幼馴染みの恋心
その夜。姫乃の携帯から電話からかかってきた。電源をつけ、誰からか確認すると沙緒理さんからだった。
私は慌てて電話の出るマークを押す。
「もしもし!どうかしましたか?」
「姫乃ちゃん?実はね...」
さすが歌手だけあって声がすごくきれい。耳が幸せだ。なにやら物音がする。車の音が聞こえるから移動中なのかな。
「私のライブのチケット姫乃ちゃんの分、無事に取れました!!!」
「おお!!」
私は嬉しくて少しだけ跳び跳ねてしまう。沙緒理さんのLIVE久しぶりだから楽しみだな。参戦服どうしようかな。ペンラは何色にしよう。私は頭の中で、もうLIVEいて盛り上がる想像をしてしまう。えへへと思わず笑い声をこぼしてしまう。
「嬉しそうな姫乃ちゃんを見ると私も嬉しくなるわ。で、日にちなんだけど来週の日曜日ね。それと、あと一つ言わないといけないことがあってね、まだ世間には公表してないんだけど、、実は私ね...。」
「どうかしましたか??」
「...やっぱり何でもないわ。仕事残ってるから切るわね。」
沙緒理さんはそれだけいい電話を切った。何か大事な話なような気がしたけどなんの話だったんだろう。
それはそうと、来週の日曜日か。楽しみだなぁ。
私は早速カレンダーに予定を追加しておいた。
朝私がいつものように家を出ると、泉谷が目の前に立っていた。
「い、泉谷?朝練は?」
この前のことがあったからなんか変な感じ。平常心平常心。
「今日は放課後練あるけど朝練はなし。」
いつの間にか私は何も言えなくなっていた。私の姿に泉谷は首をかしげる。
「お前何やってるんだ?つったってないでとっとと行くぞ。」
私は泉谷の後ろを黙ってついていく。
私たちは学校つくまで一言も話さなかった。
泉谷は下駄箱から上履きを出しながら私に話しかける。
「お前さ。」
周りに人が多いからだろう。少し声が大きいように感じた。下駄箱の並びは名前の順番であり、私と泉谷は近いので、割と近距離でも声は届く。
私は黙って彼の顔を見る。
「試合マジで見にこいよ。県大にかかってるから。あとお前に見ててほしい。」
「え?」
私は驚きが隠せない。
「日程は来週の日曜。午前からあるから。詳しいことはLINEで送っておく。」
私は返事の言葉を探している間に彼はもうどこかへいってしまった。
ら、来週の日曜日。その日は...。
「ひーめのちゃん!!おはよ!!」
同じクラスの女子たちが私の肩を思いっきり叩く。
「お、おはよう!」
私は慌てて挨拶をかわす。
「さっきの聞いちゃったよ?泉谷の試合見にいきなって。今年のサッカー部、結構強いらしいよ?」
「行く価値はあると思うなー。だって付き合ってるんでしょ?」
女子生徒たちはつくづくに私にそう言う。は、話聞いてたんだ。そしてなぜだろう。それに、やはり誤解は解けていないようだった。
「泉谷きっと姫乃ちゃん来てくれたら喜ぶと思うなぁ。」
見に行きたいけど、でも...。
彼女らはそのあとも教室につくまで泉谷のことをすごく誉めまくっていた。その度に私の方を見る。
うーん、応援か。どっちも行くっていう方法はないのかな...。
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「ふーっ。」
放課練を終えた泉谷大和は、靴を脱いだあとすぐにお風呂に入る。ちょうどいい温度のお湯が皮膚にあたって心地よい。疲れがゆっくりとれていく。
あいつは、試合来てくれるのだろうか。。少し考え込んでいる表情をしていた。あいつの事だから馬鹿みたいに『うん!』ってうなずくと思ったのに。...てか、何で俺があんなやつのことなんて...!!
俺は勢いよくお湯を顔にかける。というかなんか上の空だったな。。
もし今好きだってったらあいつはなんて言うのだろうか...。
というかあの事あいつにばれてないよな...。
なんとしてでもばれないようにしないといけない。だから俺は何度でも『嘘』をつき続ける。
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忘れないうちに沙緒理さんのライブの参戦服買いに行かないとなぁ~。
放課後。そう考えながら帰りの支度をする。携帯を取り出し、いつもいくショッピングモールが開いているかどうか確認する。
『日程は来週の日曜日。絶対来いよ。』
さっきの泉谷の言葉が頭をよぎる。
両方行けるわけないでしょ。もう。そりゃ私だっていきたいよ。二年生になって泉谷初めてレギュラー入りして、チームのためにめちゃくちゃ頑張ってたの何度も見たよ。だけど、予定が被ってたら行けないの。
私は制服のリボンをぎゅっと握りしめる。しょうがない。泉谷に言わないと。
椅子から勢いよく立ち上がり泉谷がいる集団へと行く。
私の視線に気づいたのか彼は私に近づいてきた。
「あの、泉谷。ごめん。試合なんだけど...」
「まてその先は予想できるからもう言わなくていい。」
え。
「すまん。公開告白みたいで迷惑かもしんねぇ。だけどこうなったの全部お前が鈍感すぎるせいだから。絶対いわないっていったけどもう我慢できねぇ。」
「お前が好きだ。姫乃。本当は試合終わってから言おうと思ったけど来れないなら今言う。」
その瞬間、クラス中の視線が一気に私たちになる。誰一人他の話をしようとしない。皆私達をただ見つめ続け口を開けている。
そんなこと言われて恥ずかしくない人いるわけ....ないでしょ。
私は自然と顔が赤くなる。静かな空気が終わったのか皆『わー!』『きゃー!』などの声が響き渡る。ほぼ全員がいってるので、思わず耳を塞いでしまいたくなるほどだ。
私は誰かの視線を感じると思い、その方向を見ると、なにやら一人の女子が寂しそうな目を向けているに気がついた。