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【完結】ヒメオモイ。  作者: けんたろー
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幼い頃の少年と、再会

今日は早く家につきそうだったので、隣の駅にある本屋によることにした。

私も高2だし、そろそろ志望校決めないとな。改札を通り、電車をまちながらそう考える。

私と同じ制服を着た人、違う高校の人、老人、そして小さい子供などさまざまな人が電車に乗っていた。隣の駅の名前がアナウンスされるとドアの前にたち、電車を降りる。すると何者かが私の肩をたたいた。

びっくりして後ろを振り返ると見たことがある顔だった。

「姫乃先輩....ですよね?」

朝露が滴る若葉のような緑髪。明るい太陽のような橙色の瞳。間違えない。私は思わず嬉しくなり目を輝かせる。

「ツッキーじゃん!久しぶり!」

ツッキーこと月城光輝は私が交通事故に遭い、入院していたときにたまたま隣にいた一つ年下の人だ。6年越しの再会。お互い高校生になったので声が低くなっている。私の頭一つ分背が小さかったツッキーももう私の身長を超えていた。

しかし、こんな偶然があるものか。隣の駅で再会するなんて。世界は狭いなと改めて感じさせる。

「お久しぶりです。ここの駅が先輩の最寄り駅なんですか?」

「ううん。私の最寄りは一個先の島瀬駅!今日は上月駅によって本屋寄ろうかなって。」

「じゃあ近いですね。実は僕の最寄り駅はここなんです。これから家に帰るところなのですが、本屋一緒についていっていいですか??」

「それはいいんだけどさ、敬語使わなくていいよ?あのときだってタメ口だったんだし。」

私たちは改札を通り、歩きながら話す。上月駅は割と田舎である。高齢化が進んでいるせいか老夫婦とよくすれちがう。比較的静かな駅だ。

私の言葉にツッキーは驚いた顔をしていた。

「そ、そんなことできるわけないじゃないですか!年上に敬語を使うのは当たり前ですよ!あの頃はそんなことも知らずに姫乃先輩に...。申し訳ないです。」

気持ちが沈んでいるように見える。気を悪くさせちゃったかな。私は満面の笑みで『そんなことないって!』といいながら本屋へと向かった。



本屋についた。さすが田舎だけあって人が少ない。店員の『いらっしゃいませ』という声だけが鳴り響く。

えぇっと参考書、参考書...。

「姫乃先輩!参考書はあっちですよ!」

ツッキーが行く方向へ私もついていくことにした。

歩いた先には本当にあった。私はずらっと並んでいる参考書をみながら話し出す。

「ツッキーここよく来てるの?」

参考書といってもすごくいろいろな種類がある。東大むけ、勉強法、苦手克服用、志望校の選び方、....

どれにしようと思いながら本をとっては戻すの繰り返しだ。うーんとなりながら腕を組む。

「まあまあ来ますね。先輩行きたい大学決まってるんですか?」

「それが決まってなくて。高2になって理系に進んだんだけどただ得意なだけで...」

「僕も決まってないですしそんなに焦らなくて大丈夫ですよ。僕は実家を継がないといけないんですけど...。」

そうだ。月城ってどこかで聞き覚えがあるなと思ったらあの大手会社の社長さんだった。代々続いているからツッキーもきっと社長になるだな。

「そうなんだ。なんだか進路が早く決まってて羨ましいな。」

「そ、そうですね...。」 

ツッキーは言葉を濁らせ難しい顔をしていた。

ああまた気を悪くさせちゃったかな。

買う本を選ぼうとすると不意にツッキーの手と触れた。その瞬間、お互いの手が無意識に離れ、不意に目と目が合う。

私は自然と笑みをこぼした。

「あ、ごめんツッキー。」

「ぼ、僕は全然大丈夫ですっ!そ、それよりこの本いかがですか?進路決まってない人でも読めるようなものだと思います!参考書ではないですけど」

ツッキーは一冊本をとり私に見せる。

『高校生必見!!色々な大学の学部の秘密』か。

「いいかも。ちょっと見せて。」

ツッキーが本を渡す。なかなか良さそうだ。

「決めた。これ買おう。」

私は財布を取り出しお会計へと行く。

ツッキーは私の行動を見てとても驚いていた。

「先輩!そんなすぐ決めちゃっていいんですか!?しかもこれ参考書じゃないですよ!」

私はなぜツッキーが慌てているのか全くわからない。

「大丈夫だよ。私これって決めたらもう迷わないタイプだから!」

私は彼にピースしお会計へ行った。ツッキーはなぜか苦笑いしているようだった。

さすが客がいないだけ並ばずにすぐに買えた。袋に入れてもらい彼と一緒に店を出る。

「とりあえずいい本が見つかって良かったな。」

私は独り言のように言葉をこぼす。

「そういえばあの頃からそうでしたよね。先輩。」

「あー!アイスのこと?」

私たちが入院しているときに私の母が私たちにアイスを差し入れしてくれたときだ。期間限定の味が出たらしく母は私たちにメニューを見せた。私はソーダ味が好きなので『トロピカルクリームソーダ味』に即決していた。ツッキーはというとすぐに決まらず「これもこれもいいなぁ」と呟いていた。即決した私の姿を見て目を思い切り真ん丸にしていたのを思い出す。

ふふっ。懐かしいな。

隣を見ると私と同じように彼も口角が上がっていた。

「懐かしいですね。もう6年もたつんですね。」

ツッキーは目線上げ、空を見つめていた。私もそれに倣って空を見上げた。

私が退院したときもこんな空だったな。

快晴なのか曇っているのかわからない微妙な天気。青空は見えないけど少しだけ太陽が差し込んでいる不思議な天気。

私の方がツッキーより先に退院した。まぁツッキーも数日後に退院したんだけど。

私が退院する姿を見て彼は目をうるうるしながら大声で泣き叫んでいたな。

『姫乃ちゃぁぁん!もう会えないなんてぼく、絶対嫌だからぁ!!』

その声があまりにも大きかったのか、看護師さんが止めにいっていたっけ。

こんなに私のことを想ってくれて私も涙を流したな。

「もう駅ですよ。先輩。まさか再会するなんて思いませんでした。会えて良かったです。よかったらLINE交換しませんか?」

「こちらこそ。LINE?全然いいよー!QRコード出すね。」

私は素早く携帯開きQRコードを出す。

LINE交換し、私たちは手を振り別れた。


私は電車に乗りながら今日のあったことを思い出す。

なんだか今日は色々あったな。不思議と私は電車の窓を眺めていた。


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家に帰った光輝は鞄をおろす。

「光輝おかえり。」

母親の声がリビングから聞こえる。僕は『ただいま。』と言いながら素早く自分の部屋へと行く。

自分のベッドに思い切りダイブする。先輩がいるわけじゃないのにまだ心臓がドキドキしている。本当に会えるとは思わなかった。だってずっと会いたかったから。

急に先輩が現れたから思わず声をかけちゃったよ。もっと髪とかセットすればよかった。

『ツッキーはいつもかわいいなぁ!』

6年前口癖のように言っていた先輩の言葉を思い出す。

僕、もうかわいいなんて言われたくないのに。確かに後輩だし、下に見られるのは当然かもしれないけどそれでも....僕は...。

机の上に飾ってある6年前の写真を見つめる。

僕の想いはずっと先輩だけなんだ。


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