「悪辣なる女性と約束」
悲鳴は私達の方まで響いた、聴いたことのない苦痛の声と一緒に混じる笑い声。その人は何かに取り憑かれたようにその腕をへし折り引き抜いた。断末魔の叫び声が聴こえようがその人にはきっと甘美の声にしか聴こえないのだろう。
それほど深い怨みを持った復讐なのだから。
「許して欲しい?許すわけないよね?人をモノ扱いにしか出来ないゴミが人権なんかあるわけないでしょ?アンタはここで私に遊ばれて殺されるの♪最高の喚き声を上げて逝きなさい!」
顔面を殴り骨を砕き身体の四肢を全部折って切り裂いてその度に回復させてまた繰り返す。どんだけ切り裂かれてもどんだけ臓物を掻き出されてもゆいゆいは快楽は止まらない。何度も何度も繰り返し私はおかしくなりそうだった。
そうして何十回もの処刑を繰り返して魔力が尽きたのか絶命した。その表情は歪み、死んだ後も蹴られて最後は全部バラバラになった。
「うんうん、スッキリした♪これでまた一歩……腐れ外道にもお金になるもんだから捨てたモノじゃないわね♪」
全身血塗れでゆいゆいに見えなかった。私は腰を抜かし震える。あれがゆいゆいの憎悪、ゆいゆいの復讐。残虐で残酷で異様な光景を目の当たりにした私は吐きそうになった。
「さぁ~てとそろそろ帰ろうか♪収穫は無かったけど殺せたしお姉さんは気分爽快♪」
あんなことがあったのにゆいゆいはまるで遊びに行ったような楽観的な笑顔で戻って来る。
「大丈夫?」
ゆいゆいが話しかけてきた、返さないと!
「う、うん……す、凄いね……そんなに殺さなくても……」
吐き気が込み上げて苦し紛れに笑った笑顔は下手くそでゆいゆいを不快にさせてしまった。
「ああでもしないとお姉さんの怒りは収まらなかったの、仕方ないでしょ?」
まるで死んで当然のような言葉に私は言葉を発そうとしたがそれは間違いだと気付いた。知りもしな奴が首を突っ込むなんて私なら鬱陶しく目障りだと思ってしまうからだ。そんな奴がああだこうだ言うにはお門違いな気がする。だから私は黙ってゆいゆいに従った。でもこれだけは聞いて欲しかった。
「ゆいゆい……復讐目標を間違ったら怒るからね……」
「大丈夫よ、お姉さんが断定しない限りはね」
初めて見るゆいゆいの冷ややかな瞳と殺伐とした雰囲気に回答に躊躇するが私はきっぱり告げた。
「もし間違っていたら止めていい?」
「それはどういうこと?」
ゆいゆいが重くのし掛かる初めて聞く重低音に殺気を感じた。
「ゆいゆいが、復讐者じゃない人を無意味に殺すなら……止めていい?」
私のその言葉にユイはけろっとした清々しい言葉で返した。
「ムカつい奴以外はね♪」
ゆいゆいはスッキリした表情でそう言って血塗れの麻袋を担いで私の前を通る。
「さ!今日はもう帰ろ♪お姉さん達には違うことがあるんだから!」
いつものゆいゆいに戻った。あのゆいゆいは一体……そんな事を考えながら最後はアリアンロッドさんに報告して私達は日常へと戻ることにした。道中目眩がしたが最後の力を振り絞って家に帰りベッドにインした。ゆいゆいの事を考えているといつの間にか瞼が閉じて睡魔に負けた。




