第四十七話 試験結果と加護
あれから引き渡し場所に行き、盗賊たちが連れていかれるのを確認した後、街へと戻った。
監督官に渡されていた不思議な縄は余ってしまったが、少し欲しい。元の世界に持っていけるだろうか?
他の仲間のことだが、頭領が気絶していて聞くことが出来なかった。
部下達に無理矢理吐かせるとあれだけだと話した。
どうやら本当に終わりのようだ。
今回はいろいろと反省点が多かった。
一番は聞きそびれだ。
今回は彼女が引渡し場所を知っていたから良かったものの、知らなかったらあの場所で途方に暮れていたと思う。
次回もそうならないようにしっかりと胸に刻まなくては。
「やっと終わったねー」
「ああ。いろいろと遭ったからな」
ギルドの中に入った途端、他の冒険者達がざわざわと騒ぎ始めた。
それはそうだろうな。
オリハルコンクラスの冒険者がいるんだ。騒がない方がおかしい。
「アーロさん、戻ってきていたんですね」
「今しがたな」
受付に近づくと、カリナが顔を輝かせながら、私に労いの言葉を言った。
「では、あの場所で待ってます!」
そういうと一枚の紙を引き出しから取り出し、裏へと向かっていく。
その姿を追いかけるように、ヘイリーも後をついていく。
なんでも監督官に先に伝えておくとのことだった。
「アーロ!」
疲れを取ろうと、首を軽く動かしながら座る場所へ行こうとすると、シルフが走ってきた。
昼時で人が多いにもかかわらず、ぶつかりもせず近づいてくる。
アレシアがいないが、どこに? いつもなら私の姿を見た途端、走ってくるのだが。
「アレシアが連れてかれた!」
「……誰に」
「わかんない」
私がいない時を狙ったということは、恨みがあるのか、それともアレシアに関係している奴らの仕業か。
調べないと分からんな。
「いつ?」
「今日、僕と一緒に寝てる時にだと思う」
「そうか」
次から次へと問題が降ってくる。
人生において、問題は常にあるものだが、これは悪いものだ。
私への負のストレスとなっている。早急に解決せねばならない。
「……アーロ?」
「なんだ」
恐る恐るといった声を出しながら、私の顔を覗いている。
今どんな顔をしているかなんて興味無い。
もし、許可が得られるならば、脅迫する。
場合によって抹殺する。
「ごめんね。僕がちゃんとしてたらこんなことには」
俯き、涙声になっている。
怒りで狂いそうになっているのを、感じたのかもしれない。
別に、シルフに怒っている訳ではないのだが、申し訳ないことをした。
「謝る必要はない。それよりも痕跡を見つけられるか?」
「風がまだそこにあるなら」
「それを探しておいてくれ。これから受付嬢達と話をしなくては」
いつまで経っても来ない私を、カリナが呼びに来ていた。
怯えていなかったから、感じ取れたのはシルフだけだったのかもしれない。
「すまない。今行く」
もしかしたらヘイリーは感じ取ってしまうかもしれない。
深呼吸をして、落ち着こう。
「随分と早く終わって何よりです」
「彼女のおかげでもある」
「それは何より」
先程から紙ばかりを見て、一度も目を合わせていない監督官に苛立ちを覚えている自分がいる。
わざとなのか? そうやって怒りを覚えさせるようなことをわざとして、落とすようなことを?
わざわざそんな面倒なことをする理由はなんだ。
「苛立っているようですね」
「……すまない。顔に出ていたか?」
「ええ」
「なるべく出さないように気をつけていたのだが」
今は関係ないと言われてしまえば、その通りだ。この審査と仲間の危機は関係ない事。
それを八つ当たりという形で発散してはならない。
「問題なく捕まえたようですね。これにて終了です。新しいバンクルは三日後にお渡しします」
「分かった。感謝する」
新しいものがもらえるということは、合格と考えていいのだろうか?
いや、それよりも今は、アレシアを連れ去った奴が誰か証拠を見つけなくては。
「アーロ!」
「見つけたか?」
「うん。ここから西の方に向かってる」
「なら、早めに行こう」
バンクルをもらうまで後三日。早めに見つけ、戻ってくれば問題ない。
受付嬢にアレシアを探しに行くことを伝え、ギルドを出た。その時に心配されたが、大丈夫だと伝えた。
鍛冶屋に行き、何があっても大丈夫なように弾を多めに買う。
親父さんが不思議がっていたが、そこは詮索しないでくれと伝えたら、黙っていてくれた。
「アーロ。これ、授けるよ」
「それは、前言ってた加護か?」
「うん。ちょっとだけじっとしててね」
何か聞き取れない言葉を呟くと、一瞬だけ風で舞い上がったように、体が軽くなったような気がした。
体に変化はない。本当に授けれられたのか?
「戦闘になったら分かるよ」
そういってクスクスと笑い、小さくなった。
「さぁ、行こう。アレシアを探しにね」




