第七十四話 子供の何故
久しぶりの更新です!
お待たせしてすみませんでした!!!!
「そろそろ降りてくれないか?」
「やーだ」
着替えた後も濡れたまま小さくなったシルフが私の頭の上に乗り続け、焚火の準備をして待っているアレシア達のところに連れて行ってもらおうとしている。大精霊が重いというわけではないが、髪とはまた違うものがあるからすこしだけ違和感がある。
「それであの子たちはどうするの?」
「元のところに帰す」
「そっか」
水浴び前に捌いたブルの残りをシルフの代わりに持って、焚火しているアレシア達のところに行こうとすると、シルフが頭の上から問いかけてきた。2人の子供エルフを助けはしたが、正直、この世界でどこに住んでいるかは分からない。聞かないといけないが、私が相手しても答えてくれないだろう。となると頼みは私以外の者たちになる。
周りはもう暗くなっている。アレシア達がいる大体の方向は分かっているが、やはり夜だと森の景色は少しだけ違って見える。暗闇の中で微かに揺らめく焚火を目印に四人がいるところに戻るとしよう。その間にも周りに誰もいないことを警戒しながらな。
ああ、果物もとっておかなくては。このままでは私とシルフの分しかないと不満を言われてしまう。
戻る道中、シルフに食べられる果物を聞きながら帰ると、お腹が空きすぎたのかぐったりとしているヘイリーとアレシアがいた。時間をかけすぎたか。
「遅れてすまなかったな。何も問題はなかったか?」
取ってきた果物をアレシアに渡して、代わりに配ってくれているその間に捌いたブルの肉を銀串にさして焼こう。
しばしの休憩だ。
「何もなかったよー」
「それは何よりだ」
エルフの女の子は私が水浴びしている時にヘイリーたちと仲良くなったようだ。
ヘイリーに体を預け、アレシアとも楽しそうに会話したりと懐いている。
それはそれで構わない。話せる相手がいるのは、先程まで怖がっていた気を紛らわせるにはもってこいだから。
「君たちが住んでいる場所に戻さなくてはならない。私と話すのが嫌であれば、彼女たちにその場所を打ち明けてくれてもいい。ただ、その場所には私もついていく」
そういうと、エルフの少女は果物を食べているヘイリーの後ろに隠れて嫌そうな顔を私に向けてきた。
顔をこちらに向けてくれたのは良かったが、態度でまだ警戒しているのがよく分かる。
「君たちを助けた以上、無事送り届けるまで私たちは付き合わなければならない。例え君が私を嫌っていてもな。それだけは分かってもらいたい」
「……ま、またアイツらと同じことするんでしょ!」
「しない。と言っても信じられんだろうな」
エルフの女の子が威嚇している様子は、まるで子猫のようだと思ったのは内緒にしておこう。
少しずつ香ってくるブルの肉を焦がさないように焼く方向を変えながら話を続けようか。
「私のことを信じられなくて当然のことだ。いつ信じるかは君に任せる。ただ、一つだけ。君と一緒にいる少年の世話は私がする」
1つの肉が焼けた。「熱いから気をつけろよ」と言ってシルフに渡し、別の肉の焼き面を変える。
「ダメ!」
「それは何故?」
「ダメったらダメなの!」
エルフは長寿だが、少女の本当の年齢は分からない。目の前に少女を子供と仮定しておこう。
少女の口から聞こえてくる言葉は、子供特有の理由のない否定。こればっかしは少女から訳を聞くしかない。少しずつ理由のないものを紐解きながら。
「君はこの子を死なせたいのか?」
「違うもん!」
「そうだよな。なら私が近づいてはいけないのは何でだ?」
ちょうどいい色に焼けたブルの肉2つの内の1つを食べたそうにしていたシルフに渡し、もう一つを口にする。
自分の肉は少し焼きすぎたかもしれん。噛み切れない。
この話し方で大丈夫だっただろうかと思ったが、私に対して少しずつ警戒が溶けている。このまま言葉を選びながら聞いていこう。
「……人だから」
人だからだめ、か。それ言ったら少女を膝に乗せているヘイリーや楽しそうに会話していたアレシアも人なのだが。母性というもののお陰なのだろうか?
「私が人で男だからか?」
「……うん」
「そうか。では人であるが女性であるヘイリーとアレシアに少年は任せよう。私はあの者達が来ないよう周りを警戒しておく」
他にも理由があるのかと思ったが、最初治療しようとしていた時に自分が考えてたことと結局は同じだった。 攫ったやつらと同じく、私が人で男であるから駄目だと言われていた。
なら食事が終わったら少しだけ離れたほうがいいだろう。
そう思いつつ食べていると、エルフの少女は私とヘイリーを交互に見ながら驚いた顔をしていた。
「人だったの」
「そうだよ」
驚くエルフの少女の反応にゆったりとした返事をし、「アーロ、私にもそのお肉ちょうだい。なんかおいしそう」と私が食べているブルの肉をヘイリーは貰おうとしていた。果物だけじゃ足りなかったか。
「これは私のだ。もう1つが焼けるまで待て」




