「サナエちゃんは苦労人」その1
夜の九時、漸く仕事が終わりユカリはくたくたになってテーブルに突っ伏している。今日だけでも沢山の仕事を課せられ初めてなのに仕事量がゆいゆいとほほ変わらなかった。
「お疲れ様~ユカリちゃん大丈夫?」
死んだ魚のような目でゆいゆいを見るといつもの私服でトレーにはココアとクッキーが置いてあった。
「サナエちゃんもありがとうね♪」
サナエちゃんもいつの間にか手伝っていて私より頑張ってた気がするけどサナエちゃんはバイトしないのかな?
「ふん、仕方なくよ」
「そんなこと言って~♪サナエちゃんってお家は何処住んでる?」
「はぁ?何を急に……カイトと二人暮らしよ、家賃が安いボロアパートよ。近年は虫が結構出たり心霊現象があって大変なのよ……それなのに金も無いしどうしようか悩んでるのよ」
その言葉にゆいゆいはにやりと笑い甘い誘惑をする。サナエちゃんの腕に胸を挟んで頬をスリスリする。
「な、なによ!?ちょ!当たってるって!」
ゆいゆいの胸に赤面するサナエちゃんの耳元でゴニョゴニョと囁く。
「えっ?嘘……アンタ達シェアハウス経営してるの!?それにバイトをやらせて貰えるの!?」
「勿論、幻影守衛騎士団に入隊か契約しと貰わないとね♪」
「カイトもいいの?」
「うん!」
サナエはぶつぶつと何かを呟いている。
「それなら安定した生活が出来るかもせれない、ご飯や武器やら物を普通に買える。ケチって一週間野菜だらけの日々もなくなる!?それに私の復讐も手伝って貰えるなら一石二鳥ねここは手を打っておくべきなのでは?後はシェアハウスならきっと――― 」
ぶつぶつと何かを言い終えるとまるで嬉しそうに髪のこめかみをくるくる回す。
「家賃はどのくらい?部屋は?部屋にはどんな機能が?大きさは?」
サナエちゃんは何かの話について膝を進めるとゆいゆいにシェアハウスについて質問をする。その瞳には期待しているような瞳でユイに問う。
「甘えてくれたら喋ってあげよう―――― ふにゃあ!?」
ゆいゆいは上から話を持ち上げようとしたその時サナエちゃんは気持ち悪いぐらいに上目遣いで甘え言葉を掛けながらユイの手を両手で包む。
「お姉さん、私ねお金が無くていつもいつも不健康な生活を送ってるの、だから私、このままだと倒れちゃうかも。もし仲間にしてくれてついでに家賃も安くしてくれたら私嬉しいな♪」
こんな媚びたサナエちゃん初めて見た、ねっとりしてて可愛らしい表情にゆいゆいは胸を打たれて最初に会った時ぐらいペチャクチャ喋った。ゆいゆい、チョロいよ。
「んじゃあ今日からお姉さん達の家族ね♪可愛い子どもがまた増えた♪ぐへへ♪」
「ゆいゆい、騙されてるのに気付かないの?」
「騙されてもいいから可愛いから許しちゃう♪」
「馬鹿なのかな?」
サナエちゃんを見ると勝ち取ったようなガッツポーズ、子どもにチョロいゆいゆいのせいでノアちゃん達は絶句していた。
「ふん、プレアと言ったかしら?これからは――― 」
「サナエちゃんヨロ~☆あっサナちゃんって呼んでいい?」
「えっ?ええ……」
「よっし!サナちゃんってご飯作れる?」
「も、勿論よ?私の腕を舐めないで頂戴!」
あの子は確かプレアちゃんだっけ?スラッとしていてギャル風な女の子だ。
「そうなの!?んじゃあこれから毎日ご飯作って☆ユイはゆかりん贔屓だから手抜きが多くてさ♪あっ!サナちゃんテレビ好き?見たことある?」
「えっ?いえ……そんなに……お金無くて……」
「マジ!?なら絶対見た方が良いよ!お笑いとかグルメとかドラマとかさ!滅茶苦茶面白いよ!!後でおすすめ番組見ようよ!」
「あ、あのねアンタ……私の話を……」
「あっ!その前にさ!ファッションに興味ある!?アタシめっちゃ好きでさ~ゆかりんも好きだから意気投合しちゃって~」
サナエちゃんによる占領になることは恐らく難しいのかもしれない。家族には確か最強のお喋りのプレアちゃんがいるもん。
「ちょ、待ちなさいよ!何処へ行くのよ!?」
「服買いに行こ!後明日の夕飯とかさ!まだ閉店してないから行こう!」
「あとちょっとで閉まるのに!?」
「一時間もあれば余裕!レッツゴー♪」
制服からいつの間にかプレアちゃんは私服に着替えて猛ダッシュで走り去ってしまった。それがまさかの数分間の出来事だと言うのに。
「ま、待ちなさいよ~!まだ手続きとか!あ~んもう!こいつらにはまともな女は居ないの~!!?」
サナエちゃんの余裕がどんどん崩れ去っていく中私達は苦労人に挨拶を交わした。
「プレアちゃんに懐かれると大変だけど頑張れー (棒読み)」