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ユートピアまであと一歩  作者: W教授
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第一章・狼の「食欲」(二)


 「疲れちゃったよ。秀然、朝から大雨が降っているなんて、こんな天気を見ると憂鬱になっちゃう。」


 さっき、授業で質問したあの男子生徒は、力強くあくびをした後、気だるそうに机に突っ伏した。


 「そうだね。教授が言った事も深刻だな…でも、必修課目だから、真面目に良い点数を取ろう!若男、頑張って!」


 若男の友達の秀然は厚いメガネを掛けていて、顔が優しく見える男だ。秀然は微笑みで彼を励ましてみた。


 「ハア、『人択計画』を担っている教授たちは、この計画に参加したら、内容が気鬱な授業を沢山受ける必要があるって言ったことは一度もなかったけど。」


 「人択計画」というのは若男と秀然が参加した実験だ。彼たちは二年間、学校が指定した「エリートコース」を修了したり、飲食と生活と運動の管理を受けたりする必要がある。将来、もし彼らが一緒にこの計画に参加した女性と結婚できたなら、政府は高額なお祝いと住宅を贈る。子供を一人産む毎に、更に生活の補助金を与える。


 簡単に言えば、彼らのような「希望の種」と呼ばれた人たちの任務は、エリートになり、エリートと結婚し、エリートを産むということだ。これは難しい任務だから、政府は多くのお金を彼らに投資している。


 「若男、俺たちはまだ大学に通えるだけ、とても幸せと感じられるね。元気を出して!」そう言った秀然は憂鬱な若男の肩をちょっと叩いた。


 「そうだね。私たちは美食を食べたり、豪華な部屋に泊まったりできるから、もっと喜んだほうがいいね。でも、テレビと携帯でニュースを見ると、洪水とか山崩れとか旱害とか、そんなニュースばかりだ。この世界はもうあまり希望がないと感じる…」


 「だから、それが俺たちが『人択計画』に参加した理由だろう。俺たちは頑張れば、人間が極端な気候の下で生存できる方法を見つけられるかもしれない。」


 「秀然君、若男君、もうすぐ次の授業『人間の進化学』だから、早く次の教室に行ってね!」


 「ちょっと動きたくない…」


 パンーと丸めた本が若男の頭を打った。


 「冗談を言わないで。サボるなんてできないわ。教授たちはいつも見てるから。」


 若男は片手で頭頂を触りながら、立ち上がって自分を打った人を見た。このように彼に説教するのはただ一人しかいないけど――髪が小麦のように金色に輝いているマルレナ先輩だ。


 「マルレナ先輩、もっと軽く打ってください…」


 「ただ優しくあなたを叩いただ。大げさじゃない?」


 「大げさに言わなかったら、今度はハンマーも使いますか?」


 「そんなわけないでしょう。若男君は私の愛おしい弟みたいなんだから。ポーランドから来てこんな弟と出会って嬉しいね。」


マルレナ先輩は若男の頭を撫でている。若男は擽ったく感じてクスクス笑い出した。


 「ちょっと待って…擽ったい、擽ったい…」


 「元気になったの?」


 マルレナ先輩の動きに従い、規格外の爆乳も揺れている。だが、若男は彼女の胸をちらちら見たりしなかった。


 「ハハ、若男とマルレナ先輩は仲がいいですね。まるで幼馴染のようです。」


 「本当?もし私にこんな年上の幼馴染がいたら、毎日笑うか泣くか分かりません。」


 「そうね。だって、私は若男みたいな可愛い男の子を見たら、好きなだけ彼と遊んでいたいわ!」


 マルレナ先輩は若男に近づいた。彼女の存在感が強い爆乳は若男の腕に押し付けられている。暑いに弱い彼女はタンクトップを着て、胸の半分ぐらいが外へ出ている。胸の柔らかさに気付いた若男は逃げようとしたが、マルレナ先輩が彼の腕を掴んで逃さない。


 「今日の授業が終わった後、ちゃんとあなたと遊んであげるわ。今は次の授業に行きましょう。」と言いながら、マルレナ先輩は青い目で可愛い後輩を見ている。猫が毛糸玉を注視するように。


 「はい、はい、ショルダーバッグを取らせてください。」


 「二人とも漫才を止めましょう。次のクラスまであと五分です。俺はトイレに行ってきます。先に次の教室に行ってください。」


 秀然が教室を出た後、若男とマルレナもショルダーバッグを持って外へ行く。


 「二人とも、新しいコースはどうですか?」


 二人は教室を出ると、彼らを待っていたクリシア・オギンスカ先輩が突然目に入った。

 

 この先輩は先の授業で先生の質問に答えた美女だ。クリシアはリトアニアから来たベラルーシ人の留学生だが、成績が優秀な大学三年生として「人択計画」で後輩たちを世話しているから、授業が終わった後、責任を持って彼たちに感想を聞こうとしたのだ。


 「私は色んな知識を学びました。高校の授業と全然違いますから、宿舎に戻ったらちゃんと勉強しないといけません。先輩、気を配ってくださってありがとうございます。スパシバ(Spasibo)。」


 「違いますよ。ベラルーシ語の『ありがとう』はジャクイー(Dziakuj)、リトアニア語のはディエコユ(Dėkoju)よ。」


 クリシア先輩は白い指を唇の前に伸ばしてちょっと振った。


 「すみません。先輩は東スラヴ人ですから、ロシア語のスパシバ(Spasibo)は通用すると思います。」


 「大丈夫です。若男君は少なくともわたくしがスラヴ人だと知っています。日本人にしては知識がありますよ。リトアニアがどこにあるか知らない人も沢山いますし。」


 「もしこの子が私をゲルマン人と思えば、彼をチャス ホノル(Czas Honoru)、日本語で『栄光の時』というドラマを全部見させる。私たちポーランド人が第二次大戦でどう勇敢にナチス・ドイツと戦ったか、彼に教えてあげる。そして、一万字の感想を書いてもらうわ。」


 「いえ、マルレナ先輩、私はどれほどのバカでも、ポーランド人がゲルマン民族だと勘違いはしません…」


 クリシア先輩はクスっと笑った。同じ金髪美人だが、彼女はマルレナとは感じが全然違う。マルレナは活発で明るい。クリシアは優雅で物静かだ。彼女の金髪は色素が薄くて寒色になっている。それも彼女の性格を表しているのかもしれない。


 「日本人はよく金髪の外国人はきっと英語が上手に話せると思いますね。前に他の学生たちがナンパしに来た時も英語で声をかけてきましたけど。結局、わたくしが訛りのある英語で答えると、彼たちは少しだけ話してすぐ逃げるなんて。」


 薄い鳶色のキャミソールを着ているクリシアは、雪の如く白い腹を見せている。彼女は広いいかり肩と位置の高い巨乳持っているので、ふわふわしたデザインのキャミソールはきついように見える。こんな美人が校内を歩いていたら、きっと多くの人々の目を奪うだろう。


 「はは、先輩の巻き舌の音を聞くと、格好いいと感じますね。」


 「ありがとう。若男君。もっと巻き舌の音を聞きたければ、ベラルーシ語を教えてもいいですよ。」


 褒められたクリシアは片手を腰に当てた。彼女は脂肪量が多い体だけど、長期間運動を重ねて、筋肉と脂肪が均等に分布されている。腹筋の形がはっきりしているが、硬い感じはなく、女性らしい柔らかさを保っている。


 「うん、ポーランド語を教えてあげてもいいわ。この二つの言語は近いから、一緒に習えばすぐ上手になるかも。」


 「私は美人の先輩たちの母語を習いたいですけど、この学期を無事に過ごした後にね…」


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