強者としての自覚があるからだろう。
そして歩き神殿は目の前に近づいた。




