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第七十七話 尋問

 1人は怪我もさせずに尋問用に生かしていたのか。そこが少し私とは違うな。1人生かすのは同じだが、私だったら少しだけ手を出している。


「お話、しようか」


 腕と足を縛り、服、靴、腰に付けていたバックの中に武器を隠し持っていないか確認し、地面に押し倒した。やりすぎだなんてヘイリーに言われたが、万が一の為だと答えると、微妙な顔をして納得した。そして敵の目の前に、ヘイリーがしゃがみ込み、今まで見たことない笑顔で敵に問いかけている。アレシアやエルフの子供たちには見せられない顔だな。


「君たちあれでしょ。エルフの子供たちを襲ってた人達でしょ」


 なるほど。私が木の根っこを使って家を揺らした時に出て行って、戻ってきたらいなくなっていたから首枷をもとに辿ってきたというわけか。そして見つけたと思ったら私たちがいて、夜襲しようとしていたが返り討ちにあった、と。


「あの子たちをどうしようとしてたのかな?」


 ヘイリーに問われても敵は頑なに口を開こうとしない。そのやり方じゃ優しすぎるが、しばらくは任せてみるか。


「答えなさい」

「誰が答えるものか」


 殺しに手が止まることは無かったみたいだが、尋問のときは手を出さないか。脅迫でもして口を割らせたら早く終わるのだがな。


「どうしよう、ぜんぜん話してくれない」


 口が堅い相手に困ったヘイリーが私の方を向いた。いくらなんでも早過ぎないか? 私の方に振り向くのが。


「それはそうだろうな。君のやり方じゃ優しすぎる」

「ほかにやり方ある?」

「手を出すやつがいいか、それとも精神的に追い込むやつがいいか」

「それどっちもダメ」


 即否定された。どちらも有効なのだがな。となると誘導尋問か。得意ではないのだが、どちらも止められたとなるとこれしか方法はない。


「代わりにやろう」


 ヘイリーと場所を代わり、私が敵の目の前にしゃがみこむ。

 当たり障りのない質問からしていこうか。まずは大きいところから。怪しまれない質問となると


「お前達は盗賊という(くく)りで合っているか?」

「だったらなんだよ」

「いや、確認したかっただけだった」


 こいつらがどの括りになっているかだ。山賊、盗賊、見かけていないが海賊、あとは人に擬態したモンスター。最後のは匂いで嗅ぎ分けるしかないが、今私の目の前にいるやつは違う。


「私は盗賊というものを初めて見てな。稼ぎはいいのか?」


 当然相手は口を開かない。それはそうだ。稼ぎが良ければそれを競走相手になるかもしれない私に教えるわけはない。


「それは肯定としてもいいということかな? それなら、仕事を変えて盗賊になるのもいいかもしれない。常に金欠で困っていたんだ」


 何かヘイリーが言いかけたが、視線で遮る。邪魔をしないでくれと目を見つめて問いかけた。分かってくれればいいのだが。

 金に困っているのは確かだ。だから、あえて同情を入れて質問する。


「君たちの敵は人だけではないよな? もし、稼ぎを教えてくれるならモンスターとの対抗の仕方を教えてもいい。それで足りないなら人の急所でも教えるぞ」


 その言葉に盗賊の目が動揺して揺らいでいる。この世界で生きているなら少しでも情報は欲しいはず。あと少しでこちらに傾く。


「……その腕のバンクル、あんた冒険者だろ。辞めるってんなら教えてやってもいいぜ。それとそこの女をこちらに渡せ」

「それはありがたい。殺さなくていいのか?」

「ああ」


 盗賊側から話し始めた。これは気を許し始めてる証拠だ。後ろからヘイリーが驚愕している気配がしたうえに、微かに声も漏れていたな。そのまま静かにしといてくれよ。


「あんた真面目そうに見えて、えげつないこと考えるんだな」

「生きるためには必要なこともあるからな」


 何も間違ったことは言っていない。えげつないことを考えなければモンスター(あいつら)に勝てないからな。

 おっと、辞めると証明しなくては。バンクルを取って森の中に投げた。


「アーロ?!」

「なんだ」

「なんで投げたの?! もしかして本当に辞めるとかじゃないよね?」

「辞める気でいるが?」


 敵を欺くにはまず味方からというが、ヘイリーには言葉でしっかりと伝えた方が良かったか。何も話すなと。


「先程までお前ら……」


 そこで盗賊の言葉が途切れる。私がハンドガンを下から喉元に突きつけたからだ。ついでに胸ぐらも掴んだ。逃げられないようにな。


「もう少しで上手くいきそうだったんだがな。仕方ない。ここからは優しく問いかけするつもりは無い。嘘だと私が判断した場合、すぐ殺す」


 いいな? と確認する。銃が危険なものかどうか分かっていない状態で、いきなり喉元に突きつけられた相手は、目を泳がせながら頷いた。


「単刀直入に聞く。エルフの子供達を(さら)ってどうするつもりだ」

「……も、物好きな、奴に」

「売るのか。しかも加虐好きな奴に」


 エルフは長命だとは言っても、あの子たちの体は見た感じまだ子供だ。そんな子を売ろうとするとは。この世界のエルフは人よりも弱い立場にいるのか? 何故だ。小神族と呼ばれ人よりも強い魔力をもっている彼女らが弱い?


「……嘘はついていようがいまいが、殺すことに決めた」

「な! ま、まて……!」


 トリガーに指をかける私の手を止めようと伸ばしてきたが、引いたものはもう止めることは出来ない。

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