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第六十一話 非難

「ちなみに君も出来るよ」

「は……?」


 今、軽口を叩くように驚愕することを口にしたが、聞き違いか? 私にも出来る?


「だって僕が直接加護を与えたんだもん」

「いやいや、待ってくれ。今とんでもないことを口にしたのわかっているのか?」

「そう?」


 あっけらかんとした顔で首を傾げているが、そんなものを与えられていたとは思いもしない。

 今まで以上に視界が良くなるとか、今修行中の風を読むということぐらいにしか思っていなかった。

 唖然としている私の耳に歓声が上がった。どうやら誰かがメデューサを倒したようだ。


「これは、簡単に人に与えてはならない代物だ」

「じゃあ返す?」

「……君は精霊の姿をした悪魔そのものだな、シルフ」


 無意識だったとはいえ、風を読んだ経験を一度でもしてしまえば、手放せなくなることを知って掛けてきている。


「私が死んだ後、魂を取るとか」

「するわけないでしょ。僕悪魔じゃないもん」


 そう思わせてしまうほど、シルフの言葉に恐怖を覚えてしまった。

 固まっている私の目の前で浮きながら腰に手を置き、頬を膨らませている。

 四大精霊の一つが別の存在に見えて仕方がない。


「とりあえず、城門前にいこ」

「……そうだな」


 セーフティをかけて背負うと、シルフが私の頭の上に移動した。短い髪を両手で掴んでいる。自分の頭の天辺は見えないが、姿はまだ小さいままだと思う。


「羽があるのだから引っ付かなくてもいいのでは?」

「これが楽なの」

「そうか」


 これ以上何も言わないでおこう。髪を引きちぎられそうな気がする。

 


 いくら安い宿だとしても二階建てはなかなかの高さだ。確か6メートルほどあるんだったか? 一歩間違えれば怪我しかねないが、知らんな。無謀だなんだと勝手に思うがいい。


「わぁ!」

「足首に痛みはなし。行くか」

「無茶するね」


 飛び降りたことへの感想なのだろうが、私はたいして無茶だとは思っていない。むしろこれが普通だとすら思っている。

 

 城門まで500メートル。上から見る距離と、城門まで走っていく距離は同じなはずなのに、下の方が長く感じる。視界が狭いのも関係しているのかもしれないな。なんて思っていると、目的の場所についた。そこにはアレシアと称えられているヘイリーがいた。


「アーロさん」

「起きたようだな」

「ぐっすり眠ってしまいました……」

「今度気を付ければいいだけだ」


 近づいてきたアレシアが俯きながら呟いた。昨晩飲んだ酒が初めてだったのかは分からないが、これからは調整するべきだな。


「てめぇ、今更何のようだよ」

「君は?」


 頭を撫でていると、どこからか石が投げられてきた。当たることはなかったが、ヘイリーの周りにいた中のガタイのいい一人が近づいてくる。難癖付けれらたか。


「俺のことはどうでもいいだろ! 魔物が襲撃してきてんのに後から出てきやがって」


 その声に同調するかのように他の冒険者たちから声が上がる。言い分はもっともだな。


「では、確認させてもらおう。確かに私は後から来たが、そういう君は戦闘に参加したのか?」

「お、俺は」

「したのなら私を非難するといい。その資格が君にはある。そうでないなら黙っていろ」


 表立って戦って、評価されることだけが冒険者の役目ではない。陰で援護する者も役目がある。

 私はその陰の部分。そこが見えなかったから非難していいとは限らない。


 ただ、裏の役目は表には出にくい。そこは私も理解している。 

 だからこそ、理解ある者とパーティーを組まなければならない。


「アーロでしょ。遠くから援助してくれたの。めちゃくちゃ戦いやすかった」

「それは何よりだ」


 人の輪からなんとか抜け出したヘイリーが近づいてくる。その後ろから侮蔑な目で見てくる。


「そういうてめぇは戦ったのかよ」

「ああ」


 喧嘩を吹っかけてきた者とは別の冒険者が威圧しながら語りかけてくる。

 証拠ならば目の前にある。正直近づきたくないのだが、メデューサが持っているのだから仕方あるまい。

 それに、証拠とは別に違いを調べなきゃいけないのも一つあるんだがな。


「あの目に開いた穴。あれが証拠だ」


 直接持つようなことはしない。目を潰したとしても、蛇がまだ生きている可能性もあるからな。

 ある一定の距離まで近づくが。


「それはヘイリーさんがやってくれたんだろ」

「では、本人に聞くとしよう」

「あたしは倒しただけだよ。来た時には既に目を塞いでたし」


 そう投げかけ、ヘイリーが答えると全員が黙った。

 後から来たからといって嘘をついていいと思われていることが心外だ。


「他に言いたいことがある者は?」


 周りに問いかけ、何かを言いたそうにしている者達を見回した。


「じゃあどうやって倒したんだよ」

「これだよ」


 背負っているスナイパーライフルを取り出し、見せる。この形ではなくても似たような物を、ドヴェルグの親父さんがやっている鍛冶屋で何度も見ているだろう。


「な、なんだよそれ」

「弓と同じく遠くにいる対象に当てる殺傷力の高い武器、だな。簡潔にまとめると。ただ、音が五月蝿い上に、撃った後に光るから使いづらいのが難点だが」


 対象にバレない為に音を軽減するのが普通なのだが、忘れていたことは言わないでくれ。

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