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第五十三話 VS.???

「ふむ」


 だいぶ見えるようになってきた。このままじっとしていれば元に戻るな。

 それにしても衛兵共はいったい何に怯え、恐れているんだ? 私の後ろには何もいない。

 気配はここにいる者共だけだ。


「悪魔と戦ったものに対しての礼儀は、敵意を向けることなのか?」


 震えながら自分に剣を向けている。まるで私のことを化け物だ、と言っているような目で見てくる。

 手や足、自分の顔を触ってみたがどこも変わっていないというのに。

 槍を持った女の名は何ていうんだったか? もう一つは四大精霊……嗚呼、確かシルフだったか。

 口が動いているが、聞き取れん。まぁいい。そいつらは怯えているだけだ。放っておいても問題は無い。


「そうか。それが普通だというのならば、それにお答えしなくてはな」


 ここの常識を、私はちゃんと把握していない。

 ただ、恩は仇で返してはならない。それをしっかりと返すのが礼儀だ。それはこちらでも同じだろう。


 スナイパーライフルのセーフティを外し、後は隠れながら照準を定めて撃つのみ。


「私を見つけて対処しろ。それがお前たちが生き残る唯一の術だ」


 周りにあるのは洞窟と雑木林。呆然と立っている衛兵共に背を向け、林の中に入る。

 殺すのなら今だぞ。未知なるものに対処するには、立ち止まって考えるより戦いながら考えろ。

 そうすることでいい案が思いつくこともある。


「き、消えた……」


 だが、これを言葉に出して教えるつもりはない。戦場はそこまで優しいものではないからな。


 一人くらいいるだろうか。#拮抗__きっこう__#などしなくても、林の中で戦える者が。

 気配を消し、少し離れたところから目を凝らして様子を見るとしよう。


「探知魔法が使えるものは使え!」

「い、いません!」

「そんなハズはない!」


 魔法か。便利そうだなと思う。

 私の世界にもあれば楽しそうだが、代わりに化学というものが発展してしまったせいで、そういうものを見たことがない。魔物の上位種なら使っているかもな。戻った時に見てみるか。


 剣を向けてきた中の一人くらいは、経験者がいるのかとも思ったが、どうやら居なかったようだ。

 大人数で移動したり、単独で動いたりしている。

 視界が悪い所でそんな極端な探し方では見つかるものも見つからない。


 つまり、勝手に私が期待していただけとなる。

 つまらんな。


「所詮は街の守り手か」


 木と一体化とまでいかないが、木の枝の上に立ち、紛れるように存在をもっと薄くする。


 さぁ、余興として楽しもうか。一方的な虐殺とならないようにしてくれ。



 どう動く?

 魔法が使えるものは探知で私をどう探す?

 使えない者は? 目を使って探すしかないよな。

 ただ、本気で隠れている者を探すのは至難の業だ。


 広い雑木林の中で、1人はぐれていると、その喉を噛みつきにいく獣が現れるぞ。


「風速2ノット。風は木により変化あり」


 サプレッサーはあえて付けない。

 音を小さくしてしまっては面白くないだろう? だからそれを頼りに探すといい。


 トリガーに指を掛け、躊躇なく引く。


「1人ダウン」


 金属のヘルメットだろうと関係ない。目の隙間を狙えばいい。

 膝が崩れ落ち、ゆっくりと土の上に倒れていく。


「残りはどこだ?」


 次の獲物を見つけに行こう。

 木から木へと移動する。なるべく音を立てないように。


 見つけたが、発砲音を聞いたのか震えながらその場で固まっている。あの集団は後にしよう。

 見つかった時対処出来ん。


 木々を渡り、1人、また1人と壊していく。

 しかし、妙だ。最初会った時、衛兵共の数はそこまで多くなかった。だが、今はそれ以上の数を倒している。

 もちろん集団の奴らを抜いて。


 幻覚? だとしても、何か要因があるはずだ。嗅覚であったり、触覚であったり。

 匂いはなし。風も……先程よりか強くなっている。

 だとするとそれを作っているのは……。


「お前か、シルフ」

「そうだよ。ずっと止めなよって僕が言ってたのに聞かないから。邪魔してたの」


 槍の女は知らん。そいつはどうでもいい。

 目の前の妖精に怒りが湧いてくる。何故狩りの邪魔をする。


「……死にたいのか」

「君じゃ僕は殺せない。それに気づいてる? ここの木々は君に協力的じゃないこと」


 何故だ。こいつらはただの木だ。意思がある訳じゃない。使う権利は俺にある。

 それなのに何故……。


「君は木の王様でもなんでもないよ。ただの人と木の間の人間。権利なんてものは一切ない」


 木の枝が迫ってくる。切って逃げようにも固くてどうしようも出来ない。

 まるで切られたくないといわんばかりに。

 四肢の動きが奪われ、銃も、ナイフも全て取られていく……。


 返せ……!

 それは俺のだ! それが無ければ俺は!


「しばらく反省してね。そして、自分の立場を理解した方がいいよ」


 首に巻き付いた枝で、息が出来ない。

 意識が遠のいていく……。その時に見たのは悲しそうな女の顔。

 なんだ? なんて言っているんだ……????。

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