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第十九話 心臓にあるもの

「それで、ここにいるわけはなんだ?」

「君に授けたいものがあってね。便利になるよ」


 生活が楽になる? それとも、戦闘か? 何がとは詳しく言わなかった。

 だが、どうも、どこかの悪徳業者の話にしか聞こえんのは気のせいだろうか。

 そんな上手い話があるだろうか。


 それに、この精霊。

 何を思っていっているのかが分かりづらい。


「……あんたとは今回初めて会うが、それでも授けると? その見返りはなんだ」

「とんでもない。そんなのないよ。あ、でも、そうだねー。君の性格上、見返りをしなければと思っていそうだし、もしもっていうなら君の冒険にしばし同行させて欲しい、ってとこかな」


 同行するのは構わないのだが、それは見返りではない気がする。

 だが、本人が言っているのだから、これ以上は言えんな。


 それにしても、昼を過ぎたあたりから人が多くなってきたな。

 それに合わせ、目の前の精霊がフードをかぶった。


 その途端、存在感が薄くなり、意識しなければどこにいるか見失ってしまうほどに。


「いやぁ、ごめんね。あのままにしていると大変なことになるから」

「そこは気にしていないが」


 私が集中し続けてやっと分かるということは、他の者はもっと分からないということか。

 その最たる例がアレシアだ。

 目の前にいた精霊が顔を隠した後、何かを探しているかのように周りを見始めた。


「あの、アーロさん。先程の方は」

「ずっと同じ場所にいる」

「で、でも、姿見えないですよ」


 精霊がいる方を私が指差しても見つけらない。

 そうとうな技術なのか。それとも精霊自体の力なのか。


「うん、大丈夫みたい」

「あ!」


 精霊が声を発したことでようやく見つけることが出来たのか、アレシアはその方向を見て嬉しそうに笑った。

 だが、すぐ不安そうな顔になる。


 意識すればようやく分かり、次の瞬間には分からなくなる、か。

 だが、それだと私にも同じことが言える。

 先程アレシアの方へと意識を向けたにも関わらず、精霊の存在を認識していた。


 目の前の人物が言っていた『私と近い存在』。

 もしや、自分の中にあるものを指しているのか?


「また見えなくなってしまいました……」

「少しずつ意識してみてはどうだ? もちろん疲れない程度にだが」

「やってみます!」


 アレシアは、私と違って体を使いながら感情を表に出してくれるから、本当に分かりやすい。

 だが、それは同時に危険でもある。

 ほどほどにしなければな。


「むむむ……」

「見えたか?」

「ぼんやりとですけど」


 目をしぼめて見ていたが、よくわからないのか首を傾げていた。

 それとは反対に私は先程よりも身近に感じている。

 意識したからなのか、相手の存在感が増している。


「これで分かるかい?」

「あ、はい! 見えました!」


 わざわざ見えるようにしてくれたというのか。優しいな。

 人が多くなった時、フードを被ったから、警戒心を持っていないというわけではないな。

 アレシアに対しては信じ切っているというか、なんというか。


「それで、どうするの? 授けもの、貰う?」

「いや、今はいい。しばらく同行するのを許可する。その時に判断させてもらいたい」

「うん、わかった。君がそれでいいなら」


 もう一人仲間が増えた。四大精霊が1つ、シルフを仲間に出来たのはよかったと思う。


 今思い出したのだが、シルフは移り気が多いと聞く。

 飽きられた場合、授けものを貰った後はどうなるのか。そのままなのか? それとも……。

 よく分からんな。


 隣では、認識できたのがよほど嬉しかったのか先程から頬が緩んでいる。


「アレシアもいいか?」

「はい! 私もこの方と一緒に冒険したいですし」

「なら決まりだな。それと、姿はそのままにするのか?」


 存在を認識させづらくしているとはいえ、何かの拍子にフードが外れないとも言えない。


「小さくなるよ。その方が君たちも楽でしょ?」

「私はどちらでも構わない。小さくなるのが楽だというのならそれでもいい」

「私も同じく」

「なら、少し離れたところでするね。ここだと目立ってしまうから」

「ああ」


 錬金術師パラケルススの提唱では、シルフは人間の目には見えない存在と言われている。

 他にも、力が強いと言われているが、目の前のは本当に強いのか。


 戦えないなんてことはないと信じたい。

 なにせ実力を隠しているせいか、わかりづらい。


 だが、それは実際に戦っているところを見れば分かる問題だな。



 しかし、よく精霊に遭遇するなと自分自身でも思う。シルフにも、元の世界のハイエルフにも。

 自分の心臓に加護が付けられた木が、停止するのを防ぐ為に動いているせいなのかもな。

 それの影響で会うのが多いのかもしれない。


 シルフは風と森を司る精霊だ。それで近い存在だといった。

 自分の中にあるものがそうさせたのかもな。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  ここで前回出てきた人物について更に明かされていく。  そして主人公についても明かされていくのだが、タイトルの意味について考えさせられた。  ん?!  ”人類の中では最強の軍人”、これは…
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