第一章・狼の「食欲」(四)
「若男君、私たちと一緒にご飯を食べよう!」
「はい、黒姫先輩。」
二人の友達──夜雲、早雪と一緒に食事している黒姫先輩は、若男の姿を見ると、手を振って彼を呼んだ。
「ええ?今日もまた海鮮スパゲッティを食べてるの?」
「そうですね。牛肉のステーキも羊肉のも美味しいですけど、私は特にエビ、ホタテ、カキが好きです。」
この三人はお金持ちのお嬢様だ。黒姫と夜雲は幼馴染で、早雪は夜雲の高校の友人だ。三人の美人が揃うと、男性も女性も彼女たちに視線を向けずにはいられない。
「残念だね。今日の牛肉料理は全て山梨県の甲州牛で作られて、新鮮で甘い香りがする。ラーメンと一緒に煮るのは素敵だわ。」
そう言った黒姫先輩は箸でラーメンのボールから牛肉を取って、口に入れた。彼女の釣り目は細くなり、彼女の顔には「おいしいわ」と顕示していた。
「若男君、私も海鮮が好きだけど、好きなのは刺身の寿司だ。この蒸し暑い天気には、やっぱり涼しい食事を食べたほうがいいね。」
キャミソールを着て、細い腹を見せている早雪は自分のお腹を触った。
「貴女の肌の色は雪みたい白い。これは冷食を沢山食べたおかげか?羨ましいね。」
「そうかな…?涼しい食事とかき氷を食べたら肌が白くなるのかな?」
「それは寒いと感じるせいで血色が悪くなるんじゃない?」
静かなまま傍らで鴨肉ラーメンを食べている夜雲は、我慢できずに二人に突っ込んだ。
「そうだね。美白になりたければ、やっぱり豆乳とかミルクを飲んだほうがいい。」
今日、黒姫先輩が取ったデザートはミルクのプリンだ。
「ところで…黒姫、我は貴女に何回も『牛肉はラーメンに相応しくない』と伝えたのだ!鴨肉ラーメンより良い食べ物はない!鴨肉の脂肪が丁度よく、スープがさっぱりでラーメンの香りが感じられるのだ。お嬢様の我の料理のセンスは絶対に正しい!」
夜雲は誇らしげに頭を上げた。彼女はⅤネックのシャツを着ているから、胸は大きな面積が露出して、彼女の動きに従ってぷるんと揺れた。
若男は露出度が高い服装を着ている先輩たちが無意識にセクシーさが現れることを見ても、あまり反応しない。笑いながらスパゲッティを食べているだけだ。彼は普通の男性と同じ、過酷な環境で性欲が弱くなったのか。しかも、側の女性はよくセクシーな服を着るから、彼は美女と一緒にいるのが嬉しいが、ドキドキすることは少ない。
「そうか…わたくしはラーメンに鶏肉、牛肉、豚肉、羊肉、鴨肉、ウズラ肉、サーモン…などを入れてみたことがある。鴨肉のラーメンが特に美味しいとは感じなかったけど。」
「ラーメンでどんな変な調理をしたのか!ラーマンに謝れ!」
「黒姫先輩は…昔から料理のセンスが格別ですよね!」
「若男君までそう言うか…わたくしは誰もが好むラーメンを作りたいだけだ。」
「次回は刺身を入れるのを考えてもいいね。」
早雪は茹でイカのすしを箸で挟んで、黒姫に瞬きした。
「刺身がラーメンに入ると、煮立った魚になるじゃない?貴女の提案はもっとやばい、同時に二種類の食べ物の美味しさを壊してしまう!」
「夜雲先輩は本当に食べ物のことになると、真面目になるんですね!」
「我は料理が上手じゃないが、料理を味わうなら、一流なんだ!」
「そう言うのなら、お互いに交換して食べてみようか?」
黒姫はそう言って、みんなの食べ物を見回した。