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第六十八話 商人……?

 持ってきた猪に驚いている商人。火の近くで捌こうとしたのだが、遠くでやってくれと商人に言われた。何でも流れてくる血が苦手とか。変わってはいるが、人それぞれ嫌いな事はある。特に聞くこともない。その言葉通りに見えないところで捌くとしよう。ただ、周りが暗くなり始めているせいか手元が見えにくい。誰かに火を持ってもらわなければ。


「シルフ、この松明を持っててくれないか?」

「いいよー」


 先に焚き火を作ってくれていた所から少し拝借して、シルフに渡す。二つ返事で松明を持ち、私の後ろを着いてきた。


「ヘイリーとアレシア、護衛を頼む」

「……分かった」

「はい!」


 ヘイリーはまだ不貞腐れているのか。仕方ない。後でご機嫌取りしなくては。

 何だったら喜ぶだろうか? エールは……論外だな。酔っ払って、後処理を自分がしないといけなくなる。冒険? 今と変わらない。買い物? 女性が好む物は、服だな。

 だが、相手はヘイリーだぞ。それよりも冒険者用の物を買った方が。……わからん。直接聞くしかないか。


「何か考え事?」

「まぁな。後でヘイリーのご機嫌取りをしなくては、と思ってな」


 猪の正しい捌き方なんて知らんが、やることは皮を剥いで、血抜きと肝を取り除く。それだけは他のと変わらない。問題なのは、食べる所と肝の所に毒があるかどうかだ。


 そういえば、弾補充の後に生活用具を買いに行ったら銀細工の串を見つけて思わず買ってしまったが、これだと何度も使えるな。それに銀だったら毒に反応する。これで吐くことも苦しくなることもないから、いい買い物をした。

 ただ、肉を食べられたとしても後処理はどうするべきか。皮は売ればいいが、問題は内臓の処理だ。何日も所持するわけにもいかないしな。


 肉屋で肝を売って、皮は革細工の所に売ればいいか。


「出来たぞ」


 内臓は前シルフが渡してくれた葉を使う。これもすごく便利だ。あれから日が経っているにも関わらず、葉自体の匂いはまだ消えていない。むしろ強すぎて肉の匂いを覆い消してしまうほどだ。


「後は焼くだけだ」

「お願いしていいですか?」

「……私好みの硬さになるが、それでもいいなら」


 五人分のを私一人で焼くことになってしまったが、そこまで大変ではないだろう。一つ一つ焼くわけではないからな。


「アーロ、エールない?」

「ないぞ」


 暇になって酒を持っているか聞いてくるが、もし持ってきてたら大変なことになる。暴れたりはしないが、それに近い状態にな。それに酔っぱらって秘密にしていることを話されても困る。

 私の服の中や鞄の中を探るということを起こし、しばらくお互いの間で攻防が繰り広げられた。それを慌てながらも止めようとした商人が持っていたエールを貰って、一口毒見をしたが何もないことを確認したのち、ヘイリーに渡すと、ご機嫌になった彼女は一人でどんどん消費していった。それはもう豪快に。そして、分かり切っていたことだが毎回のように私に絡んでくる。


「食べないのか?」

「たべるよぉ」


 胡坐をかいている上に座ってきて、目を閉じながらゆっくりと肉を頬張っている。途中で船を漕いで止まったりしているな。これは、途中で食べるのをやめてしまうかもしれない。


「ぐっすりなようですね」

「日々、疲れてる証拠だろうな」


 私の腰に腕を回してぐっすりと眠っている。アレシアとシルフも一日中馬車に乗っていたせいか疲れて寝てしまった。自分も先程から少しだけ睡魔に襲われそうになっているが、護衛でここに来ているのに全員が寝るわけにはいかない。交代でしようにも三人ともぐっすりだしな。


「眠れそうにないので少しだけ歩いて来ます」

「なるべく遠いところに行かないでくれると助かる」

「ええ」


 立ち上がり、松明を持って暗闇の中へ消えていく。


 離れたか。

 先程のエールに味を薄くして気付かれないように遅効性の睡眠薬でも入れていたのだろう。私は少量しか飲んでいないが、ヘイリーのように大量に飲んでいたからより分かりやすい効果が出た。おそらくだが、全員が眠っている時に誰かを呼ぼうとしていたが、私が飲んでも眠らないところを見て、少し焦った。だから口実でこの場を離れて、誰かの所へ行った可能性もある。


 ここで確認できることは一つ。動いている火が止まったら疑え。それが誰かと会話している可能性があるなら尚更だ。


「止まったな」


 今ついているライフルのアイアンサイトで見るには夜は適さないが、商人が持っている火を中心に見ていればいい。完全に分からずとも、少しだけ顔が見えればそれでいい。しばらく待っていると人影が見えてくるが、相手は明かりを持っていない。揺らめく火で人型だと何とか認識できるが、性別までは分からん。あれらが仲間であるならば、用心するべきだな。後々行う偵察の時に探るか。


 用事が終わったようでこちらに戻ってくる。スナイパーライフルを袋に直して平常心だ。


「眠れそうか?」

「はい。では、私は休ませてもらいますね」

「ああ」


 布を地面に引いて、寝始めた。さて、点検でもしながら作戦を考えるとするか。

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