表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/80

第十三話 ワイバーン戦 開始

「それは、多少なりとも槍の戦い方を知っているか、筋力があればの話だ。君は見たところ、初めて持つのだろ、それ」

「は、はい」

「槍を選択したのは正しい判断だ。怖がりな君にとってそれは、強制的に距離を作れる物だからな。だから、それを使いこなせ。今は難しいかもしれんが、少しずつそれの戦い方を学んでいけ」

「はい」


 話しながら小さい川を渡り、沼の近くまで来た。

 見た限りだと沼にガルグイユはいないようだが、注意しておいた方がいいだろう。

 潜伏している可能性も否定できない。


「アレシア。槍はなるべく敵に向けて突き出せ。振り回すなよ。ただ、危ないと感じたら逃げてもいい。援護する」

「は、はい」

「私が一匹を撃ったら、前に出ろ」


 槍を抱え込み、手が小刻みに震えている。

 今までは味方がいたが、今回は援護射撃があるとはいえ、実質一人で戦っているようなものだ。

 怖いのは当然だ。


「アレシア。常に呼吸をし続けろ。何を当然なことをと思うかもしれんが、緊張している間、人は呼吸を忘れることがある。無意識でも出来ることだが、意識的にすることで多少緊張をほぐすことが出来る。ただ、呼吸することだけに囚われるな」

「は、はい。常に呼吸を……」


 言われた瞬間、少し大げさにだが呼吸をし始めた。

 頭に刷り込むように私の言葉を復唱している。


「いいか、始めるぞ。準備はいいか?」

「行けます」


 若干緊張が解れたようだ。

 少しずつでいい。戦いに慣れていけ。


「耳を抑えろ」


 風向きは南東。風速5ノット。少し右側に。


 慌てて耳を抑えたところを横目で確認したのち、一匹に向かって撃った。

 上空へ向けてするのは初めてだが、上手くいったようだ。


「さぁ、行け。援護は任せろ」

「はい」


 勢いよく飛び出していく。

 それに気付いたワイバーンが一斉に降りてきた。


「……や、やっぱり怖いです!」

「怖いならば逃げろ。体力が続く限り走り続けるんだ」


 槍を抱え込み、その場にしゃがんだ。

 やはり、言っただけではすぐには恐怖は取り除けないか。

 想定内だが、作戦を変えよう。


「そのまま、しゃがんでいろ」


 ライフルを直し、AKで彼女を狙うワイバーンを落としていく。

 当たるものもいれば、味方が盾になり生き残った者もいる。


 よし、怒ったな。アレシアから私に目標を変えてきた。

 幸いなことに全部私に向かってくる。

 鋭い(くちばし)を向けてそのまま突っ込んでくる気だな。


「すべて撃ち落としてやる」


 乱雑に撃たせているかのように見せかけ、正確に喉を狙っていく。

 もし、火を吐くのなら、そこをつぶせばいい。


 ちっ。弾切れか。

 その間にもこちらを狙ってくるだろう。

 アレシアに意識を向かわせないようにするには……。


「こっちだ」


 林の中に入る。

 少しでも、飛ぶスピードを抑えなければ。

 近づけないと感じたのか、一匹が口の中に火を溜め始めた。撃たせてなるものか。


「爆発するがいい」


 後ろ向きで走りながら、口の中を狙う。

 吐き出すことに失敗したワイバーンが上空で爆発して燃えた。

 それでも奴らは止まらないだろう。

 有効だと感じた奴らが次々と撃ちだしてきた。


「さすがに不利か」


 狙おうにも、こちらの武器は1つ。あちらは多数。どうやっても限界がある。

 避けながらでも出来ないことはないが、撃つスピードは先程よりか格段に落ちるだろう。

 弾も無限に撃てるわけではない。限度がある。


 どうするべきだ? 何か方法はあるはずだ。

 今私がいる場所、ワイバーンのスピード、自分の走る速度……。

 状況を理解し、よく観察しろ。


 相手は何に困っている?


「来い」


 人である私は、多少木が生えていても、それなりに通れる。

 だが、ワイバーンはどうだ? 沼にいた時よりも僅かながらスピードが落ちている。

 ならば、それを利用する。


 もっと複雑な所へ。


「これならば狙えるし、たとえ火を吐かれても遮蔽物である木が守ってくれる」


 少し密閉した所に入った途端、格段に遅くなった。

 これなら、余裕を持って狙える。


「チェックメイトだ」


 吐こうとしたやつらの火が味方に当たっている。

 そのおかげか、見るからに数が減ってきた。


 そして最後の一匹となり、口の中に火を溜めながら突っ込んでくる。

 やけくそになれば負けるとわからないようだ。


「ふぅ」


 最後の一匹を仕留め、腰にあるポーチから縄を取り出し、死んでいったワイバーンの足に括りつけていく。

 アレシアを一人置いてきてしまったが、大丈夫だろうか。

 早めに戻った方がよさそうだ。


「アレシア、無事か?」

「あーろ、さん?」


 しゃがみ込んで震えていたが、私の姿を見た途端、走って勢いよく抱き着いてくる。


「怪我はないか?」

「だいじょうぶです……。それよりも、ごめんなさい。わたし……」


 体を震わせ、声を震わせながら答えた。

 怪我がないならそれでいい。


「気にするな。それに、今二人とも怪我無くちゃんと生きている。まずはそれを喜べ。力は少しずつつけて、上達すればいい」

「……はい」


 涙を溜めて、私の顔を見上げている。

 その顔には、自責の念に駆られているのか眉尻を下げていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ