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第五話 寝ぐせ

 軽い運動といったが、気づいたら朝になっていた。だからといって疲れたわけではないから特に問題はない。


 さて、朝食の準備をしよう。彼女には昨日と同じものを食べてもらう。そこまで多く作りすぎたわけではないから、朝食で食べきるだろう。昨日の様子を見ている限り、小食ではなさそうだ。


「ぉはよぅございます……」

「……寝癖がすごいな」


 木が燃える音で目が覚めたのか、あくびをしながらゆっくりと起き上がってくる。起き上がるのはいいが、どんな寝方をしたら実験で失敗した博士の髪のような頭になるのか、気になる。

 見た限りでは普通に寝ていたはずだが。


「これ、いつもなんです」

「大変だな」


 毎日起きては寝ぐせがすごいことになると、整えるのが大変そうだ。その分短髪で男である私は、少し整えるだけでいい。


「昨日と同じだが、しっかりと食べろ」

「ありがとうございます」


 冷え切ったキノコスープを再度温め、昨日と同じお椀に入れて渡す。まだ寒いのか、毛布をかぶりながら受け取り、ゆっくりと食べ始めた。


「アーロさんも昨日と同じお肉ですか?」


 昨晩と同じように、木の棒で突き刺し、肉を焼く。今日の焼き加減はウェルダンだ。噛み応えがある方が満腹感でいっぱいになるし、この後、しっかりと動くからな。


「ああ。その為に狩ったのだからな」

「飽きとか来ないんです?」

「来ないな」


 焦がさないようにしなければ。いつもしている焼き方と違って、たまにしかしない焼き方は見分けが難しくなる。


「あの、アーロさん。これに何か足したりとかしました?」

「いや、何もしていない」


 やはり感覚でするべきではないな。焦げの一歩手前のようになってしまった。肉を目の前に悩んでいると、キノコスープを不思議そうに見ながら首をかしげているアレシアが質問してきた。

 足したかと聞いたが、特に何かを入れてはいない。昨日と同じ物だ。


「何か、すごく鼻に痛みが」

「それはこいつの匂いだな。君が昨日倒れた原因のやつだ」


 トキシン・ブルの皮からまだ匂いが出ている。慣れたはずの私自身も、皮を動かしたことでまた鼻が痛くなってくる。勢いよく動かさなければ良かった。


「うっ……」


 同じく匂いを嗅いでしまったのか気絶した。この匂いは仕方ないが、いちいち気絶していたら後々大変なことになるぞ。

 彼女が勢いよく後ろに倒れたことで、お椀がどこかに飛んで行く。あれ、1つしかないのだが。仕方ない。探しに行くか。


「おい、起きろ。起きて、ギルドに戻る準備をするんだ」


 ようやく見つけ、戻ってきたがまだ気絶していた。起きてくれないと私もここから動けないのだが、さっきから声をかけているにも関わらず、まったく起き上がらないのはどういうことだ。頬を叩いても反応がない。


「っ! いきなり起き上がるな」


 意識が戻ったのはいいが、いきなり起き上がるか?

 脳が揺れる。何故、ぶつけた本人が痛がらなくて、ぶつけられた私が痛くならなければならないんだ。


「ご、ごめんなさい! 私昔から石頭で」

「それをどこかに活かせ……。少なくとも、人の頭に当てるべきではない」


 そうとう硬かったのか、まだ脳が揺れている。揺れが止まるまではしばらくここに居よう。この状態で動いてもいいことなどない。

 どちらにしても足止めを食らうことになってしまった。


「本当にごめんなさい」

「それ以上地面に頭突きをするな」


 何度も頭を当てているせいか、同じ場所が(へこ)んでいる。下が土とはいえ、こう簡単に凹むものではないはずなのだが。こんなものが頭にぶつかったと考えると鳥肌が立つ。


「とにかく、日が落ちないうちに戻れ。この道をまっすぐ行けば戻れる。いいか、まっすぐだぞ。なにか気になるものがあってもその方へ行くんじゃないぞ」

「は、はい! 横道に逸れたりせず、まっすぐですね」


 あれだけ厳重に言ったのだ。もう迷うことはないだろう。どれだけ歩くのが遅かろうが、夕方ごろには着くはずだ。

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