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第四十九話 逆の立場にもなる

モンスターなどの頂点に立つと云われている存在。それが



魔王。



 まだ確証を得たわけではない。ただ、そんな気がしているだけだ。

 そして用が済んだのか、あれほど出していた威圧感を無くすと同時に、時も動き始めた。


「大丈夫か? じっと固まっていたが」

「心配ない」


 何故、奴は私を育てるような事をする。

 戦うのを楽しみにしているとも言ったが、他にも理由がありそうな気がしてならない。


 まぁ、いい。そのわけは後で考えよう。

 今は、目の前のことに集中しなくては。


「どう対処すればいい。ああなった原因は私にある。元仲間として、その責任を負わなくてはならない」

「モンスター化した人は初めて見る。我々もどうするべきか迷っているのだ」


 もし、何かの声を聞いて変化してしまったのならば、呪いならば解呪。もしくは、私が知らない何かで解決するのか。


「どうするべきだ、シルフ」

「ああなっちゃったら、死なせることしか出来ないよ。下っ端って扱いだけど、傘下に入っちゃったから」


 無慈悲なものだな。人として産まれ、怪物となって死ぬしかないなんて。

 いくら、嫌いだとは言っても、最後は人として死なせてあげたいとすら思えてくる。


「あれは呪いなのか? もしそれなら解呪は出来ないのか?」

「うーん、それとはまた違うかな。どちらかというと異形化かな。解くことは出来ないことはないけど、あれと同等か、それ以上の魔力を持っている人が必要かな」


 ここにいる魔法使い達の実力はどれくらいだ? 奴と同じならば、抑えることが出来るかもしれない。

 だが、もし、出来なかったら? 覚悟を決めて、私がやるしかないのか?


「ここにはあれと同等の力を持った人はいないから、解呪は無理だね。それに、君と戦いたいみたいだよ」


 ハッキリと無理だと言われてしまった。

 どうやら、覚悟を決めるしかないようだ。


 シルフが指を差し、そこから私の方へ手を向けてくる。視線を表しているのか? あいつの。

 いまだに何かを呟いている。先程から感じる違和感。それが何なのかはわからない。

 ただ、あれこれ考えても今はどうにもならない。

 

「確認したいのだが、私が始末してもいいのだな?」

「ああ、頼む。そこのお嬢さんが言うように、我々では太刀打ち出来ない」

「……分かった」




 大事になる前に終わらせよう。




「……リカロを討伐する」

「死なないでね」


 近衛兵たちに打つ手なし。

 ならば仕方ない。

 恨みを私に向けているのならば、それを自らの手で解こう。


「……」


 迷いは不要。やるなら徹底的にだ。


 私が来ていることはすでにばれているが、そのまま突っ込む気はない。

 ここからあいつまでの距離は、約5メートルか。狙撃するにしては短すぎる。


 それでもやらないよりはましだろう。


 人質を取っているということは、そこから動く気はないと考えよう。

 どうにか誘き出して、人がいない場所で殺るしかない。


 今のあいつがどう変化しているのかは分からない。下手に手を出そうものなら、アレシアに傷が付く。


「……困ったものだな」


 ここまで困った状況は初めてだな。それでも、奴から彼女を離さなくては。

 少しだけ距離を取ろう。そして、そこから撃つ。


「あ……」

「そこカら、うごクな」


 その場から移動しようとしたことで、彼女の首に手をかけているリカロが、少しだけ力を込めた。

 今まで戦って来たやつらよりかは、あいつから脅威を感じない。

 だが、人質を取られていることで、自身の動きが制限されてしまう。


「おリてコイ、おクびょウもの」

「まぁ、待て。対策を考えているところだ」


 言っていることが無茶苦茶だな。

 おそらく、それで私を混乱させようとしているのだろう。


 先にアレシアの救出が先だな。奴の視界を奪うにはスモークが1番だ。今、持っているだろうか? 

 腰にあるポーチに手を伸ばし、確認する。よかった、2つある。

 奴の目が良くなりすぎてなければいいが。


「うごクなといってイるだろう!!」

「……そう、急かすな」


 なんだ、今のは。口から光線を吐き出したぞ……。

 避けるのが遅ければ、後ろにある岩のように私の首が切断されていたところだった。

 

 奴の我慢もそろそろ限界のようだ。その上私が少し動いただけであの怒り方だ。

 これ以上ここで、いろいろと考えていない方がいいかもな。


 動くなと言っているのに、降りてこいと言っている意味。

 それは、さんざん私に馬鹿にされた復讐なのだろうな。

 言葉で私を混乱させ、その上人質を取っていることで、立場が優位になったと思っている。

 

 実際、今は奴の方が力も上だ。

 だが、それがどうした? そんなもの今まで何度でも相手してきた。


 だがまぁ、奴が降りてこいというのなら、しばらくはそれに従ってみるか。

 何が起きるかは分からんが、警戒と逃げる準備だけはしておいた方がいいだろう。


「ほら、降りたぞ」

「ばかめ」

「きゃあああ!」

「アーロ!!」


 何が起きたのかはわからないが、嘲笑と悲鳴が聞こえ、一瞬で視界が黒くなった。

 これは周りが暗いのか? それとも私の目が見えなくなってしまったのか? 

 分からないが、注意だけはしておかなくては。

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